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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「戦地で取材し発信するジャーナリストは公益の担い手」(西日本新聞)、「ジャーナリストがそこにいなければ、世界に真実が伝わらない」(琉球新報)~安田純平さん生還、新聞各紙の社説

 シリアで拘束されていた安田純平さんの3年4カ月ぶりの解放と帰国を巡って、新聞各紙も10月25日付以降、社説、論説で取り上げています。ネットで目にしたものをまとめました(後掲、10月29日現在)。
 各紙とも、まずは安田さんの無事解放を喜ぶトーンです。その上で、安田さんが拘束されてから解放されるまでの経緯を検証し、教訓を今後に生かすべきだ、との指摘が目に付きました。安田さん本人がどのような体験をしたのか。体調が回復した後にされるのであろう証言への期待もあります。
 教訓を探るには日本政府の対応の検証も必要です。社説、論説の中には、「国際社会との連携による解放は、一定の外交の成果である」(産経新聞)との評価があります。一方では「簡単に政府の取り組みの成果と結論付けてはならない」(信濃毎日新聞)との指摘もあります。日本政府は手の内を知られることは避けたいはずなので、この間の経緯を多くは明かさないのでしょう。真相に迫るのはマスメディアの役割だろうと思います。教訓を得るにも、まず事実を踏まえる必要があります。

 安田さんに対して「自己責任論」に基づく批判がネットを中心に出ていることには、多くの社説、論説が危惧を示しています。その中で、現地にジャーナリストが入って報道することの意義を、いくつもの社説、論説が説いています。ここでは琉球新報と西日本新聞の社説の一部を引用します。
 「人道に反する残虐行為が行われていても、ジャーナリストがそこにいなければ、世界に真実が伝わっていかない」「国家の言うがままに取材を自粛したり抑制したりすることが当たり前になれば、体制側にとって都合の悪い事柄は表に出なくなる」(10月27日付、琉球新報)
 「日本から遠く離れた場所で起きている紛争だとしても、日本政府がどう関与するか、市民として何ができるかを考えるには、判断材料となる正確な情報が必要だ」「そういう意味で、戦地で取材し発信するジャーナリストは企業所属、フリーを問わず、公益の担い手という側面を持つ」(10月28日付、西日本新聞)

 安田さんが入ったシリアの混乱状況や、あるいは一時のイスラム国(ISIS)の隆盛は、元をたどれば2003年のイラク戦争に行き着きます。米国がサダム・フセイン政権を打倒したこの戦争への支持を、当時の小泉純一郎政権は真っ先に表明しました。そういう経緯を踏まえても、日本社会に日本人ジャーナリストによってシリアの現状が伝えられることの意義は小さくないと思います。
 「自己責任論」の中には、安田さんの解放、救出のために身代金が支払われたことで、テロ組織が活動資金を得て新たなテロを引き起こすとして安田さんを批判する内容のものが少なくないようですが、そもそも身代金が払われたのかどうか、事実として確定している状況ではありません。仮に議論するとしても、そうしたことが踏まえられるべきでしょう。

 危険地域での取材には十分な安全対策と慎重な行動が必要です。それでも「絶対安全」はありません。社説や論説の中には「ジャーナリストとしての見通しの甘さは批判されて当然だろう」(北國新聞)、「取材経験が豊富だったはずの安田さんの判断は、どこに落とし穴があったのか」(京都新聞)などと、安田さんの判断に対する指摘もあります。ただ、この論点は、ジャーナリストとして現場入りを目指すことの是非それ自体とは別の問題だろうとわたしは考えています。
 また、1人のフリーランスのジャーナリストが危険地域で取材する際の安全への備えを論点にするなら、備えが十分だったか、だけではなく、フリーランスのジャーナリストが置かれている経済面を始めとした様々な環境にも目を向けることにも意義があるようにも思います。ありていに言えば、新聞社や放送局の正社員記者とフリーランス・ジャーナリストの間には、経費や資材をはじめとして小さくはない差があります。「ジャーナリストの働き方」という視点も、実はそこにあってもいいのではないかと感じています。

 以下は、ネット上で目に止まった各紙の社説、論説です。印象に残る部分を引用しました。見出しのみのものもあります。

【10月25日付】
▼毎日新聞「シリアで拘束の安田さん まずは無事な解放を喜ぶ」 

https://mainichi.jp/articles/20181025/ddm/005/070/032000c

 戦場を取材するジャーナリストは、戦争の悲惨な現状を世界に向けて発信する役割を担っている。
 ただし、政府が「退避勧告」を出しているような危険地域での取材には周到な準備が必要だ。危険を察知する状況判断も重要になる。
 安田さんが海外で武装勢力に拘束されたのは04年のイラクに続いて2回目だ。最初の解放時は「自己責任」を追及する意見もあった。
 安田さんはトルコで謝意を示す声明を発表した。映像を見る限りしっかりした口調だ。邦人保護や戦場取材で共有すべき教訓はないか。帰国後、ぜひ話してほしい。

▼産経新聞(「主張」)「安田さん解放 テロに屈してはならない」

https://www.sankei.com/column/news/181025/clm1810250001-n1.html

 日本政府の要請を受けたカタールやトルコが、何らかの仲介役を務めたことは間違いあるまい。国際社会との連携による解放は、一定の外交の成果である。
 (中略)
 危険を承知で現地に足を踏み入れたのだから自己責任であるとし、救出の必要性に疑問をはさむのは誤りである。理由の如何(いかん)を問わず、国は自国民の安全や保護に責任を持つ。
 安田さんの解放に尽力したとされる「国際テロ情報収集ユニット」は、テロに関連する情報を一元的に集約するため、政府が15年12月、外務省に設置した。
 外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁などの職員からなる実動部隊で、将来的には情報機関としての独立も視野に入る。
 今回の事件にも象徴されるように、テロは遠い世界の出来事ではない。テロに強い国へ、体制や法の整備も急ぐべきである。

▼北海道新聞「安田純平さん 無事の解放を喜びたい」

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/241326?rct=c_editorial

 菅義偉官房長官は「官邸を司令塔とする『国際テロ情報収集ユニット』がトルコやカタールに働きかけた結果」と強調した。
 だが、政府は拘束報道から解放までに、なぜ3年もの時間を要したのだろうか。
 武装勢力の狙いや解放の経緯はまだ分からない。今後、安田さんの証言などを基に解明されるのを待ちたい。
 安田さんはイラクでも拘束された経験がある。安全への配慮を問う声があるかもしれない。
 だが、ジャーナリストは現場に行かないと事実を伝えられない。もちろん生還しなければ意味がない。だから、安全には最大限、注意を払う。それでも絶対安全ということはありえない。
 紛争地の場合は特にそうだ。
 シリアやイラクでは日本人を含む多くのジャーナリストが殺害された。今も中東を中心に世界で50人余りが武装勢力などに拘束されているという。報道の自由が脅かされている。

▼信濃毎日新聞「安田さん解放 まずは無事を喜びたい」

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181025/KT181024ETI090005000.php

 日本政府は、15年7月までに行方不明を把握。官邸直轄のテロ情報収集ユニットが、シリア周辺国の大使館などと情報や映像の分析に当たった。けれど、映像を公開したシリア人男性とは接触せず、ヌスラ側と直接交渉するルートも持てなかったという。
 解放の一報は、武装勢力に影響力があるカタールからもたらされた。菅官房長官は「身代金を払った事実はない」と言う。英国のシリア人権監視団は「カタールが支払った」と指摘する。
 ジャーナリストの後藤健二さんが15年に「イスラム国」(IS)に殺害された際も、日本の解放交渉はヨルダン頼みだった。簡単に政府の取り組みの成果と結論付けてはならない。
 安田さんの生還を喜ぶ声に混じり、ネット上には取材行動を非難する書き込みも目立つ。安田さんが以前、危険地域での取材規制に動く政府を批判していたことも要因のようだ。
 紛争の実態は国や軍の発表だけでは分からない。現地に赴く各国のジャーナリストの報道があって初めて、子どもらが犠牲になる戦争のむごさを実感し得る。戦争報道はどうあるべきか。安田さん自身の言葉を待って、私たちも共に考えていきたい。

▼神戸新聞「安田さん解放/『良かった』で終わらせず」

https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201810/0011759808.shtml

 解放には、トルコやカタールの関与が大きく、安倍晋三首相は両国に感謝の言葉を述べた。日本政府は「関係国に働き掛けた結果だ」と説明するが、詳しい経緯を明らかにしていない。
 政府は「良かった」で終わらせるのではなく、拘束が長期化した原因も含めて、徹底的に検証する責任がある。得られた情報や教訓を社会で共有する努力をしていくべきだ。
 政府は3年前、過激派組織「イスラム国」による邦人人質殺害事件の対応を検証した。その報告書では、海外での日本人の安全確保のため、危険地域への渡航制限を「検討すべき重要な課題」と位置付けている。
 ただ、政府が海外での取材活動を規制することは慎まねばならない。安田さんもかつて「取材の可否を国家の裁量に委ねれば、情報統制につながる」と語っていた。「知る権利」は民主主義の基本であることを改めて確認したい。
 気になるのは「自己責任論」が一部で浮上していることだ。
 国際社会では、日本は大国と見なされ、人道支援などでふさわしい役割が期待されている。支援に必要な情報を得るためには、危険地帯で取材することもあると、取材経験のあるジャーナリストらは説明する。
 危険と背中合わせの紛争地取材の意義について、冷静に考える必要がある。

▼南日本新聞「安田さん解放 事件の教訓生かしたい」

https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=97634

 安田さんの消息を巡って日本政府は、15年12月に外務省や防衛省、警察庁などの職員からなる「国際テロ情報収集ユニット」を発足させた。そこを中心に情報収集などに当たってきたとみられる。
 今回どれほど貢献したかは分からない。ユニット関係者は「内戦中のシリア入りはできず情報収集に限界があった」と漏らす。それだけにカタール政府などの仲介が奏功したとみていいだろう。
 邦人のジャーナリストらが事件に巻き込まれると、「自己責任」「国に迷惑をかける」と激しい非難を浴びてきた。無謀な行動は慎むべきだが、最前線の現場を取材し、その状況を伝えるのが本来の仕事である。細心の注意を払っても、万が一ということはある。
 邦人の安全確保を図ることが政府の最も重要な責務であることを確認しておきたい。

▼山形新聞「安田純平さん解放 教訓共有し再発防止を」
▼山陰中央新報「安田純平さん解放 事件の検証と教訓共有を」
▼宮崎日日新聞「安田純平さん解放 事件の教訓広く共有したい」

【10月26日付】
▼朝日新聞「安田さん解放 シリアの現実に思いを」

https://www.asahi.com/articles/DA3S13740338.html?ref=editorial_backnumber

 紛争地に入り、そこに生きる人びとの声を報じるのはジャーナリストの重要な責務である。ミサイルや銃弾が飛び交い、子どもらまでもが傷つく戦争の悲惨な現実を、第三者の立場から公正に伝える。そのために、各国の記者は使命感をもって危険な取材にあたっている。
 報道だけではない。人道支援にあたる国際機関やNPOのメンバーも、現地で苦しむ人々を支えようと活動を続けている。
 自らの安全は自ら守るのが原則だが、どれだけ周到に準備しても、ときに危険な状況に陥ることはある。それが紛争地の現実であり、どの国の政府も自国民の保護には最大限の責任を負う。当然のことだ。
 安倍首相は解放に協力したカタールとトルコの首脳に謝意を伝えた。ただ、日本政府の対応と解放に至った経緯には、まだ不明な点が多い。
 すべての情報開示は難しいだろう。だとしても、政府がテロ対策強化のため、15年末に発足させた官邸直轄の「国際テロ情報収集ユニット」がどう機能したのかなど、できる限り経過を明らかにし、今後の対応にいかさねばならない。

