沖縄県名護市沖の浅瀬で13日夜、米軍普天間飛行場所属の海兵隊の輸送機オスプレイが墜ちました。乗員5人は救助され、うち2人が負傷とのことですが、機体は大破。一夜明けて14日には、岩場に流れ着いた無残な機体の残骸がテレビ映像で報じられました。オスプレイはかねてより機体の危険性が指摘され、2012年10月の沖縄配備の際には、沖縄県議会と県内全市町村の議会が抗議決議などを採択し、配備反対の県民集会には主催者発表で10万人以上の人たちが集まるなど、まさに全県を挙げて配備に反対しました。しかし、米軍は一顧だにせず配備を強行し、日本政府もそれに唯々諾々と従いました(わたしにはそのように思えました)。そればかりか、日本政府は自らもオスプレイが安全であると信じていることを証明するかのように、オスプレイの購入と陸上自衛隊への配備まで決めました。そうした経緯がありますので、翁長雄志知事ら沖縄県側にとっては懸念が現実のものになってしまい、「まさか」という感じは全くなく、「やっぱり」と言うか「とうとう」と言うべき事態なのだろうと思います。今回の事故を、とりわけ沖縄県外、日本本土(ヤマト)の人々が考える上では、沖縄の人たちが配備に反対を重ねて表明していたことを特に踏まえなければならないと思います。
14日の日中の動きを見ていると、安倍晋三首相も稲田朋美防衛相も、事故に対してはさすがに遺憾の意は表しました。ただし、稲田防衛相は米軍側からの情報として、機体はコントロールできる状態だったとして、「墜落ではない。不時着水だ」と強調しています。沖縄で記者会見した米軍のニコルソン4軍調整官も事故について謝罪はしましたが、事故機は空中給油の訓練中にホースをプロペラで切断し、プロペラを損傷。パイロットは住宅地への被害を避けるために普天間飛行場へは向かわなかったとして、機体はコントロールできていたこと、機体の欠陥とは考えていないことを強調したと報じられています。恐らくこれから先も、米軍も日本政府も墜落とは認めず、不時着水で通していくことになるのでしょう。しかし、どのような呼び方をしようとも、オスプレイ1機が訓練中に、海上で大破する重大な事故を起こしたことに変わりはありません。
驚いたのは、事故への抗議に訪れた沖縄県の副知事に対して、ニコルソン4軍調整官が、パイロットは住民、住宅に被害を与えなかった、感謝されてもいいくらいだと、激しい怒りの感情をあらわにしたと報じられていることです。副知事が、沖縄から撤退してもらって構わないと言うと、政治問題化するのか、と言ったとも伝えられています(15日付朝日新聞朝刊「時時刻刻」)。命令によって駐留する生粋の軍人の感覚なのでしょうか。沖縄では、米軍基地の過剰な集中があり、選挙で示した民意が実現されない、日本のほかの地域では起こりえない日々が続いています。そのことを疑問に思う民意が当選させたのが今の翁長知事ですし、その翁長知事は公約に従って普天間飛行場の県内移設を許さないために、日本政府との法廷闘争にも進みました。基地を巡って沖縄にはそうした事情がある中での4軍調整官の「感謝されてもいいくらいだ」との発言は、住宅地に墜ちなければ大した問題ではない、との、むしろ沖縄駐留の米軍のホンネが出たものなのでしょう。そのホンネは、小さな不祥事は基地の中で隠し通してしまえばいい、という発想につながっていないでしょうか。不平等と指摘されて久しい日米地位協定の抜本改定が進まないことにも関連しているように思いますし、米兵や米軍関係者による事件事故のたびにいくら「綱紀粛正に努める」と繰り返しても、事件事故が絶えないのも同根のことだと感じます。4軍調整官の副知事への発言は、沖縄の人たちとの関係性の中では何事であれ「このくらいは大した問題ではない」で済ませようとするメンタリティが、駐留米軍の中で、トップから末端にまで共有されていることをうかがわせているように思います。そして、そうした状態を沖縄に強いている一方の当事者が日本政府です。
今回の事故でもう一つ、留意すべきだと思うのは日本の主権に基づく捜査です。2004年8月に普天間飛行場に隣接する沖縄国際大の構内に米軍ヘリが墜落した際には、米軍施設外だったにもかかわらず沖縄県警が現場から締め出されました。今回は日本の海上保安庁が捜査権を持っています。米軍がどこまで受け入れるのか、注視しようと思います。
今回の事故の報道に思うのは、日本本土のマスメディアは表面的な動きだけではなく、オスプレイ配備に沖縄の人たちが反対してきた経緯や、米兵による犯罪などの基地被害が絶えない構造的な問題にも切り込んで、沖縄で何が起きているかを日本本土に住むこの国の主権者たる日本国民に伝えるべきだ、ということです。
事故の発生は深夜にわたる時間帯でした。13日23時半ごろからマスメディアの取材・報道は始まったようです。新聞で言えば、全国紙も朝刊制作の終盤を迎えるころで、この事故を紙面でどのくらいの大きさで扱うか、極めて限られた時間の中で判断しなければなりませんでした。
東京発行の朝刊各紙最終版では、1面に入れたのは朝日新聞、毎日新聞、東京新聞。読売新聞、日経新聞は1社(第1社会面)、産経新聞は2社(第2社会面)でした。備忘として、見出しと扱いを書きとめておきます。
・朝日:1面中「米軍オスプレイ不時着/沖縄沖、乗員は脱出」
2社「沖縄 批判・不安の声」
・毎日:1面肩「米オスプレイ不時着/配備後初 2人負傷/名護市沖」
1社「沖縄『起こるべくして』/基地政策に影響も」
・読売:1社「オスプレイ海に不時着か/沖縄沖 米軍乗員5人救助」
・日経:1社「沖縄でオスプレイ不時着/本島沖、乗員2人けが」※1面インデックスに掲載
・産経:2社「オスプレイ不時着/沖縄沖、搭乗5人救助」
・東京:1面肩「オスプレイ不時着/沖縄沖、訓練中に/搭乗員救助」
1社「『住んでいる所だったら』」
14日付夕刊では、読売新聞も1面に入れました。朝日、毎日、東京は1面トップ。日経新聞は社会面ですがトップで大きな扱いでした。