自民にひときわ厳しい読売新聞、産経新聞~都議選の各紙社説

 7月4日の東京都議選について、新聞各紙が6日付の社説で取り上げています。東京発行紙では朝日、毎日、読売、産経、東京の各紙が掲載しました。共通しているのは、自民党と菅政権に対して「事実上の敗北」(朝日)ととらえていることです。
 その中でも、読売新聞と産経新聞の厳しさが目立ちます。読売新聞は「政治とカネをめぐる不祥事や、公文書改ざん問題などに適切に対処しなかったことが、底流にあろう。『自民1強』の驕りに、有権者が強い不満を抱いていることを真摯に反省すべきだ」と、安倍晋三前首相当時にまでさかのぼって、反省を求めているとも読めそうな一文が目を引きました。
 産経新聞は、中国共産党の創建100年に自民党が二階俊博幹事長名で祝賀のメッセージを送ったことを挙げて「こうした姿勢に保守層が反発を強めたことも、過去2番目に低い42・39%という投票率に表れたのではないか」と、低投票率の責任をも自民党の対中姿勢に求めています。
 以下に東京発行の5紙のほか、地方紙の関連する社説の見出しと、本文の一部を書きとめておきます。

▼朝日新聞「東京都議選 菅政権への厳しい審判」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14963210.html

 感染が再拡大している新型コロナ対策や目前に迫る東京五輪への対応など、菅首相の政権運営に対する都民の厳しい審判とみるべきだ。
 (中略)
 東京五輪についても、「開催ありき」で突き進む政権と都民の意識の乖離(かいり)は大きかった。
 朝日新聞が告示後に都民を対象に行った世論調査では、延期・中止が6割、開催する場合も無観客が6割超を占めた。首相が繰り返す「安全安心な五輪」に、足元の都民が信を置いていないことは明らかだ。「無観客」での開催を公約に掲げた都民ファが自民に迫る第2党となり、「中止」を強く訴えた共産党が議席を積み増したことを重く受け止めねばならない。

▼毎日新聞「都議選で自民振るわず 政権不信の民意示された」
 https://mainichi.jp/articles/20210706/ddm/005/070/048000c

 菅義偉政権の新型コロナウイルス対策の迷走と、東京オリンピック・パラリンピック開催ありきの姿勢に、東京都民の不満と不信が示された形だ。
 (中略)
 自公は世論の反発が強い五輪問題を公約に盛り込まず、争点化を避けた。首相はワクチン接種を迅速に進めるとアピールし、観客を入れての開催に固執してきた。
 しかし「安全・安心な大会を実現する」と繰り返すだけで、国民の不安に応えようとしない態度に厳しい民意が突きつけられた。ワクチン供給を巡る混乱も響いた。
 感染が再拡大する中、公明党の山口那津男代表でさえ選挙戦終盤には、無観客も視野に入れるべきだと主張したほどだった。

▼読売新聞「勝者なき都議選 有権者の批判どう受け止める」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210705-OYT1T50323/

 どの政党も有権者からの積極的な支持を得られず、勝者のいない選挙だったと言えよう。与野党ともに、強い危機感を持つ必要がある。
 (中略)
 選挙戦の序盤では、自民党が優勢という見方も出ていた。だが、新型コロナウイルスの新規感染者数が増加に転じる中でワクチン供給が遅れ、東京五輪・パラリンピック開催にも不安が広がった。これらが逆風となった形だ。
 政治とカネをめぐる不祥事や、公文書改ざん問題などに適切に対処しなかったことが、底流にあろう。「自民1強」の 驕りに、有権者が強い不満を抱いていることを 真摯に反省すべきだ。

▼産経新聞「自民の『敗北』 為すべきことの徹底図れ」
 https://www.sankei.com/article/20210706-6WFREXHL5NKJ7CGE5LLUWFXTVY/