▼北國新聞「安田さん保護 適切だった政府の判断」

 解放に至る経緯は不明だが、菅義偉官房長官は会見で、武装勢力との交渉について「直接ではない」と語り、「カタール、トルコをはじめ関係国に協力を依頼し、さまざまな情報網を駆使して対応を進めてきた」と述べた。両国は武装勢力を支援する一方、日本とも良好な関係を築いている。直接交渉を避け、外交チャンネルを駆使して救出にあたった政府の判断は適切だったのではないか。
 安田さんを拘束していた武装勢力は、高額の身代金を要求していた。日本政府は「テロリストの支援者」と見なされるのを避けるため、米英などと歩調を合わせ、この手の身代金支払いを拒否している。安易に応じれば新たな誘拐やテロを誘発するからだろう。
 菅官房長官は安田さんの解放について、身代金の支払いを強く否定した。身代金はカタールが肩代わりしたとの指摘もあるが、これも表沙汰にはできない外交交渉の一種と受け止め、カタール、トルコ両政府に感謝の意を述べたい。
 安田さんに対して「自己責任」を問う声がある。安田さんはツイッターなどで「自己責任なので口や手を出すな」「世界でもまれにみるチキン国家(臆病な国の意)」などと言い捨て、政府の制止を振り切ってシリアに潜入した。
 ジャーナリストとしての見通しの甘さは批判されて当然だろう。解放と引き換えに、テロ組織に資金が渡ったとすれば、激しいバッシングを受けるかもしれない。それでも、下を向きすぎることなく、体力気力を回復させて報道の現場に戻ってほしい。

▼京都新聞「安田さん解放  経緯の検証が不可欠だ」

https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20181026_5.html

 日本政府は官邸直轄の「国際テロ情報収集ユニット」を15年末に設け、水面下で交渉を進めたという。しかし、最終的にはカタールやトルコに頼ることになった。
 天然資源の輸入などを通じて両国と良好な関係を築いてきたことが奏功した面もあろう。だが、結果的に3年余りを要した。
 同様の人質事件で、欧州には身代金を支払って救出する国が少なくないという。日本は「テロには屈しない」との基本姿勢を崩さずに、今回は解放にこぎつけた形となった。
 政府は今回講じた手段の是非を詳しく検証する必要がある。可能なものは公開して、教訓を社会全体で共有したい。
 危険地帯にあえて入った安田さんの行動には賛否がある。
 取材経験が豊富だったはずの安田さんの判断は、どこに落とし穴があったのか。その点も点検しなければなるまい。
 ただ、紛争地の実態は、現地取材するジャーナリストの報道によって明らかになることも少なくない。そうした戦地取材のあり方や意義について改めて考えたい。

▼中国新聞「安田さん解放 回復したら話聞きたい」

http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=476016&comment_sub_id=0&category_id=142

 安田さんはイラク戦争後のイラクを取材していた04年、地元の自警団に拘束された。それでもその後も毎年のようにイラクやシリアに渡航していた。「取材の可否を国家の裁量に委ねれば、情報統制につながる」との危機感があったという。
 政府が危険地域の海外渡航を規制しているのは、邦人保護の責任もあるからだ。救出には、人手も費用も必要になる。「個人の身勝手な行動」と受け止められていることを、安田さんはどう考えているのだろうか。
 拘束中には日記をつづり、当時の状況や心境を残していたという。帰国を控え、「可能な限り何があったか説明したい」とも話していた。戦場や危険地域での取材経験が豊富なジャーナリストなりの反省や教訓がきっとあるはずだ。
 7年前から続くシリアの内戦による死者は30万人、難民は500万人を超す。体調回復を待って、何があったのかを語る責任が安田さんにはある。

【10月27日付】
▼琉球新報「安田純平さん解放 取材の意義を理解したい」

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-824944.html

 ネット上では「危険な紛争現場に行って迷惑を掛けている」などとして「自己責任」を問う書き込みも見られる。
 現場の状況を直接確認し、何が起きているのか正しく伝えることは報道に携わる者の基本だ。戦地であっても例外ではない。
 世界中のジャーナリストが生命の危険を冒してまで紛争地に赴くのはそれだけの価値があるからだ。現地での取材は必要であり、意義は大きい。人道に反する残虐行為が行われていても、ジャーナリストがそこにいなければ、世界に真実が伝わっていかない。
 国家の言うがままに取材を自粛したり抑制したりすることが当たり前になれば、体制側にとって都合の悪い事柄は表に出なくなる。事実上の情報統制にもなりかねない。
 「自己責任」という批判は一面的であり、ジャーナリズムを尊重する視点が抜け落ちている。
 15年1月には安田さんとも交流のあったフリージャーナリストの後藤健二さんが「イスラム国」(IS)とみられる過激派組織に殺害された。
 今回、安田さんの身には何が起きたのか。経緯と原因を分析し、今後に生かすことも大切だ。

【10月28日付】
▼新潟日報「安田純平さん 無事帰国に深く安堵する」

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20181028428593.html

 まずは心身の回復に専念することが大切だ。その上で、自らが置かれた抑圧状況や内戦下のシリアの現実について、社会に知らせてもらいたい。
 紛争状態が続く中、武装勢力はどんな行動原理で動いているのか。命の危険にさらされている現地の住民は、どんな思いでいるのか。自らの拘束を踏まえ戦地取材では、どんなことに留意すべきなのか。
 それらの事柄は、「現場」に赴いた安田さんだからこそ分かるものだ。ジャーナリストとしてさまざまな経験を積む中で培ってきた視点と的確な言葉で伝えてほしい。
 遠い海外で展開されている戦闘について日本に暮らす人たちが関心を深め、目の前にある平和がいかに重要かを見つめ直すことにもなろう。
 もちろん、安田さんもそれが自身の役割だと十分自覚しているに違いない。
 強く懸念するのは、「自己責任論」に基づくバッシングが起きることだ。安田さんは04年にもイラクで拘束されており、バッシングを浴びた。
 フリージャーナリストの後藤健二さんが15年1月、シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)に殺害されたとみられる事件でも、政府の警告に反した取材だと批判の声が上がった。
 だが、現場に入り、対象に迫らなければ正確な情報を得ることは難しい。半面、可能な限り危険を避ける準備をしても、戦地では不測の事態に遭遇する場合がある。
 一方的なバッシングは、取材や報道の萎縮を招くことになりかねない。
 政府は、安田さん解放の経緯や拘束が長期化した背景などを丁寧に検証してもらいたい。今後、同様の事件が発生した場合に適切に対応するためにも、不可欠な作業のはずだ。

▼西日本新聞「安田さん帰国 経緯を検証し教訓生かせ」

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/460987/

 最初に押さえておきたいのは、ジャーナリストが危険を冒して紛争地に行く意義である。
 一般に紛争地では、暴力を行使する権力側や軍隊、武装集団が、事実を隠して都合のいい情報だけを発信しようとする。
 もし報道機関がこれに依存すれば、紛争地で本当に何が起きているか、住民がどんな目に遭っているか、肝心なことが覆い隠される。一番弱い立場の人々の声が届かないのだ。日本から遠く離れた場所で起きている紛争だとしても、日本政府がどう関与するか、市民として何ができるかを考えるには、判断材料となる正確な情報が必要だ。
 そういう意味で、戦地で取材し発信するジャーナリストは企業所属、フリーを問わず、公益の担い手という側面を持つ。
 もちろん取材者が自ら安全を確保する最大限の努力を払うのは当然だが、戦地で完全に予想外の事態を避けるのは難しい。もし彼らが拘束や遭難などの事態に陥った場合、政府には保護に当たる義務がある。そもそも外務省設置法は「海外における邦人の生命および身体の保護」を所掌事務と明記している。
 政府は渡航の中止や退避を勧告していたため、「自己責任」を唱える論者もいるが、紛争報道の公益性を考えれば、政府の保護義務は納得できるだろう。
 今回、政府は首相官邸直属の「国際テロ情報収集ユニット」が動いたと説明している。カタールとトルコの協力があったとされるが、身代金の問題など不明な点も多い。現地や中東情勢も含め、どんな力学が作用して解放に至ったのか、もっと早く解決できなかったのか-など、経緯を十分に検証して今後の邦人保護に役立ててほしい。
 検証が必要なのは取材者側も同様だ。意図通りの取材ができずに拘束されるという事態は、ジャーナリストにとって、やはり手痛い失敗だ。どこに判断ミスがあったのか。これも教訓として生かすべきである。
 安田さんは帰国後、「可能な限り説明をする責任があると思っています」とのコメントを出した。その説明を待ちたい。

▼茨城新聞「安田純平さん解放 事件の検証と教訓共有を」

【10月29日付】
▼沖縄タイムス「安田純平さん帰国 シリアの真実聞かせて」

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/336504

 シリア内戦に関する報道では、アサド政権に批判的な欧米メディア、政権を支える国営メディアなど立場によって報道の違いが著しい。
 安田さんが戦場取材を続けるのは「政府の管理下ではない取材でしか手に入らない情報がある」からである。
 再発防止のためには今回の事件を検証し、教訓を共有することが不可欠だ。
 懸念するのは、ネット上で安田さんに対し、「自己責任」や「反日」などの言葉が浴びせられていることだ。
 04年、人道支援ボランティアとしてイラクに入った日本人の男女3人が武装勢力に拉致された事件を思い出す。解放され、帰国後に激しいバッシングにさらされた。
 女性が「またイラクで活動したい」と言ったと伝えられたことに対し、小泉純一郎首相は「もっと自覚をもってほしい」と批判した。
 これと対照的だったのがパウエル米国務長官だった。「日本国民はリスクを背負って行動した彼らを誇りに思うべきだ」と語った。戦場における人道支援に敬意を払ったのである。
 日本では国の「退避勧告」に従わず、イラク入りしたことは許せないとの空気を首相らが醸成していたが、今ではネット上にあふれる。
 シリア内戦について安田さんは「内戦を見放してきたことが一番の原因」と報道の重要性を強調していた。戦場を実際に見て歩き、報道することは現地で何が起きているのかを日本を含む世界に知らせることだ。市民の惨状を知らせることは国際社会を動かすことにつながる。
 安田さんは「可能な限り、何があったのか説明したい」と語っている。シリア内戦の真実を聞きたい。
 安田さんらジャーナリストが果たしてきた戦場報道の役割についても改めて考えるきっかけにしたい。 

「安田純平さんの帰国を喜び合える社会を目指して」~新聞労連の声明に共感

 ジャーナリストの生死を巡る2件のニュースが報じられています。一つは、シリアで拘束されていた安田純平さんの3年4カ月ぶりの解放と帰国。もう一つはトルコのサウジアラビア領事館で死亡したジャマル・カショギ氏が、領事館で殺害されたと指摘されている事件です。安田純平さんの生還については新聞労連(日本新聞労働組合連合)が南彰・中央執行委員長名で10月25日に「安田純平さんの帰国を喜び合える社会を目指して」と題した声明を発表しました。カショギ氏の事件に対しては、新聞労連のほか民放労連や出版労連などでつくる日本マスコミ文化情報労組会議(略称・MIC)が「『批判もする友人』が共存する世界を目指して―サウジアラビア人記者殺害は対岸の火事ではない―」との声明を10月24日に出しています。新聞労連委員長はMIC議長を兼ねています。

