ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新型コロナ対策 強制力容認の傾向が少なからず

 4月7日に新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が発せられてから最初の週末となった4月11、12日を中心に、マスメディア各社の世論調査が実施されました。安倍晋三内閣の支持率の動向は以前の記事の通りです。ここでは、新型コロナウイルスに関する個別の質問と回答状況を書きとめておきます。対象は共同通信(10~13日実施)、読売新聞(11~12日実施)、産経新聞・FNN(11~12日実施)、NHK(10~12日実施)の4件の調査です。
 緊急事態宣言の発令自体はおおむね評価されているものの、時期が遅すぎたとする回答が75~80%超に上っています。目を引くのは、外出の抑制などに強制力の導入を容認する傾向が少なからずうかがえることです。読売新聞の調査では、外出自粛の要請で十分だと思うかどうかを尋ねたのに対し、「不十分だ」が59%でした。ただ、読売調査の設問では、日本の緊急事態宣言には欧米諸国のように住民の外出を禁止する強制力はないことに触れています。仮に欧米諸国の例に触れなかったら、違う数字になったかもしれないと感じます。
 産経新聞・FNNの調査では、日本も法改正してロックダウン(都市封鎖)できるようにすべきだと思うかどうかを尋ねており、回答は「思う」45.8% 「思わない」47.5%と二分でした。同調査では、国家的な危機や大規模災害に際して、政府が緊急的・一時的に国民に対し、強制力を持つ措置を取ることができるよう憲法に「緊急事態条項」を設けることに賛成か、との設問もあり、結果は「賛成」65.8%、「反対」23.4%でした。
 ロックダウンと憲法の緊急事態条項とで回答状況にこれだけの開きがあり、しかも現時点で海外に具体例がありイメージしやすいように思えるロックダウンよりも、国内で議論も進んでいない憲法改正に賛成が多いのは、意外な気もします。

 

【新型コロナウイルス対策】
▼新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の発令について
共同通信  評価する75.1% 評価しない20.8%
読売新聞  評価する83%   評価しない14%
産経FNN 評価する65.3% 評価しない29.0%

▼緊急事態宣言発令のタイミングについて
共同通信  適切だった16.3% 遅過ぎた80.4% 早過ぎた0.8%
読売新聞  適切だった15% 遅すぎた81% 早すぎた1%
産経FNN 遅すぎる82.9% 適切なタイミングだ12.4% まだそのタイミングではなかった0.9% 緊急事態宣言は出すべきではない1.1%
NHK   適切なタイミングだ17% 遅すぎた75% 宣言を出すべきではなかった2%

▼全住所地への布マスク2枚の配布に対して
共同通信  評価する21.6% 評価しない76.2%
読売新聞  評価する25%   評価しない73%
産経FNN 評価する21.1% 評価しない74.8%
NHK 大いに評価する5% ある程度評価する18% あまり評価しない29% まったく評価しない42%

▼損失補償について
・共同通信:緊急事態宣言に基づく休業要請に応じた企業などに国が損失補償をするべきか
 国が補償すべきだ82.0% 国が補償する必要はない12.4%
・NHK:感染防止のために、イベントや活動を自粛した事業者の損失を、国が補償することに対し
 賛成76% 反対11%

▼強制力について
・読売新聞:政府の緊急事態宣言は、欧米諸国のように住民の外出を禁止する強制力はなく、外出の自粛を強く要請することが柱です。あなたは、自粛の要請で十分だと思いますか、不十分だと思いますか
 十分だ33% 不十分だ59%
・産経FNN:緊急事態宣言が発令されても、欧米のように強制的に交通を遮断したり不要不急の外出に罰金を科したりするロックダウン(都市封鎖)はできないが、法改正して日本もロックダウンできるようにすべきだと思うか
 思う45.8% 思わない47.5%

▼緊急事態条項について
 国家的な危機や大規模災害に際して、政府が緊急的・一時的に国民に対し、強制力を持つ措置を取ることができるよう憲法に「緊急事態条項」を設けることに賛成か
 賛成65.8% 反対23.4%