ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

戦争を起こさせないためのジャーナリズムの原点−Web版「ヒロシマ新聞」

 きのう(8月6日)は広島への原爆投下から64年。広島市で開かれた平和記念式典では、秋葉忠利市長が平和宣言の中で「核兵器のない世界」を掲げるオバマ米大統領を支持し、世界の多数派を「オバマジョリティー」と呼んで、2020年までの核廃絶実現のために力を合わせるよう呼び掛けたことを、各マスメディアは大きく伝えました。
 オバマ政権の誕生は、核廃絶を目指す人々にそれが決して不可能なことではないことを確信させ、勇気付ける大きな意味を持っているようです。唯一の被爆国として非核3原則を持ちながら、日本が米国の核の傘にとどまり続けていることの矛盾を突く報道も、ことしは目に付くように感じています。
 例年、この時期は社会の戦争体験の継承のために、時に「8月ジャーナリズム」と揶揄されながらも新聞や放送メディアは戦争と平和をテーマに特集を組んだりします。しかしことしは、今月30日に投開票を控えた衆院選の事実上の選挙戦が進んでいることや、3日から6日まで東京地裁裁判員裁判が開廷したことなどから、そうした報道が例年より減っている印象があります。一方で、戦後の米軍による核持ち込みをめぐる日米両国政府間の密約問題が報道によって広く知られるようになり、あるいは沖縄返還をめぐる両国の密約問題も民事裁判に持ち込まれ、再び注目されつつあります。少し大げさに言えば、戦後史の本格的な検証の予兆を感じさせる、そういうニュースがことしは目立つように思います。
 仮に月末の衆院選の結果として、政権交代が現実になるのだとすればなおのこと、戦争体験の継承と戦後史の検証をめぐる社会の議論に資するような、なお一層の報道がマスメディアに必要だと思います。

 これまでも触れたことがありますが、あらためてここで紹介しておきたいサイトがあります。

ヒロシマ新聞」
 http://www.hiroshima-shinbun.com/

 1945年8月6日、広島市に本社を置く中国新聞社は原爆によって大きな被害を受け、8月7日付の朝刊を発行できませんでした。戦後50年の1995年、その紙面を発行しようと中国新聞労働組合が「ヒロシマ新聞」を制作しました。50年前の原爆投下を今日の自分たちの視点と問題意識で報じたらこんな紙面になる、という想定です。同労組は戦後60年の2005年に、内容を一部改訂した上でヒロシマ新聞をWeb化しました。戦後の新聞ジャーナリズムの原点を忘れまいとする取り組みです。ぜひお読みください。