 この二つの声明には共感するところが多いので、転記して紹介します。 

安田純平さんの帰国を喜び合える社会を目指して
 
2018年10月25日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南 彰

 2015年からシリアで拘束されていたフリージャーナリストの安田純平さんが3年4カ月ぶりに解放されました。人命と引き替えに金銭を要求する犯行グループの行為は卑劣で、真実を伝える目的を持ったジャーナリストを標的にすることは言論の自由や表現の自由への挑戦です。新聞労連としても安田さんの「即時解放」を求めてきましたが、同じ報道の現場で働く仲間の無事が確認された喜びを分かち合いたいと思います。
 安田さんはかつて信濃毎日新聞の記者を務め、新聞労連の仲間でした。2003年にフリージャーナリストに転身しましたが、紛争地域の取材に積極的に取り組み、民衆が苦しむイラク戦争の実態などを明らかにしてきました。
 その安田さんや家族に「反日」や「自己責任」という言葉が浴びせられている状況を見過ごすことができません。安田さんは困難な取材を積み重ねることによって、日本社会や国際社会に一つの判断材料を提供してきたジャーナリストです。今回の安田さんの解放には、民主主義社会の基盤となる「知る権利」を大切にするという価値が詰まっているのです。
 安田さんはかつて「自己責任論」について、新聞社の取材にこう語っています。
 「自己責任論は、政府の政策に合致しない行動はするなという方向へ進んでしまった。でも、変わった行動をする人間がいるから、貴重な情報ももたらされ、社会は発展できると思う」
 観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れ、また移り住むという状況が加速している私たちの社会は、より高い感受性と国際感覚が求められています。そのベースとなるのは、組織ジャーナリズムやフリーを問わず、各地のジャーナリストが必死の思いでつかんできた情報です。
 解放された安田さんに対して、「まず謝りなさい」とツイッターに投稿する経営者もいますが、「無事で良かった」「更なる活躍を期待しているよ」と温かく迎える声が大きくなるような社会を目指して、新聞労連は力を尽くしていきます。
 
以上 

 ※新聞労連 http://www.shinbunroren.or.jp/index.htm 

「批判もする友人」が共存する世界を目指して
――サウジアラビア人記者殺害は対岸の火事ではない――

2018年10月24日
日本マスコミ文化情報労組会議

 サウジアラビア人記者がトルコのサウジアラビア総領事館で死亡した事件で、トルコ政府が「事前に計画された殺人だった」と認定しました。亡くなったジャマル・カショギ氏は、サウジアラビア政府の独裁的な政治のあり方を批判し、同国の内外に警鐘を鳴らしてきたことで知られるジャーナリストでした。自らの意に沿わない言論を権力や暴力で封殺する行為は、人類が積み上げてきた表現の自由や民主主義に対する冒瀆です。
 しかし、欧米諸国が非難の声明を出すなか、日本政府の対応は後手に回り、メディアの報道も時に国際政治のパワーゲームの視点に偏りがちです。「表現の自由」の価値と向き合っている社会であるのかが、いま、問われています。

 同じことは、フリージャーナリストの安田純平さんの拘束事件についても言えます。日本政府が10月23日、「解放された」と発表しましたが、発覚からの3年間、「誰も報じなければ、現地の状況は伝わらない」と現地取材に取り組んできたジャーナリストの拘束にどれだけ私たちは心を寄せてきたでしょうか。安田さんやその家族に対して「反日」「自己責任」といった中傷の言説が広がっている状況も見過ごしてはなりません。

 私たちの足元をみると、メディアに対する攻撃が相次いでいます。
 兵庫県西宮市の今村岳司市長(当時)は今年1月、読売新聞記者に「殺すぞ」「落とし前つけさすからな」と恫喝。足立康史衆院議員(日本維新の会)は自身のツイッターに「朝日新聞、死ね」と投稿し、国会審議で同紙の加計学園問題をめぐる報道を「捏造」と発言しました。政府のスポークスマンである官房長官の記者会見をめぐっては、政府見解の真偽を問いただす記者への取材制限や誹謗中傷、殺害予告まで起きています。サウジアラビア人記者殺害事件は決して対岸の火事ではないのです。

 「批判もする友人(critical friend)」という言葉があります。
 国連特別報告者のジョセフ・カナタチ氏が、特別報告者の役割を問われたインタビューで語った言葉です。ある人や国が間違ったことをしそうになった時に、それを指摘する友人という意味が込められています。この役割を、日本社会の津々浦々で担っているのが、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)に集うメディア関連の仲間たちです。
 表現の自由や報道の自由の価値を、改めて市民と確認し合いながら、「批判もする友人」が共存する、強くてしなやかな日本社会、国際社会を目指して力を尽くします。

以上  

※MIC http://www.union-net.or.jp/mic/

 安田さんに対しては、やはり「自己責任」を挙げての批判がネット上を中心に出ています。危険地域だったシリア入りや、救出のために日本政府に負担をかけたことなどを責める意見です。一方で、危険地域で何が起きているのかが広く知られることには大きな意味があることを訴える意見もあります。ここでわたしたちの社会に必要なのは、自己責任論を一方的に排除することではないと思います。異論は異論として受け止めながら、意見の食い違いが社会の分断にまで至ってしまうことのないように、「知る」「知らせる」ことの意味について、自己責任論を口にしている人たちも含めて、社会全体で考えを深めていくことが重要と感じます。マスメディアの内部に身を置く者の一人として、新聞労連とMICの二つの声明に接して、そんなことを考えました。

沖縄の訴え受け止め、基地をわがことととらえ始めた一群の地方紙~沖縄県知事選を巡って③地方紙・ブロック紙の社説

 9月30日の沖縄県知事選で、名護市辺野古への新基地建設に明確に反対を掲げた前衆院議員の玉城デニー氏が、安倍晋三政権と与党の全面的支援を受けた前宜野湾市長の佐喜真淳氏を大差で破ったことに対しては、沖縄県外(日本本土)の多くのブロック紙・地方紙も社説、論説で取り上げました。ネットで読める範囲に限ってですが、各紙の論調を読み比べてみました。
 沖縄の基地集中に対するブロック紙・地方紙のこれまでの論調は、沖縄県の翁長雄志知事(当時)と話し合うよう、安倍政権に求める内容が大半でした。今回の知事選の結果に対しても、これまでの安倍政権の強硬姿勢に批判的な社説、論説が目立ちます。その中で特徴的だと感じるのは、さらに一歩踏み込んで、基地の問題を沖縄だけではなく日本全体の問題として、わが身に関わることとして考える、との問題意識を明示した社説、論説がいくつも目に止まったことです。以前との定量的な比較は難しく、わたしの印象論にすぎないのですが、翁長前知事が唱え続け、玉城知事が継承した沖縄の訴えを正面から受け止めようとする論調が、ようやく本土マスメディアの中にも潮流としてはっきりと目に見えるようになってきたように感じます。その代表的な社説、論説をいくつか、一部を引用して書きとめておきます。

▼高知新聞「【沖縄知事選】政権は立ち止まり対話を」=10月2日 

 安倍首相らは政権側が敗れた前回知事選後、翁長氏との面会をしばらく拒否した。沖縄の声を無視するような横暴で、子どもじみた対応は許されない。
 沖縄が願うのは対立ではない。対話だ。沖縄以外への県外移設はできないのか。アジアの安全保障環境が変わる中、新たな基地がなお必要なのか。そうした説明が尽くされていないことが不信の根にある。
 安倍政権は立ち止まり、沖縄との対話の場を再設定することから仕切り直すべきだ。
 安全保障は国の専権事項だとしても、負担や分断を強いられるのは常に地域だ。沖縄では米軍機の事故や軍人らの凶悪事件も後を絶たない。民主主義下の国との関係の中で、地域の「主権」や安寧をどう守っていくか。沖縄県民の審判は国民全てにその問いを投げ掛けている。

▼西日本新聞「沖縄知事選 この民意を無視できるか」/既成事実化に抗して/基地負担の再検討を/本土住民も考えたい=10月2日 

 知事選で政権支援の候補が敗れたことは、「沖縄に寄り添う」と口では言いながら、実際には補助金や経済振興策をちらつかせ、「アメとムチ」で地方を従わせようとする安倍政権の政治姿勢に対する不信の表れだといえる。
 これは自民党総裁選の地方票で石破茂氏が健闘したことにも通じる。森友・加計問題での批判を受け「丁寧」「謙虚」などの言葉を連発しつつ、異論に耳を貸さない強引な政治手法を続ける安倍政権に対し、地方から異議申し立ての声が上がり始めたのではないか。
 重ねて考えておきたいのは、本土の住民である私たちの関わり方だ。国内の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中する現状に、どう向き合うか。無関心は結果的に「沖縄への基地押し付け」を容認し、民意を無視することにもなる。
 国内の米軍基地の規模は現状で適正なのか。本土が負担の一部を引き受ける方策はあるのか。「沖縄が反対している」と遠くから眺めるのではなく「じゃあ私たちはどうする」と踏み込み考えることが、沖縄と本土の溝を埋め、基地問題解決を促す力となるはずだ。

▼中日新聞・東京新聞「沖縄県知事選 辺野古基地は白紙に」=10月1日付 

 自ら誘致したのでもない基地を巡り、国に恭順するか否かが毎回問われる知事選は沖縄以外にはない。振興予算の加減による政権側のアメとムチ政策が県民を分断する原因にもなっている。今回も、生活基盤整備が先と感じる佐喜真氏支持層と玉城氏支持層の間でしこりが残るかもしれない。
 そんな不幸な状況を解消し、沖縄の自治を保障するため政府がとるべき道は、沖縄のみに過剰な基地負担をかけない、必要な財政支援はする、との当たり前の政治に転換するだけのことだ。

▼中国新聞「沖縄新知事に玉城氏 政権は民意に寄り添え」=10月2日付 

 今こそ普天間飛行場の運用停止を辺野古移設と切り離し、進める道を模索したい。日米両政府の1996年の返還合意は、辺野古移設が前提ではなかった。米朝関係の改善など東アジア情勢の変化を踏まえ、再検証の余地があるのではないか。
 米軍基地を巡っては、沖縄だけではなく日本全体の問題として捉える機運が少しずつ生まれている。全国知事会は7月、日米地位協定の抜本的な見直しや基地の縮小・返還を求める提言書を全会一致で決議した。本土の私たちが傍観者にならず、沖縄とともに声を上げる姿勢が、政府のかたくなな態度を変える潮流になるはずだ。

▼福井新聞「沖縄県知事に玉城氏 国は民意に背を向けるな」=10月2日付 

 玉城氏が訴えた「アイデンティティー」は、在日米軍基地の7割の集中を強いられる沖縄が自己決定権を取り戻そうという翁長氏の理念である。どの地方自治体にとっても欠かせない理念であるからこそ、無関心ではいられないはずだ。沖縄を注視していかねばならない理由がそこにある。

▼山形新聞「沖縄知事に玉城氏 国はまず対話すべきだ」=10月4日付 

 玉城氏は「翁長氏の遺志を継ぐ」と、沖縄県が8月に決めた辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回を維持する方針だ。さらに県議会に条例案が提出されている辺野古移設の賛否を問う県民投票も実施し、県民の意思を政府に示していく考えだろう。沖縄県外に住む私たちはもちろん投票の主体ではない。だからといって、基地問題が自分たちとは無関係な別世界の話と考えてはなるまい。

