ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

朝日阪神支局事件から27年

 5月になりました。3日は憲法記念日であり、また27年前の1987年に、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局で散弾銃を持った男に記者2人が殺傷された事件があった日です。死亡した小尻知博記者は当時29歳でした。。共同通信などに届いた犯行声明は「日本民族独立義勇軍 別動 赤報隊 一同」と名乗り、「反日世論を育成してきたマスコミには厳罰を加えなければならない。特に朝日は悪質である」などと書かれていました。前後して朝日新聞東京本社なども襲撃され、当時首相だった竹下登氏や元首相中曽根康弘氏への脅迫、江副浩正リクルート会長宅襲撃と、赤報隊を名乗った犯行が続きました。これらの警察庁広域指定116号事件、いわゆる「赤報隊事件」は、未解決のまま2003年3月にすべての事件の時効が成立しました。
 昨年まで3年間、私は5月3日を勤務地の大阪で迎えていました。朝日新聞社は毎年この日、阪神支局玄関に祭壇を設けて小尻さんの遺影を置き、一般の方からの焼香、記帳を受けています。3年間、この日は阪神支局を訪ね、遺影に焼香しました。支局建物の3階には、事件当日、小尻さんらが座っていたソファー、散弾を受けてつぶれたボールペン、体内の散弾を写し出したエックス線写真など、数々の品を置いた資料室を設けており、5月3日は特別展示も用意されて予約なしでも見学できました。今年も同様のようです。関西にいる記者たち、中でも若い記者たち、ことし記者の仕事に就いたばかりの人たちにはぜひ一度、この資料室を見学するよう勧めます。
 3年間、このブログでも毎年5月3日にはこの事件のことを書いていました。参考に一読いただければうれしいです。

▼2013年5月4日「改憲志向高まる中で語り継ぐ意味〜朝日阪神支局事件から26年」
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20130504/1367595842

▼2012年5月3日「語り継ぐ責務〜朝日阪神支局事件から25年」
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20120503/1336055101

▼2011年5月4日「『憲法記念日ペンを折られし息子の忌』〜朝日阪神支局事件から24年」
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20110504/1304439961


 特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の行使容認論議など、最近の憲法をめぐる状況は慌ただしく、政治課題としても報道が続いています。そういう中での憲法記念日は、例年にもまして憲法と社会のありよう、とりわけマスメディアの仕事と関係が深い「表現の自由」について考えを深め、思いを新たにする日にしたいと思います。