「唐突感は否めない」(佐賀新聞)、オスプレイ受け入れ佐賀県知事が表明

 陸上自衛隊が導入する米国製の輸送機V22オスプレイの佐賀空港配備計画について、佐賀県の山口祥義知事が8月24日会見し、受け入れを表明しました。会見に先立ち同日、小野寺五典防衛相と会談し、国が20年間で100億円の使用料を支払い、県がこれを元に漁業振興基金などを創設するなどの使用条件で合意しました。佐賀空港は有明海に接しており、オスプレイ配備に際しては空港隣接地を国が取得してオスプレイ部隊の駐屯地を建設する計画で、県は予定地を所有する漁協と協議に入ると報じられています。
 佐賀県の地元紙の佐賀新聞は25日付の論説で「唐突感は否めない」との見出しを掲げ「駐屯地予定地の地権者である漁業者の理解が得られていない中での判断は、スケジュールありきの印象も拭えない」と指摘。このニュースの大きなポイントである100億円の空港使用料と漁業振興基金を中心に、以下のように疑問を示しています。

※佐賀新聞LIVE:論説「オスプレイ配備受諾 唐突感は否めない」2018年8月25日
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/264598

 合意した事項は、防衛省、佐賀県、県有明海漁協などの関係機関が参加して環境保全と補償を検討する協議会の設置や、自衛隊機の空港着陸料で5億円を20年間支払って計100億円の漁業振興基金(仮称)を創設すること、事故など重大事案に対応する両者のホットライン設置を盛り込んだ。
 驚いたのは100億円の基金である。突然出てきた。漁業者が要望した金額ではなく、県は防衛省と交渉で折り合った額として明確な算定根拠を示さなかった。財源となる県営空港の着陸料は県民の財産であり、本来は空港の維持管理に充てるはずだ。漁業者だけに使う「特定財源」化は、防衛省の管轄外の漁業振興策に使うための「秘策」かもしれないが、これまで表立った議論はなく、妥当性には疑問がある。
 県と防衛省は水面下で交渉を続けてきた。当の漁業者には1年前に県が聞き取りをしたものの、具体的な交渉は漁業者抜きで進められた。防衛省のコノシロ漁の追加調査もこれからで、仮に影響があれば飛行ルートや飛行時間帯の変更で対応するとした防衛相の発言に、知事が早々と理解を示したことに「筋書きがあったのでは」と不信感を募らせる漁業者もいる。

 佐賀新聞によると、100億円の着陸料の徴収は佐賀県が防衛省に申し入れたようです。

※佐賀新聞LIVE「100億円は佐賀県からの申し入れ 防衛省『応分の負担』」2018年8月25日
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/264701

 防衛計画課は、県側から「漁業振興基金の原資に充てるため、着陸料100億円を徴収したい」との申し入れがあったと説明した。オスプレイ配備には民航機の利用だけを想定して建設された佐賀空港の関連施設を使用する必要があり、空港建設時に国補助事業で県が支出した約200億円を折半することは「応分の負担であり、不合理はない」と判断した。
 20年の根拠は、想定されるオスプレイの運用期間を前提とした。担当者は「まず100億円という額ありきで、防衛省として支払う理屈として着陸料が適切だった」と述べた。

 オスプレイは機体の構造的な欠陥の疑いが根強く指摘されており、沖縄県の米軍普天間飛行場に配備されている米海兵隊のMV22の機体も、死者を出した墜落事故のほか、緊急着陸などのトラブルも続いています。日本政府は機体の安全性に問題はないとの米軍の見解をそのまま受け入れているようですが、それでも配備予定地の地元で慎重ないし反対意見はあって当然のことで、その意味で佐賀県知事の受け入れ表明への唐突感には、受け入れ同意の民意もそろっていないのになぜこの時期に?との疑問も混じっています。
 東京発行の新聞各紙も25日付朝刊では、日経新聞を除いて各紙1面の大きな扱いで報じました。唐突感のゆえだと思います。朝日新聞と東京新聞は1面トップです。以下に主な見出しを書きとめておきます。

▼朝日新聞
1面トップ「オスプレイ佐賀配備合意/防衛省・県 着陸料 年5億円/漁業者は反発」
2面・時時刻刻「オスプレイ いきなり合意/地元反発する中 佐賀知事表明」「防衛省幹部『こんなに早いとは』」「計51機配備計画 陸自・米軍」
▼毎日新聞
1面準トップ「佐賀県 オスプレイ容認/陸自配備 地元漁協と協議へ/着陸料100億円」/用語説明「オスプレイ差が配備計画」
2面「県民不安消えず 時期尚早の声も」※見出し1段
▼読売新聞
1面準トップ「オスプレイ佐賀受け入れ/知事表明 国、着陸料100億円」
2面「佐賀配備 離島防衛の要/政府、漁業者説得急ぐ」
▼日経新聞
社会面「オスプレイ受け入れ表明/佐賀空港配備で知事」※見出し2段
▼産経新聞
1面準トップ「オスプレイ佐賀配備合意/防衛省と県 着陸料 20年で100億円」
▼東京新聞
1面トップ「オスプレイ佐賀配備合意/漁協も協議受け入れ/知事が正式表明/着陸料20年間100億円」
1面「用地交渉、安全性 残る課題」
第2社会面「地元『なぜ急ぐ』『仕方ない』」

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 この中で興味深く読んだのは、読売新聞の2面のサイド記事「佐賀配備 離島防衛の要」です。陸自のオスプレイは離島の上陸・奪還作戦を担当する「水陸機動団」の輸送を担当し、機動団の本拠地の長崎県・相浦駐屯地に近い佐賀空港への配備が急務となっていることを説明した上で、以下のように書いています。

 オスプレイは今秋5機、来年以降は年4機ずつ配備される見通しだ。当面は木更津駐屯地(千葉県木更津市)に暫定配備する方向だが、「佐賀配備が決まらない中では、木更津が受け入れるはずがない」(自民党国防族議員)との見方もあり、防衛省は佐賀県との交渉を急いでいた。

 なぜこの時期に受け入れ表明なのかということに関連して言えば、防衛省側には切迫した事情があるということでしょうか。そうならなおのこと、水面下で続いていたという防衛省と佐賀県の交渉で何が話されていたのか、情報公開が必要でしょうし、マスメディアも深層を探り報じていくべきだと思います。
 オスプレイを巡っては、米空軍の特殊作戦用の機体CV22が5機、東京・横田基地に10月1日に正式配備されることが8月22日に発表されたばかりです。沖縄の普天間飛行場への配備は、沖縄を挙げての反対にもかかわらず、日本政府は米軍の運用のことであるとして、当事者性を放棄したに等しい対応でした。横田配備でも同じ姿勢なのでしょうが、このブログで以前触れたように、日本政府は米国の通知から18日間も秘匿していました。結果として日本国民、地域住民は不意打ちのように配備を知ることになりました。

news-worker.hatenablog.com

 オスプレイ配備を巡っては、沖縄も横田も民意不在、住民無視と言うほかない状況が続いています。日本政府―防衛省が主体になる佐賀のケースはどう進むのでしょうか。なぜ機体の安全面で相対的に定評がある既存のヘリではだめなのか、なぜオスプレイでなければだめなのか。さらには、離島奪還作戦が必要になる現実味はどの程度あるのか、といった「そもそも論」も含めて、マスメディアは報道を展開していっていいと思います。そうなればその先に、佐賀のオスプレイ配備の問題から横田、沖縄のオスプレイ配備の問題へ、さらには沖縄の基地集中の問題へと、当事者意識を備えた社会的議論の高まりも期待できると思います。