 中国新聞が触れた全国知事会の提言書については、京都新聞(10月1日付)や徳島新聞(2日付)も言及しています。また、山陰中央新報(2日付)や宮崎日日新聞(2日付)、佐賀新聞(2日付)は、かつて米軍基地が地域の反対運動に遭って本土から沖縄に移され、現在は在日米軍専用施設の約70%が沖縄に集中することを挙げて、日米同盟を維持するのなら全国で基地を負担し、その縮小を目指すべきではないか、と問い掛けています。

 一方、北國新聞の社説は、米軍普天間飛行場の辺野古移設は動かしがたい、とする内容でした。一部を引用します。
▼北國新聞「普天間移設問題 司法判断仰ぐほかないか」=10月2日 

  米軍普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する計画を推進する政府・与党は、沖縄県知事選の敗北でこれまで以上に厳しい立場に追い込まれた。安倍晋三首相の言う通り、選挙結果を真摯に受け止め、沖縄の振興、基地負担の軽減に全力で取り組まなければならない。といって、辺野古移設という日米両政府の合意をここで覆すこともできない。
(中略)
 ただ、地政学的に米軍基地が沖縄に多い理由も理解したい。日本に対する北朝鮮の核・ミサイルの脅威がなくなる道筋は見えず、中国の軍事的膨張も続いている状況にあって、米軍の抑止力は欠かせない。沖縄駐留の米海兵隊がグアムなどに全面移転すれば、普天間飛行場も代替施設も必要性を失うが、現実には困難であり、辺野古移設が頓挫すれば、危険な普天間飛行場の継続使用という最悪の状況になりかねない。
 玉城氏は元来、自衛隊と日米安保に理解を示す保守中道派と目され、知事選では当初、独自色にこだわっていた。故翁長雄志知事の遺志を継ぐ立場を前面に出す戦術に切り替え勝利したが、基地問題より経済振興を願う県民も少なくなく、知事選で訴えた自立型経済の具体策を示す必要がある。政府はその点で玉城氏を温かく支援する度量も求められよう。

 河北新報の社説は翁長前知事の国との法廷闘争を振り返りながら、辺野古移設案を日本政府が放棄することはないことを前提として、辺野古移設に反対なら実現可能な具体案をある程度は提示するのが知事の責任だと論じました。地方紙ではほかに例を見た記憶がない主張で、少なからず驚きました。

▼河北新報「沖縄知事に玉城氏/対立構図脱する道はあるか」 

 翁長雄志前知事は2015年に辺野古の埋め立て承認を取り消し、以後、国との間で法廷闘争を続けた。客観的に見れば、県側にほぼ勝訴の可能性がない訴訟合戦は、結果として、いたずらに時間を浪費しただけだった。
 移設問題はもう一度、原点に立ち返って考えるべきだろう。普天間飛行場を取り囲んで住宅地が広がり、小学校があり、大学がある。移設の最大の目的は、世界で最も危険とされるこの飛行場の危険性除去だったはずである。
 日米が普天間基地返還で合意してから既に22年が過ぎている。この間、迷走を重ねた移設問題を巡って、今後も県と政府の対立が長く続くとすれば、不幸なのは周辺住民である。危険に瀕(ひん)する状況が固定化される恐れさえある。
 翁長氏の知事在任時は、この原点が置き去りとなった印象が拭えない。辺野古移設に反対なら反対として、実現可能な具体的な対案をある程度は提示するのは知事に求められた責任ではなかったか。
 むろん、代替案は国が考えるべきだという県側の主張には理がある。しかし、さまざまな行政手続きを重ね地元の意向も取り入れてまとめた移設案を政府が容易に放棄することはあり得まい。 

 本文の一部を引用したこれらの社説以外のものについて、見出しを以下に列記しておきます。サイト上で見ることができたのは見出しだけで、本文は読めないものもありました。

【10月1日付】
・北海道新聞「沖縄知事選 新基地拒否で県政継続」
・北日本新聞「民意は『辺野古ノー』/政府は強硬姿勢改めよ」 ※見出しのみ
・京都新聞「沖縄に新知事  『基地』に新たな視点を」

【10月2日付】
・デーリー東北「沖縄県知事選 民意は明確に示された」
・秋田魁新報「沖縄知事選 真摯に民意受け止めよ」
・山梨日日新聞「[沖縄知事に翁長氏後継]重い魂の飢餓、辺野古再考を」 ※見出しのみ
・信濃毎日新聞「沖縄県知事選 政府が方針を改めねば」
・新潟日報「玉城氏勝利 政権は強硬姿勢を改めよ」
・神戸新聞「沖縄知事選/辺野古への民意は明白だ」
・山陽新聞「沖縄県知事選 政府は対話を再開させよ」
・山陰中央新報「沖縄県知事選/まずは対話を求めたい」
・愛媛新聞「沖縄知事選 辺野古移設反対を貫く民意重い」 ※見出しのみ
・徳島新聞「沖縄知事に玉城氏 辺野古反対の民意は重い」
・宮崎日日新聞「沖縄知事に玉城氏 8万票の重み 政権認識せよ」/基地負担の軽減図れ/「アメとムチ」に不信
・佐賀新聞「沖縄県知事選 辺野古移設の再検討を」
・南日本新聞「[沖縄知事選] 辺野古反対の民意重く」

【10月3日付】
・東奥日報「『辺野古移設』まず対話を/沖縄県知事選」

【10月4日付】
・神奈川新聞「沖縄県知事に玉城氏 『辺野古ノー』に応えよ」 ※見出しのみ

政権に「深刻な反省が必要」(朝日)、「本土と沖縄の意識差」言及(毎日) 玉城氏に事実上の公約撤回求める読売、産経~沖縄県知事選を巡って②全国紙の社説

 9月30日の沖縄県知事選は、故翁長雄志前知事の遺志を継いで、名護市辺野古への新基地建設反対を掲げた玉城デニー氏が、安倍晋三政権と国政与党の全面支援を受けた前宜野湾市長の佐喜真淳氏を破って当選しました。この選挙結果に対して沖縄県外、日本本土の新聞各紙が社説や論説でどのように論評したか、とりわけ米軍普天間飛行場の辺野古移設を含めて沖縄の基地集中の問題にどのような見解や主張を表明したかを、全国紙と地方紙・ブロック紙の2回に分けて書きとめておきます。なお、東京発行の東京新聞は、社説は中日新聞と共通ですので、ここではブロック紙に含めることとします。

 まず全国紙です。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞の4紙は10月1日付紙面に知事選についての社説を掲載。日経新聞も同3日付に載せました。
 朝日新聞は安倍政権に対して「県民の思いを受けとめ、『辺野古が唯一の解決策』という硬直した姿勢を、今度こそ改めなければならない」と強調。全体として政権への批判が強いトーンです。
 毎日新聞も基調は安倍政権に厳しいトーンですが、「基地負担のあり方をめぐる本土と沖縄の意識差」に言及している点が目を引きました。「問題の核心は、日米安保のメリットは日本全土が受けているのに基地負担は沖縄に集中するという、その極端な不均衡にある」「外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない」などの指摘は、「圧倒的な多数派の本土側」という表現に、安倍政権を成り立たせている本土に住む主権者全体が問われる問題であるとの認識をうかがうことができるようにも感じます。
 読売、産経、日経の3紙は、それでも辺野古への新基地建設は進めるべきとの主張が共通しています。注目されるのは、読売、産経両紙が、支援候補が敗れた安倍政権にではなく当選した玉城氏に主として注文を付け、新基地建設推進の立場から事実上、玉城氏に新基地建設反対の公約の撤回を求めていることです。
 読売は「日本の厳しい安全保障環境を踏まえれば、米軍の抑止力は不可欠だ。基地負担を減らすとともに、住民を巻き込んだ事故が起きないようにする。そのために、どうすべきなのか、玉城氏には冷静に判断してもらいたい」と、産経も「移設を妨げる県の従来方針を改め、国との関係を正常化し、基地負担の軽減を進めていく現実的な立場をとってもらいたい」としました。
 日経は「国が今後、沖縄の基地負担を劇的に改善すると確約し、途中経過として辺野古移設だけはお願いしたいというしかない」と、安倍政権にも従来の強圧的な方針を改めるよう主張している点で、読売、産経両紙とは一線を画しているように感じました。
 以下に5紙の社説の一部を引用して書きとめておきます。

▼朝日新聞「沖縄知事選 辺野古ノーの民意聞け」10月1日付
 https://www.asahi.com/articles/DA3S13703471.html?ref=editorial_backnumber 

 急逝した翁長雄志前知事は、米軍普天間飛行場の移設先として、名護市辺野古に基地を造ることに強く反対してきた。その遺志を継ぐ玉城氏を、有権者は新しいリーダーに選んだ。安倍政権は県民の思いを受けとめ、「辺野古が唯一の解決策」という硬直した姿勢を、今度こそ改めなければならない。
 まず問われるのは、県が8月末に辺野古の海の埋め立て承認を撤回したことへの対応だ。この措置によって工事は現在止まっているが、政府は裁判に持ち込んで再開させる構えを見せている。しかしそんなことをすれば、県民との間にある溝はさらに深くなるばかりだ。
 朝日新聞などが行った県民世論調査では、辺野古への移設は賛成25%、反対50%だったが、基地問題に対する内閣の姿勢を聞く問いでは、「評価する」14%、「評価しない」63%とさらに大きな差がついた。「沖縄に寄り添う」と言いながら、力ずくで民意を抑え込むやり方が、いかに反発を招いているか。深刻な反省が必要だ。

▼毎日新聞「沖縄知事に玉城デニー氏 再び『辺野古ノー』の重さ」10月1日付
 https://mainichi.jp/articles/20181001/ddm/005/070/063000c 

 市街地の真ん中に位置する普天間飛行場は一刻も早い返還が必要だ。にもかかわらず、日米の返還合意から22年が過ぎても実現していない根底に、基地負担のあり方をめぐる本土と沖縄の意識差が横たわる。
 日米安保条約に基づく在日米軍の存在が日本の安全保障の要であることについて、国民の間でそれほど意見対立があるわけではない。
 問題の核心は、日米安保のメリットは日本全土が受けているのに基地負担は沖縄に集中するという、その極端な不均衡にある。
 県外移設を求める沖縄側と、「辺野古移設が普天間の危険性を除去する唯一の選択肢」という政府の主張はかみ合っていない。
 民主主義国家では最終的に多数決で政策が決定されるが、議論を尽くしたうえで少数派の意見を可能な限り取り入れることが前提となる。
 外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない。
 辺野古移設をめぐる国と沖縄の対立を解消していくにはどうすればよいのか、今こそ政府は虚心に県との話し合いを始める必要がある。

▼読売新聞「沖縄新知事 普天間の危険性除去を進めよ」10月1日付 

 選挙戦で玉城氏は、普天間の危険性除去の必要性も訴えていた。辺野古への移設は、普天間の返還を実現する上で、唯一の現実的な選択肢である。
 日本の厳しい安全保障環境を踏まえれば、米軍の抑止力は不可欠だ。基地負担を減らすとともに、住民を巻き込んだ事故が起きないようにする。そのために、どうすべきなのか、玉城氏には冷静に判断してもらいたい。
 玉城氏を推した野党は、辺野古への移設計画について、「違う解決策を模索する」と反対する。具体的な案を示さずに普天間返還を実現するという主張は、かつての民主党の鳩山政権と同じで、無責任のそしりを免れない。
 知事の立場は、野党議員とは異なる。沖縄の発展に重い責任を負うからには、県民所得の向上や正規雇用の拡大に向けて、総合的に施策を推進する必要がある。政府との緊密な連携が欠かせない。

