ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

備忘:広島、長崎での安倍首相あいさつから「憲法遵守」が消えている

 1945年の原爆投下から69年。今年の8月6日、9日の広島、長崎の原爆の日は、安倍晋三政権が7月1日に閣議決定集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を行ってから、さほど日がたたないうちに迎えました。広島、長崎両市長は平和宣言で、直接「集団的自衛権」に言及したかどうかの違いはあれ、ともに憲法に基づく「不戦」の堅持を求めました。一方の安倍首相は式典でのあいさつでは、核廃絶への取り組みを強調したものの、集団的自衛権の行使容認には触れませんでした。首相のあいさつでは、広島でも長崎でも、冒頭と結びの文言が昨年とほぼ同じだったことが話題になり、被爆者から批判の声が上がったことも報じられています。

※47news=共同通信「昨年と酷似、長崎も『コピペ』? 首相あいさつに批判続出」2014年8月9日
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080901001691.html

 原爆投下69年の6日に広島市で開かれた平和記念式典でのあいさつが「昨年のコピペ(文章の切り貼り)」と指摘された安倍晋三首相は9日、長崎市の平和祈念式典でも昨年と酷似した文章を読み上げ、被爆者から「がっかり」「使い回しだ」と批判の声が上がった。
 長崎市の式典で安倍首相はあいさつの冒頭、「被爆の辛酸をなめた私たちは、にもかかわらず、苦しみ、悲しみに耐え立ち上がり、祖国を再建し、長崎を美しい街としてよみがえらせた」と昨年と同じ言い回しを使った。「被爆68周年」「68年前の本日」の数字部分がそれぞれ「69」に変わっただけだった。

 首相自身がどう考えているのかは分かりませんが、長崎でのあいさつは、広島でのあいさつが昨年と酷似していると報じられた後ですので、文面はスピーチライターの作成だとしても、首相自身も昨年と同じ文言であることは承知の上だったと考えるほかないようです。
 過去の安倍首相の原爆の日のあいさつとの比較では、もう一つ書き留めておきたい点があります。1回目の首相在任時の2007年の広島の式典では、安倍氏は「憲法」に触れて、以下のように述べていました。

 私は、犠牲者の御霊と広島市民の皆様の前で、広島、長崎の悲劇を再び繰り返してはならないとの決意をより一層強固なものとしました。今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していくことを改めてお誓い申し上げます。

 長崎でも「長崎市民の皆様の前で」として、同じ文言を口にしていました。
 昨年も今年も、この「憲法の規定を遵守」の文言は見当たりません。かつては口にしていた「憲法遵守」を今は口にしないとは、ある意味、とても正直だという気がします。


※参考 首相官邸ホームページ「安倍総理の演説・記者会見等」
▼2007年8月6日・広島
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/08/06aisatu.html
▼2007年8月9日・長崎
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/08/09aisatu.html


▼広島2014年
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0806hiroshima_aisatsu.html
▼広島2013年
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0806hiroshima_aisatsu.html


▼長崎2014年
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0809nagasaki_aisatsu.html
▼長崎2013年
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0809nagasaki_aisatsu.html