▼産経新聞(「主張」)「沖縄知事に玉城氏 国と県の関係正常化図れ」10月1日付
http://www.sankei.com/column/news/181001/clm1810010002-n1.html 

 当選した玉城氏は、翁長県政の継承を唱えてきた。だが、辺野古移設をめぐり、国と県の対立を再燃させるのは望ましくない。
 移設を妨げる県の従来方針を改め、国との関係を正常化し、基地負担の軽減を進めていく現実的な立場をとってもらいたい。
 辺野古移設は日米両政府が交わした重い約束事だ。抑止力維持の観点からも見直せない。
 米軍基地を国内のどこに置くかという判断は、国の専権事項である安全保障政策に属する。憲法は地方自治体の長に、安保政策や外交上の約束を覆す権限を与えていない。
 この民主主義の基本を玉城氏は理解してほしい。知事選に基地移設の是非を決める役割があると考えること自体が誤っている。
 (中略)
 宜野湾市の市街地に囲まれた普天間の危険性を取り除く上で移設は待ったなしの課題である。同時に在沖縄の米海兵隊は、北朝鮮や中国などを見据えた日米同盟の抑止力の要である。
 抑止力の維持と基地の安全性の確保を両立させるには、辺野古移設が唯一現実的な解決策だ。国と県の対立を再燃させて移設が滞れば、周辺国が日米同盟が動揺しているとみなす恐れがある。抑止力低下と普天間の固定化は望ましくない。
 玉城氏は「基地を造ったら平和にならない」と語ったが、抑止力を否定する発想は非現実的で安保環境をかえって悪化させる。中国が狙う尖閣諸島は沖縄の島である。防衛の最前線である沖縄の知事である自覚をもってほしい。

▼日経新聞「対話なき辺野古移設は難しい」10月3日付
 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO36051980S8A001C1EA1000/ 

 日米両政府が普天間基地の返還で合意して22年になる。いまさら白紙に戻して、改めて移設先を探すのは現実的ではない。他方、基地はつくればよいというものではない。米軍将兵にも生活があり、地元住民の協力なしには円滑な運用は難しい。
 このふたつを両立させるには、国が今後、沖縄の基地負担を劇的に改善すると確約し、途中経過として辺野古移設だけはお願いしたいというしかない。
 そのための糸口はどうつくればよいのか。佐喜真淳氏を擁立した自民党はバラ色の公約をばらまいた。学校の給食費の無償化もそうだし、米軍に有利とされる日米地位協定の改定を佐喜真陣営が要望したときも否定しなかった。
 それらを玉城県政でも進めればよい。安倍政権が姿勢を改めたとわかれば、県民の世論も変化しよう。辺野古沿岸の埋め立て許可を巡る裁判が近く始まる。「法的に勝てば埋め立て開始」よりも、「まず対話」が解決につながる。 

情報量多かったのは安倍政権に批判的な朝日、東京~沖縄県知事選をめぐって①選挙期間中の在京紙報道

 9月30日に投開票が行われた沖縄県知事選挙について、いくつか書きとめておきます。
 まず知事選投開票までの本土マスメディアの報道についてです。このブログでは、東京発行の新聞各紙が沖縄県知事選や米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題をどのように報じるか、一般紙5紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、東京新聞)について8月30日付から知事選投開票日当日の9月30日付まで、掲載記事の記録を続けました。最終的に以下の表にまとめました。一見して、朝日新聞、東京新聞の記事の多さが目を引きます。
 辺野古への新基地建設をはじめとして、沖縄の基地集中の問題に対しては、朝日、毎日、東京の3紙は日本政府と安倍晋三政権の政策や方針に批判的な一方で、読売、産経両紙は日本政府と安倍政権に好意的です。一般に記事本数の差がそのまま情報量の差に必ずしも直結するわけではありませんが、この朝日、東京両紙とほかの3紙との報道量の差は、明確に情報量にも差があったことを示していると思います。
 日本政府と安倍政権に対して批判的、懐疑的な新聞の方が、政権を支持する、ないしは好意的な新聞より情報量が多い、とまでは一般化できないにせよ、朝日、東京両紙の情報量が豊富だったことは、沖縄で何が起きているかを日本本土の読者に伝えようとした両紙の意志の表れだろうと思いますし、実際に、読者に沖縄の基地集中について考える材料を多く(相対的にですが)提供したと言えると考えています。

  朝日 毎日 読売 産経 東京
記事 59 33 27 33 53
社会 34 8 4 2 10
短信 2 2 4 10 0
写真 39 11 13 12 44
7 3 2 5 7
図表 7 4 4 4 7

 表にまとめた項目のうち、「記事」は文字通り、沖縄県知事選と基地問題に関連した記事の本数です。総合面の長めの読み物などは、執筆記者が異なる2本の記事で構成されていれば1本と数えたりしています。
 「社会」は「記事」のうち社会面に掲載された記事の本数です。社会面に掲載されるということは、政治の表面的な動きの報道にとどまらず、文字通り、社会の深層や人々の感情に分け入ったリポートもあると考えていいと思います。ただ今回は、沖縄出身の歌手安室奈美恵さん引退を巡る記事も5紙それぞれ、含まれています。
 朝日新聞は連日、社会面に「沖縄2018」のタイトルロゴを付けた記事を掲載していました。東京新聞は社会面記事はさほどではないのですが、同紙の大きな特徴である特報面にしばしば、読み応えのあるリポートが載っていました。表のうち「写真」が朝日、東京両紙が他3紙よりも多いのは、社会面や特報面の記事におおむね写真が付いたためです。
 選挙期間中の記事は公正公平さが必要なため、あまりバリエーションの余地がなく、往々にして各候補の主張を対比することになりがちです。しかし、朝日新聞にせよ、東京新聞にせよ、候補者の主張ということではなく、全体として沖縄社会の様々な側面を伝えようとの意志が感じられる紙面展開だったように思います。
 なお、個々の記事については主な見出しをこのブログの過去記事に書きとめています。以下に列記しておきます。 

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録①~玉城氏が出馬表明/埋め立て承認撤回 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録②~県民投票求め署名9万提出 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録③名護市議選、市長支持と不支持が同数に - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録④知事選告示/安室奈美恵さん引退 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑤朝日は社会面に「沖縄2018」 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑥知事選終盤、辺野古移設「賛成」は4分の1 - ニュース・ワーカー2

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑦~国が基地迷惑料拒否、漏れ出す住民の本音(東京新聞) - ニュース・ワーカー2

 最後に、知事選投開票日の翌日、10月1日付けの東京発行各紙朝刊について、日経新聞も含めて関連記事の主な見出しを書きとめておきます。読売新聞、産経新聞には社会面に関連記事がないことが目を引きました。

【朝日新聞】
▽1面
・トップ「辺野古反対 玉城氏当選/沖縄知事選 佐喜真氏破る/全面支援の政権に打撃」写真
・「『辺野古が唯一』再考の時」伊東望・那覇総局長
▽2面
・時時刻刻「辺野古『ノー』再び/玉城氏大勝 移設反対の継承訴え/佐喜真氏、『経済優先』届かず」「限られる件の対抗策/政権、工事再開目指す構え」図表
・「玉城氏に無党派層70%/『基地問題重視』の83%投票/本社出口調査」図表3枚
・ひと「元ラジオDJから沖縄県知事に 玉城デニーさん(58)」写真
▽3面
・「政権誤算 参院選に暗雲/首相周辺『3選直後、厳しい』」
▽社会面
・トップ「翁長氏の遺志継ぐ/玉城氏、『辺野古阻止』で結束」「『沖縄が一つに』託されたバトン」「対話強調の佐喜真氏 響かず」写真2枚
 ◇第2社会面
・「声聞かぬ政権に反感■迷って『生活優先』/有権者の思いは」
・「県民の危機感示す」江上能義・琉球大名誉教授(政治学)/「政権、ボールどう返す」遠藤乾・北海道大教授(国際政治)
・「宜野湾市長は自公系が制す 前副市長の松川氏」
▽社説
「沖縄知事選 辺野古ノーの民意聞け」

【毎日新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に辺野古反対派/安倍政権に痛手/玉城氏初当選」写真、顔写真
・「宜野湾市長選は自公系新人当選」
▽3面
・クローズアップ2018「自公総力戦落とす/『弔い合戦』に押され」写真、図表
・「『経済』より『基地問題』 出口調査」図表
▽4面(オピニオン)
・「『虚偽』出回った沖縄知事選/地元紙、情報を検証し記事化」写真
▽社会面
・トップ「辺野古再びノー/『翁長さん遺志』共感/沖縄知事に玉城さん」「佐喜真さん 争点隠し失敗」写真2枚
・ミニ論点「米兵が父 多様性くむ」熊本博之・明星大准教授(地域社会学)/「ヤマトンチュへの怒り」仲地博・沖縄大学長(行政法)・顔写真2枚
 ◇第2社会面
・「平和な沖縄託す/『政府に声届けて』」図表
▽社説
「沖縄知事に玉城デニー氏 再び『辺野古ノー』の重さ」

【読売新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を継承」写真
・「『承認撤回』無効化 今月上旬にも訴訟 政府」
・「宜野湾市長は与党系に」
▽2面
・「玉城氏 無党派取り込む/出口調査 争点『基地』43%」
・「移設問題 停滞させるな」高橋宏平・那覇支局長
▽3面
・スキャナー「移設 混迷深まる/辺野古 法廷闘争継続へ」「与党痛手 態勢立て直し」図表2枚
▽4面
・「野党、内閣と対決姿勢/『沖縄の選択に向き合え』」
▽社説
「沖縄新知事 普天間の危険性除去を進めよ」

【産経新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に辺野古反対派/翁長氏後継・玉城氏が当選」写真、顔写真、図表
・「宜野湾市長は自公系」
▽2面
・「辺野古 泥沼化の恐れ/玉城氏、工事阻止を明言/政府、あくまで移設推進」
▽社説(「主張」)
「沖縄知事に玉城氏 国と県の関係正常化図れ」

【東京新聞】
▽1面
・トップ「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を前面/2代続き 政権派破る」写真
・解説「新基地 県民再び拒否」
▽2面
・核心「辺野古阻止 勢い/政府は強硬崩さず 続く対立」写真、図表2枚
・「無党派層 7割取り込む/自公層も4分の1流れ」
・「宜野湾市長選は松川氏が初当選 自公系候補」
▽3面
・「総裁3選直後 首相痛手/目指す改憲 行程に影響も」「『残念だが仕方ない』」
▽社会面
・トップ「沖縄の声 伝える/玉城さん『結束』訴え/県民に尽くす覚悟強調」「佐喜真さん『訴え届かず』」写真
 ◇第2社会面
・「負担『もう許せない』/県民 1票に託した思い」
▽社説
「沖縄知事選 辺野古基地は白紙に」

【日経新聞】
▽1面
・「沖縄知事に玉城氏/政権支援の佐喜真氏破る」
▽2面
・「辺野古移設 対立深刻に/知事選 与党系連敗、政権に痛手」「参院選 野党共闘に弾み/政党色抑えた戦術結実」写真、図表
▽社会面
・「翁長氏の遺志継ぎ勝利/玉城氏、伝統舞踊で喜び」
※関連社説なし

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お知らせ:11月3日に東京で労組主催の「マスコミ業界就職フォーラム2020」

 告知をいただいたイベントの紹介です。
 新聞労連や全印総連、民放労連、出版労連、広告労協などマスメディア関連の産別労組でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(略称MIC)が11月3日(土)に東京で、「マスコミ業界就職フォーラム2020」を開催します。
 事前の申し込みが必要です。

 詳しくは http://www.union-net.or.jp/mic/job_forum/index.html

マスコミ業界へ就職を希望されているみなさまへ

2020年度のマスコミ業界を志望される学生の皆さんに向けて就職フォーラムを開催します。新聞社・民放・広告会社・出版社の現役社員の生の声が聞けるチャンスですので、ぜひご参加ください。

イベント内容

・マスコミ業界の採用動向、現役社員によるパネルディスカッション、現役社員と話せる質問ブース

日時:2018年11月3日(土)、開場・受付12:30、開始13:00、終了16:45

資料代 無料

 ※どうぞお気軽に私服でお越しください。会場の定員は150名です

会場 東京しごとセンター:東京都千代田区飯田橋三丁目10番3号

( 東西線飯田橋駅A5出口より徒歩3分、JR飯田橋より徒歩7分)

 https://www.tokyoshigoto.jp/facility/access/

マスコミ業界就職フォーラムの告知板は下記HPに

 http://www.union-net.or.jp/mic/job_forum/

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※「日本マスコミ文化情報労組会議」 

http://www.union-net.or.jp/mic/

沖縄の民意をどう受け止めるか、日本本土の側が問われる番~知事選で玉城デニー氏圧勝、在京紙の報道の記録(速報)

 沖縄県知事選は9月30日の投開票の結果、辺野古新基地建設反対を前面に掲げた前衆院議員の玉城デニー氏が当選しました。辺野古新基地の是非には触れず、安倍晋三政権の全面支援を受けた前宜野湾市長の佐喜真淳氏らを破りました。沖縄タイムスによると、玉城氏の得票は39万6632票、佐喜真氏は31万6458票で、8万174票の大差がつきました。玉城氏の得票は日本復帰後の沖縄県知事選で過去最多の得票とのことです。
 選挙結果から読み取れること、読み取るべきことの第一は、辺野古新基地の建設強行に対する沖縄の人々の強固な拒否の意志だと思います。それは故翁長雄志知事の遺志でもありました。佐喜真氏に投票した人たちにしても、その投票行動がただちに新基地受け入れを示すものでもないはずです。いずれにせよ、今度は日本本土の側がこの沖縄の民意をどう受け止めるのかが問われる番です。

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 東京発行の新聞各紙は10月1日付の朝刊で、日経新聞を除く一般紙5紙が選挙結果を1面トップで報じました。ただし、安倍晋三政権に批判的な朝日、毎日、東京と安倍政権に好意的な読売、産経では1面紙面のレイアウトがはっきり分かれています。朝日、毎日、東京は社会面にも関連記事がありますが、読売、産経はありません。社説では、読売、産経は玉城新知事に対し、政権とよく協議して普天間飛行場の辺野古移設計画を進めるよう求めているのが目を引きます。

 取り急ぎ、各紙の1面掲載記事と社説、那覇支局長らの署名記事の主な見出しを書きとめておきます。

【朝日新聞】
▽1面
「辺野古反対 玉城氏当選/沖縄知事選 佐喜真氏破る/全面支援の政権に打撃」
「『辺野古が唯一』再考の時」伊東望・那覇総局長
▽社説
「沖縄知事選 辺野古ノーの民意聞け」

【毎日新聞】
▽1面
「沖縄知事に辺野古反対派/安倍政権に痛手/玉城氏初当選」
「宜野湾市長選は自公系新人当選」
▽社説
「沖縄知事に玉城デニー氏 再び『辺野古ノー』の重さ」

【読売新聞】
▽1面
「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を継承」
「『承認撤回』無効化 今月上旬にも訴訟 政府」
「宜野湾市長は与党系に」
▽2面
「移設問題 停滞させるな」高橋宏平・那覇支局長
▽社説
「沖縄新知事 普天間の危険性除去を進めよ」

【産経新聞】
▽1面
「沖縄知事に辺野古反対派/翁長氏後継・玉城氏が当選」
「宜野湾市長は自公系」
▽社説(「主張」)
「沖縄知事に玉城氏 国と県の関係正常化図れ」

【東京新聞】
▽1面
「沖縄知事に玉城氏/辺野古反対を前面/2代続き 政権派破る」
解説「新基地 県民再び拒否」
▽社説
「沖縄知事選 辺野古基地は白紙に」

【日経新聞】
▽1面
「沖縄知事に玉城氏/政権支援の佐喜真氏破る」
※関連社説なし

 10月1日付の沖縄タイムス、琉球新報の社説は以下の通りです。
■沖縄タイムス社説 [玉城氏が圧勝]沖縄から新しい政治を
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/322858
■琉球新報 新知事に玉城氏 新基地反対の民意示した
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-811370.html

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑦~国が基地迷惑料拒否、漏れ出す住民の本音(東京新聞)

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月27日付朝刊から30日付朝刊までです。投開票日当日の30日付は5紙とも「きょう投開票」の見出しが並びました。
 目を引いたのは、東京新聞の30日付朝刊の特報面です。2ページ見開きで「基地迷惑料 国側が拒否」「崩れた前提 漏れ出す本音」などの見出しが付いた記事は、新基地の建設工事が止まっている沖縄県名護市辺野古の現地を、特報部の石井紀代美記者が歩いたリポートです。地元住民が新基地受け入れの条件として要望している世帯ごとの補償などを日本政府は拒否。記事によると、要望は地域としてまとまって出したものでした。
 「心の中では新基地に反対でも、『条件付き容認』という集落の決議が生きている以上は、それを口にすることは難しかったさ」「今さら大きな声で『基地反対』とは言えないけどね、僕はもう、個別補償なんてもらわなくていいさ。贅沢しようとも思わない。老後は静かに暮らしたいって、それだけさ」
 紹介されている住民の言葉からは、新基地建設問題に揺さぶられ続けてきた地元の苦衷が、ほんの一端かもしれませんが伝わってくるように思います。新基地建設強行の日本政府方針を支持する言説の中では、辺野古現地での市民の抗議行動に対して「県外など地元以外から来た活動家がやっていること」などと主張し、辺野古の地元は新基地建設に反対ではないと強調する論調も見受けられますが、地元住民の心情は到底、賛否二元で割り切れるものではありません。地元にこうした苦衷を強いているのは誰なのか―。日本本土の側から沖縄の基地集中の問題を考える際に欠いてはならない視点だと思います。
 もう一つ書きとめておきたいのは、朝日新聞が29日付朝刊の経済面に掲載した沖縄の経済と基地を巡る記事です。見出しは「沖縄経済 弱まる基地依存/県民総所得 観光は13・8%に成長/県民所得 なお全国下回る」。沖縄の経済が基地関連収入に依存しているという言説は、もはやデマと言っていいのですが、根強く流布されています。基地の存在は沖縄にとって、今や経済発展の阻害要因になっていることを本土マスメディアが経済記事として伝えることに斬新さを感じました。
 30日に判明する選挙結果を東京発行の新聞各紙が10月1日付紙面でどのように報じるのか、選挙結果をどう読み解くのか、注視したいと思います。

【9月27日付朝刊】
▼朝日
第3社会面「当事者って? 東京で考える」沖縄2018、写真
▼毎日
5面「一部 投票日前倒し/台風24号接近で沖縄知事選/陣営 影響を警戒」
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京
特報面(28面)「小池都知事、なぜ沖縄に/過去には差別的発言も?/『五輪向け貸しづくり』『踏み台扱い』」写真

【9月28日付朝刊】
▼朝日
第2社会面「子どもの上空 守りたいけど」沖縄2018、写真、地図
▼毎日(なし)
▼読売
4面「沖縄 与野党追い込み/小泉氏3度目応援■枝野・玉木氏ら次々」写真2枚
▼産経
5面「台風で投票一部前倒し/開票所分割も検討」
▼東京
6面「各陣営 票上積みに躍起/沖縄知事選 台風接近控え舌戦」
特報面(26~27面)「民間犠牲者に謝罪・補償を/沖縄戦国賠訴訟 原告らの思い/母、妹亡くし孤児に『時間返して』」「昔も今も本土の『捨て石』/『集団自決』強制、スパイ嫌疑で殺害/基地集中…『知事選に関心を』」写真4枚
社会面トップ・連載企画「ウチナーンチュ 心の痛み 沖縄知事選を前に」下「『病巣』放置 続く事件/地位協定『米軍に何もできない』」写真、地図

【9月29日付朝刊】
▼朝日
8面(経済面)「沖縄経済 弱まる基地依存/県民総所得 観光は13・8%に成長/県民所得 なお全国下回る」図表
第2社会面(38面)「辺野古反対か 政府と協調か/沖縄知事選 あす投開票」写真2枚
第2社会面「補償の期待 裏切られた 辺野古」沖縄2018、写真
▼毎日
1面「あす沖縄知事選 台風接近」図表
3面・連載企画「平成という時代」第2部 この場所5 宜野湾市海浜公園「渦巻く沖縄の憤り/訴え始めた『基地は差別』/米兵少女暴行事件 抗議の人々、広場埋め/県民投票 繰り返され」写真
3面・質問なるほドリ「米軍飛行場 なぜ辺野古に?/現行の普天間危険 計画に紆余曲折」地図
16面(文化面)沖縄論壇時評[米国と日本の重層支配]「分断強いる『強者』の論理」渡辺豪 ジャーナリスト
▼読売
2面「沖縄知事選 あす投開票」
▼産経
1面「沖縄知事選 台風直撃/あす投開票 最後の訴え中止も」
5面「沖縄知事選で竹下氏 存在感アピール懸命」写真
▼東京
2面「国と連携 佐喜真氏/地元を強調 玉城氏/沖縄知事選あす投開票」図表
特報面(28面)「サンゴの生育環境悪化/ジュゴンのエサの海草も減少/国会議員ら護岸周辺調査/国は『適切に対応』と言うが…/辺野古新基地建設」写真2枚

【9月30日付朝刊】
▼朝日
社会面準トップ「分断・負担 若者も葛藤/『納得できる答え』願い共通/知事選きょう投開票」沖縄2018、写真2枚
▼毎日
社会面「期日前や街頭演説中止/沖縄知事選きょう投開票」
▼読売
2面「沖縄知事選 きょう投開票/台風 期日前投票所閉鎖も」写真
▼産経
1面「台風通過 期日前最多35%/沖縄知事選、きょう投開票」
▼東京
2面「辺野古是非に審判/沖縄知事選きょう投開票」
2面「台風直撃 最終日 街頭演説できず◆『期日前』中止も/『前代未聞だ』陣営悲鳴」写真
特報面(26~27面)「基地迷惑料 国側が拒否/沖縄知事選 最大の争点 辺野古 移設容認派に異変/沖縄防衛局『支給根拠ない』住民代表ら『あ然』/『世帯別補償金』『移設児見舞金』」「崩れた前提 漏れ出す本音/『静かに暮らしたい』『来ない方がいい』/子々孫々まで影響懸念『住民投票行うべきでは』」写真4枚

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑥知事選終盤、辺野古移設「賛成」は4分の1

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月22日付朝刊から26日付朝刊までです。
 知事選は9月30日の投開票日まで23日で1週間。各紙とも24日付の朝刊に選挙戦終盤の情勢が掲載されました。それぞれ、沖縄県内の有権者を対象に電話世論調査を行い、これに取材結果を加味したとしています。朝日新聞は沖縄タイムス、琉球朝日放送(QAB)と共同で22、23両日に電話調査を実施。前衆院議員のデニー玉城氏がリードし、前宜野湾市長の佐喜真淳氏が激しく追っている、と伝えました。読売新聞の調査は21~23日。玉城氏と佐喜真氏が激しく競り合っている、と報じています。
 毎日新聞、産経新聞、東京新聞は共同通信の配信記事を掲載しました。共同通信は22、23両日に電話世論調査を行いました。玉城、佐喜真両氏が互角のまま激しく競り合う展開としました。琉球新報によると、電話世論調査は共同通信と琉球新報の共同実施でした。朝日、読売、共同いずれの調査でもまだ投票する候補を決めていないとの回答が2割から3割あり、投票日当日までに情勢が変わる可能性があるとしています。
 選挙戦の最大の争点は米軍普天間飛行場の移設を巡る名護市辺野古への新基地建設問題です。琉球新報の報道によると、電話世論調査で辺野古への移設の賛否を尋ねたところ、「反対」39・1%、「どちらかといえば反対」24・7%で反対は計63・8%に上るのに対し、「賛成」11・2%、「どちらかといえば賛成」16・7%で賛成は計27・9%でした。朝日新聞や沖縄タイムスによると、電話調査では、辺野古移設に「反対」50%、「賛成」25%。賛成が4分の1程度にとどまっていることは両調査に共通しているようです。この点は、日本本土の側から沖縄の人々の民意を理解しようとする際には、とりわけ留意しておかなければならない点だろうと思います。

 この期間中の記事で目を引いたのは、朝日新聞が22日付のオピニオン欄に掲載した「耕論『分断の沖縄と若者たち』」です。沖縄出身の20代の会社社長の男性と20代の大学職員の女性、本土出身で沖縄で教鞭をとる30代の大学准教授の男性の計3人の声が紹介されています。沖縄の若者たちの思いは、辺野古新基地への賛否だけで単純に色分けできる、理解できるようなものではないと、改めて感じました。
 いずれにせよ間もなく、30日に知事選は結果が出ます。沖縄県民の選択の結果です。そこにどんな民意が込められているのか。今度は日本本土の側がその民意を読み取り、沖縄の過剰な基地集中の問題に向き合わなければならないと思います。 

【9月22日付朝刊】
▼朝日
2面・いちからわかる!「『普天間の辺野古移設』沖縄知事選の争点だね/政府が工事を進めるが反対は根強い。県は承認を撤回した」図表
15面(オピニオン)耕論:分断の沖縄と若者たち/「閉塞感 反対運動に反発」国仲瞬・がちゆん代表取締役社長/「対話し変える 私たちこそ」大学職員、大城章乃さん/「歴史的な視点 世代で差」野添文彬・沖縄国際大学准教授、写真3枚
第2社会面(34面)「2児抱える18歳 夜の街で働く」沖縄2018
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京(なし)

【9月23日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(30面)「うそ歌わない。俺たちのルール」沖縄2018、写真 ※ラップ歌手
第2社会面「沖縄知事選 期日前2倍/『記入済み投票用紙 撮影要求』情報も」
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京(なし)

【9月24日付朝刊】
▼朝日
1面準トップ「沖縄知事選 玉城氏リード/本社情勢調査 佐喜真氏、激しく負う」
4面「宜野湾市長選に新顔2氏届け出 辺野古移設が争点」
第2社会面(30面)「選挙戦 対照的2陣営/沖縄知事選 投開票まで1週間」「政党色抑えて訴え」※玉城デニー氏「有名議員 応援続々」※佐喜真淳氏 沖縄2018、写真2枚
▼毎日
2面「沖縄知事選2氏互角/共同調査 争点は移設問題」※共同通信調査
2面「宜野湾市長選は新人2氏の戦い 知事選と同日投開票」
▼読売
2面「玉城、佐喜真氏激しく競る/本社情勢調査 沖縄知事選、2割は未定」
2面「宜野湾市長選告示 与野党の一騎打ち」
4面「沖縄 最終盤へ舌戦/地域経済に重点 佐喜真氏/翁長後継を強調 玉城氏」写真2枚
▼産経
2面「佐喜真・玉城氏 支持訴え/沖縄知事選 最後の日曜日/宜野湾市長選も告示」写真2枚
2面「両者競り合い 共同世論調査」
5面・連載企画「2018知事選 沖縄の選択」上:「カギ握るポスト『安室世代』/『差別』意識よりも現実政策」写真
5面「進次郎氏、応援に徹する/党執行部も人気フル活用」写真
▼東京
1面トップ・連載企画「ウチナーンチュ 心の痛み 沖縄知事選を前に」上:「『基地負担 分かち合って』/本土で訴え『売国奴』扱いに衝撃」写真、地図
1面「玉城、佐喜真氏 互角/共同情勢調査 投票先未定2割」
2面「辺野古争点 一騎打ち/30日投開票 宜野湾市長選が告示」
第2社会面(22面)「都知事が自公系応援/沖縄知事選、要請受け2日間」写真
第2社会面「税制改正、五輪控え 自民に擦り寄り?」

【9月25日付朝刊】
▼朝日
2面「安倍内閣の沖縄基地政策 『評価しない』63%/沖縄世論調査」
2面「宜野湾市長選 互角の戦い/自公維系と『オール沖縄』系」
第2社会面(32面)「移設反対 声上げる学会員/自公連携に反旗『辺野古に基地おかしい』」写真/「国境の海 聞こえぬ漁業振興 尖閣」写真、地図
▼毎日(なし)
▼読売
2面「松川氏先行、仲西氏追う/本社情勢調査 3割弱は態度未定/宜野湾市長選」
▼産経
5面・連載企画「2018知事選 沖縄の選択」中:「菅長官と距離感探る佐喜真氏/公明にも配慮/選挙後へ課題」写真
5面「期日前投票75%増 沖縄知事選」
▼東京
特報面(22面)「さがしてます 沖縄で働く薬剤師/人口10万人当たり全国最小/『薬学部なし』が背景 国は新設に慎重姿勢」写真
社会面トップ・連載企画「ウチナーンチュ 心の痛み 沖縄知事選を前に」中:「交付金 覆された民意/アメとムチ 地域を分断」写真、地図

【9月26日付朝刊】
▼朝日
4面「自民派閥 沖縄で思惑過熱/二階派 幹事長の力維持/岸田派 沖縄1区の公認/竹下派 元職の国政復帰/知事選の支援に注力」顔写真3枚
4面「日米地位協定の改定 政権支援候補も主張」
4面「翁長氏の四十九日に志位・小沢氏 玉城氏を一致して支援 強調」
第2社会面(38面)「語られぬ高江 頭上に米軍機」沖縄2018、写真
▼毎日
5面「自民 引き締め躍起/公明『動き鈍い』と不満」「野党『ステルス作戦』/『翁長氏の弔い』前面に」写真2枚
▼読売(なし)
▼産経
5面「二階氏 てこ入れ徹底/3度目沖縄入り『選挙に強い幹事長』誇示へ/沖縄知事選」写真、図表
5面・連載企画「2018知事選 沖縄の選択」下:「オール沖縄『共産隠し』腐心/弔い票頼み 強まる『翁長依存』」写真
5面「小沢氏ら、翁長氏ゆかりの地で慰霊」※短信
▼東京(なし)

国会議員票と地方票の乖離~安倍自民党総裁3選の報道の記録

 自民党の総裁選で9月20日、安倍晋三首相の3選が決まりました。
 国会議員票405票、地方票405票のうち、安倍首相は議員票329、地方票224の計553票を獲得。もう一人立候補していた石破茂氏は議員票73、地方票181の計254票でした。単純に言えば安倍首相の得票率は68%に上り「圧勝」なのでしょうが、地方票に限れば得票率は安倍首相55%に対し、石破氏は44%余に上りました。報道によると、安倍首相支持の国会議員はそれぞれの地元組織にも締め付けを図っていたことがうかがわれますので、一般の党員がそうした締め付けから自由に投票していたとすれば、石破氏の地方票はもっと増えていたのではないかと感じます。
 この投開票の結果を見れば、自民党国会議員と、一方の地方議員や地方組織、一般党員との間に乖離があるのは歴然としています。
 安倍首相を巡っては、7月の段階の世論調査で、森友学園と加計学園をめぐる安倍首相や政府のこれまでの説明に「納得していない」と答えた人は75%、森友・加計問題で安倍首相に「責任はある」は61%との結果が報じられています。内閣支持率も政権運営に支障はないとはいえ、8月の各調査では40%台が大半で、不支持が支持を上回っている調査結果も複数ありました。地方票で安倍首相の得票が半分ちょっとにとどまったのは、社会一般の中にある安倍首相へのこうした厳しい見方と通じるところがあり、納得感があります。
 そして、地方議員や一般党員と国会議員との間にある乖離は、地方組織や一般党員の感覚から国会議員は遊離していることを示しているようにも思えます。それはそのまま社会一般の民意からの遊離につながるかもしれません。ひたすら最高権力者への忖度に汲々としている自民党の多数派国会議員像がわたしの脳裏には浮かびます。政権党にあっては総裁に、政府にあっては首相とその周辺に権限が集中している中でのこの状況は、民主主義のありようとしては、決していい状況ではないと思います。

 この総裁選の結果について、東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)がどのように報じたか、21日付朝刊紙面の主な記事の見出しを最後に書きとめておきます。
 安倍政権を巡ってはしばらく前から、批判的な朝日、毎日、東京と、好意的な読売、産経とに論調が2極化しています。今回の総裁選の結果に対しても、事実関係を記述した「本記」を見ただけでも、明確に違いが見て取れます。読売、産経は石破氏の得票は数字を紹介しただけで評価にかかわる記述はありません。一方で朝日は「全体の7割に迫った首相の大勝に見えるが、石破氏が獲得した254票は予想を大きく上回り、石破氏の善戦との見方が党内で広がっている」と書き、毎日も石破氏の善戦を挙げた上で「首相は今後、党内からの批判に配慮した政権運営を迫られる」と指摘しています。東京も「首相への批判票を石破氏が一定程度取り込んだ」と評しました。
 しかし安倍首相と政権に好意的な読売新聞も、社説では「国会議員票は8割を得て圧勝したが、党員票は6割に届かなかった。『安倍1強』への不満があることを十分に認識し、首相は党内融和に努めることが大切だ」「首相は森友、加計両学園を巡る問題で、国民の不信感を招いた。記者会見では『今後も謙虚に、丁寧に、慎重に政権運営にあたっていく』と述べた。その言葉通り、説明責任を果たし、信頼回復を図ることが肝要だ」「長期政権の驕おごりや緩みが指摘されている。国民には『飽き』も生じている。短期的な成果にこだわり、誤った方向に国を導いては元も子もない。首相は地道に政策の実現を図る必要がある」などと指摘しています。産経新聞も「憲法改正を含め、安倍首相が政権運営をする上で忘れてはならないことがある。それは『国民の信頼』の確保だ。今年前半、内閣支持率の下落があった。財務省の文書改竄などへの対応で混乱し、不誠実、説明不足と見なされたのである。その後、内閣支持率は回復したが、このときの反省を忘れてはいけない」「勝敗が見えていたため党員の投票率が伸び悩んだ面はある。それでも一定数の党員が厳しい目を注いだ点を安倍首相や支持した議員は肝に銘じ、謙虚で丁寧な姿勢で政権運営に当たる必要がある」などと書き込んでいます。

 安倍首相と政権がもっとも肝に銘じなければいけないことは既に明らかだと言うべきですが、今までできていないことが、最後の3年でできるのか。はなはだ疑問に感じます。

 以下に6紙それぞれの21日付社説の見出しと書き出し部分を引用して書きとめておきます。それぞれ、安倍首相の自民党総裁3選に対して何をポイントにどういう風に見ているのか、各紙の評価の違いが端的に分かるのではないかと思います。

・朝日新聞「3選はしたものの 安倍1強の限界明らかだ」/「品格」なき締め付け/「権力」への自省欠く/国民に向き合う覚悟

 1強の弊害に真剣に向き合わず、異論を排除し、世論の分かれる政策も数の力で強引に押し通す。そんな安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない。さらに3年の任期に臨むのであれば、真摯な反省と政治姿勢の抜本的な転換が不可欠である。
 自民党総裁選は7割近い得票を得た安倍首相が、石破茂・元幹事長の挑戦を退けて3選を決めた。しかし、国会議員票では8割を得ながら、党員・党友による地方票は55%にとどまった。石破氏に投じられた45%は、首相に対する批判票と受けとめるのが自然だろう。

・毎日新聞「安倍氏が自民総裁に3選 独善的な姿勢から決別を」/本質着いた「正直、公正」/9条改憲は緊急課題か

 自民党員の中にも批判や不満が根強いことを如実に示す結果だった。
 安倍晋三首相が自民党総裁に3選された。総裁任期は3年。これにより安倍政権は2021年秋まで続き、首相の在任期間は第1次内閣と合わせ、戦前・戦後通じて最長の約10年となる可能性が出てきた。確かにこの結果は大きな意味を持つ。
 しかし、首相は国会議員票では圧倒したものの、党員・党友の得票は、現職首相という有利な立場であるにもかかわらず55%にとどまった。
 党員票は国民全体の世論により近いと見られる。今回は世論と議員意識の間に大きな落差があることが明白になった結果とも言える。
 それでも首相は当選後の記者会見で「全体で7割近い票を得た」と胸を張り、勝ったのだから全てが理解されたといった口ぶりだった。本当にそう考えているとすれば、認識は甘いというほかない。

・読売新聞「安倍総裁3選 長期的課題で着実な成果を/信頼回復へ謙虚な姿勢で臨め」/歴代最長内閣が視野に/憲法改正の準備進めよ/次世代の人物育てたい

 安倍首相が自民党総裁選で連続3選を果たし、引き続き政権を担うことになった。惰性を排し、緊張感を持って内外の諸課題に取り組み、結果を出さなければならない。
 首相は記者会見で「新しい国造りに挑んでいく。選挙で約束したことを実行に移す」と述べた。
 首相は投票総数の7割近くを獲得した。この5年9か月で政治は安定し、経済は回復基調にある。外交・安全保障政策でも相応の実績を上げたことが評価された。
 国会議員票は8割を得て圧勝したが、党員票は6割に届かなかった。「安倍1強」への不満があることを十分に認識し、首相は党内融和に努めることが大切だ。

・日経新聞「将来世代への責任果たす3年に」/社会保障の改革を急げ/政策の優先順位考えよ

 自民党の安倍晋三総裁が20日の総裁選挙で対立候補の石破茂氏を破り3選を果たした。任期は2021年9月までの3年間。6年前に経済再生を訴えて総裁になり首相に就いた安倍氏は、残り3年間でその仕上げと同時に、社会保障・財政健全化など将来世代にも責任をもつ政治を進めてほしい。
 安倍首相は総裁選後の記者会見で、有効求人倍率など数字を並べて、経済政策の実績を自賛した。
 首相が主張するように安倍政権下で雇用や企業収益は改善し、景気拡大も緩やかながら戦後最長をうかがうところまできている。ただ、石破氏が言うように景気回復の実感を得られない地方や中小企業があるのも事実だろう。

・産経新聞(「主張」)「安倍総裁の3選 憲法改正の先頭に立て 謙虚な政権運営を心がけよ」/日米同盟の活用を図れ/デフレから完全脱却を

 安倍晋三首相が、自民党総裁選で石破茂元幹事長を破り、連続3選を果たした。
 任期は3年間で、戦前戦後を通じ、首相として歴代最長の在任が視野に入る。3年などあっという間だ。国民のために必要な政策を展開し、「安倍政治」の総仕上げを図っていかねばならない。
 安倍首相は当選後、「いよいよ憲法改正に取り組む。国民のために一致協力して新しい国を造ろう」と、党所属国会議員らに呼びかけた。
 憲法改正を実現し、日本の未来を切り拓(ひら)くことは、首相と自民党に課せられた重い責務である。総裁選で首相が約束した通り、憲法に自衛隊を明記する党の憲法改正案を秋の臨時国会に提出してほしい。安全保障環境が激変する中、国民投票で「自衛隊」が憲法に書き込まれる意義は大きい。
 自民党は憲法改正の国民運動も始めるべきだ。党総裁として首相は先頭に立ってほしい。

・東京新聞(中日新聞)「安倍政権に注文する 自民総裁に連続3選 国民の声を畏れよ」/真摯な反省感じられず/同じ轍踏ませてならぬ

 安倍晋三首相を見る国民の目の厳しさを、党員票が代弁していた。これから最長三年間、政権を担う安倍氏に注文したい。「国民の声を畏れよ」と。
 石破茂元幹事長が予想以上に善戦したのではないか。安倍、石破両氏の一騎打ちだった自民党総裁選。現職総裁の安倍氏が連続三選を果たしたものの、報道機関の電話調査などで三分の二程度は得るとみられていた党員票(党員・党友の票)は55%にとどまった。
 安倍陣営は、石破氏が六年前に得た党員票が55%だったため、当初の目標通りと平静を装うが、その心中は穏やかではあるまい。

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 以下は21日付朝刊紙面の主な記事の見出しです。各紙とも東京本社発行の最終版紙面です。
▼朝日新聞
1面トップ「安倍首相 自民総裁3選/石破善戦 地方票の45%」
1面「麻生・菅・二階氏続投へ/『圧勝』できず政権運営に影/来月1日改造」
1面「『1強』のおごりの芽をつめ」栗原健太郎・政治部長
2面・時時刻刻「首相 崩れた『圧勝』/目標下回る地方票『反乱だ』」「石破氏254票次へ存在感」「憲法改正 さらに視界不良」
3面「『選挙、戦いやすい』野党攻勢へ/連携強化が焦点」/安倍首相の記者会見(要旨)
15面(オピニオン)かくも長き安倍時代/「強い官邸 戦力を総合判断」竹中治堅・政策研究大学院大学教授/「国民信じ『不都合』監視を」丹羽宇一郎・元中国大使、元伊藤忠商事会長/「不可解な“禅譲”非民主的」小島毅
社会面トップ「党員の声 政界とズレ/政治姿勢に不満■地方軽視感じる」
社会面「話法・透明性…安倍氏に注文」/「『永田町を叱った』石破氏地元」

▼毎日新聞
1面トップ「安倍首相 総裁3選/石破氏善戦 党員票45%/議員票も20上積み」
1面「次の国会に改憲案」
1面「1強への不満直視を」佐藤千矢子・政治部長
2面「改憲前進 思惑外れ/与党内も冷ややか」「看板政策 険しい道」
3面・クローズアップ2018「圧勝逃す 首相誤算/選挙の顔に不安 再燃」「人事 融和か論功か」
11面「政策論争なく活力低下」自民党総裁選 識者座談会/中西寛・京都大教授/片山善博・早稲田大教授/谷口尚子・慶応大教授
社会面トップ「地方の批判 耳傾けて/現状に危機意識持って/臭い物にふたしている」

▼読売新聞
1面トップ「安倍首相 連続3選/得票69% 石破氏破る/憲法改正、改めて意欲」
1面「麻生・菅・二階氏留任へ/内閣改造・党人事 来月初旬に」
1面「敵は惰性、おごり、飽き」伊藤俊行・政治部長
2面「国内外 数々の難問/消費税 来年引き上げ」/「改憲案 臨時国会提示へ」/「広島 安倍氏が圧勝/党員投票 島根は石破氏」
3面・スキャナー「首相、課題残す『圧勝』/党員票55% 地方取りこぼしも」「石破氏健闘『次』狙う/党内基盤 もろさ露呈」
11面・安倍首相へ注文(論点スペシャル)「苦言受け入れる政権に」数学者、藤原正彦氏/「政策実行 長期的視野で」京大教授、待鳥聡史氏/「成長持続へデジタル化」経済同友会代表幹事、小林喜光氏/首相会見の要旨

▼日経新聞
1面トップ「首相、自民総裁3選/任期3年『改憲に挑戦』/553票獲得、石破氏は254票」
1面「麻生・菅氏は留任/内閣改造 来月1日にも」
1面「日本の針路決まる3年」丸谷浩史・政治部長
2面「石破氏 目標超す地方票/44・7%獲得 ポスト安倍に芽残す/政権批判の受け皿に」
3面「求心力維持 首相に試練/残り任期3年、内外に難題/来夏参院選が正念場」
3面「経済政策に3つの注文/社会保障 給付抑制 聖域なく/消費増税 先送りは許されず/成長戦略 雇用の流動化 急務」
社説「将来世代への責任果たす3年に」社会保障の改革を急げ/政策の優先順位考えよ

▼産経新聞
1面トップ「自民総裁 安倍首相3選/麻生・菅・二階氏 留任へ/1日改造 河野・茂木・世耕氏も/『骨格は変えない』」/「臨時国会で改憲発議『簡単でない』」
1面「残り3年 何をやるつもりなのか」石橋文登・編集局次長兼政治部長
2面・阿比留瑠比の極限御免「首相 挑戦者の本質変わらず」少しずつ地固め/「独裁者」にあらず=論説委員兼政治部編集委員
3面「安倍政治 問われる成果/拉致や領土問題 正念場/消費増税へ 参院選関門」「石破氏『ポスト安倍』望み/254票『これ以上ない力に』」

▼東京新聞
1面トップ「安倍氏3選 改憲加速/秋国会へ公明と協議/石破氏 地方票は肉薄」
1面「国民の不信 残したまま」清水孝幸・政治部長
2面・核心「改憲 先走る首相/参院選までの国民投票視野/党内慎重論『この地方票では』」「『自民は一色じゃない』石破氏/『異論抑えない党に』進次郎氏」
3面「差し迫る課題山積/日米会談・中国訪問/北方領土・沖縄知事選」「続く金融緩和・伸びない所得」
24~25面(特報面)「冷や飯?厚遇?/勝者安倍氏は 敗者石破氏側にどう接する/人事処遇に小選挙区制も影響」「オトナの器 試される/勝敗超えた抱擁・『ノーサイド』/再挑戦できる社会に」
社会面トップ「『安倍一強』弱者を見て/セクハラ 許さない姿勢をはっきりと/LGBT 制度あれば人の意識変わる/派遣労働 雇止め どう生きていけば」