 衆院選の前哨戦として注目された東京都議選で自民党は33議席を得て第一党を奪還した。ただし、分水嶺(ぶんすいれい)とされた自民と公明党を合わせて過半数に達する目標は大きく下回った。公明は候補者全員が当選を果たしたのだから、実質的には自民の「敗北」である。
 (中略)
 自公両党は公約で五輪開催の是非には触れず、選挙戦では感染対策を徹底した上で開催すべきだと主張してきた。
 この分かりにくさが、五輪への嫌悪感を助長したと反省すべきである。政府・与党が五輪の魅力を十分に発信することができていれば、結果は違ったはずだ。
 新疆ウイグル自治区や香港などでの深刻な人権侵害問題を抱える中国共産党の創建100年に自民は二階俊博幹事長名で祝賀のメッセージを送った。
 こうした姿勢に保守層が反発を強めたことも、過去2番目に低い42・39%という投票率に表れたのではないか。
 政府・与党が出直すために為(な)すべきことは何か。ワクチン接種を進め、五輪・パラリンピックを成功させ、自身の立ち位置を再確認し、徹底することである。

▼東京新聞・中日新聞「東京都議選 政権不信と向き合え」
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/114863?rct=editorial

 自治体の議員選挙とはいえ、国政と無縁ではない。新型コロナウイルス感染症や東京五輪・パラリンピックの対応に対する有権者の政権不信の表れだと受け止めるべきである。
 (中略)
 自公両党は選挙戦でワクチン接種の着実な推進を訴えたが、職場接種の新規受け付け中断などワクチン安定供給への懸念が生じたことも選挙戦で不利に働いた。
 東京は五輪の開催都市であり、小池氏はその責任者だ。五輪への不満は都民ファにも向けられて当然だが、それでも第二党にとどまったのは無観客開催を求めるなど都民の不安を代弁し、中止や延期を主張した共産、立民とともに政権批判票を取り込んだためだ。
 菅政権は都議選結果に表れた有権者の不安や不満に、真摯(しんし)に向き合わねばならない。

▼北海道新聞「都議選自民不振 政権は批判受け止めよ」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/563752?rct=c_editorial

 東京で感染が再拡大する中、菅義偉政権はワクチン接種の供給不足に陥るなど迷走した。五輪も観客入りで開催する方針を示してきたが「安全・安心」の根拠を十分に説明していない。
 選挙戦で自民党は五輪開催方針を支持しつつも公約に盛り込まず、積極的に論じなかった。
 こうした姿勢に不満が高まり、政権批判が結果に表れた。首相は「期間を置いてしっかり分析して次に備えたい」と語ったが、危機感が乏しいと言わざるを得ない。

▼河北新報「東京都議選と各政党/民意と捉えて衆院選に臨め」
 https://kahoku.news/articles/20210706khn000002.html

 東京五輪で菅首相は観客を入れての開催にこだわり、前のめりとも言える姿勢を見せてきた。だが、感染の「第5波」の到来が現実味を帯びる中、菅首相が言う「安全、安心な大会」の根拠が揺らいでいることへの不安は大きい。
 自公が選挙戦で五輪の問題を避けた一方で、「無観客」を掲げた都民ファーストの会が議席減を一定程度に食い止めたほか、「中止」を主張した共産党、「中止か延期」を公約にした立憲民主党は議席を増やした。五輪に対する有権者の微妙な心理が投票行動に影響を与えたとみることはできよう。

▼信濃毎日新聞「都議選自民苦戦 感染対策と五輪の批判だ」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021070600133

 新型コロナウイルス対策と東京五輪に対する有権者の批判が表れたといえる。
 (中略)都内では新型コロナの新規感染者数が増加傾向で、「第5波」への懸念が強まっている。それなのに政府の対策は、ちぐはぐだ。
 ワクチン接種を「切り札」と訴えながら、職場接種の新規受け付けを停止した。再拡大の懸念があるのに東京五輪の開催方針を見直さず、無観客の必要性を訴える専門家の警告を無視した形で「上限1万人」を決めた。海外選手が入国時に新型コロナ陽性となった場合の対応も混乱した。

▼京都新聞「都議選の民意 コロナと五輪 不安映す」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/593265

 新型コロナウイルスへの対応と東京五輪・パラリンピック開催を巡り、政権与党への根強い不満が突き付けられたといえよう。
 (中略)当初は楽観論もあった「自公で過半数」が失速したのは、コロナと五輪開催に対する都民の不安を映している。感染の再拡大傾向が表れ、頼みのワクチン接種が供給不足で滞ったことが政権与党への逆風となったとみられる。
 (中略)菅首相は、目標議席を下回る結果を「謙虚に受け止める」とした。五輪を成功させ、その余勢を駆って解散総選挙に臨む意向とされるが、五輪に対する民意の厳しさをしっかりと認識すべきだ。

▼徳島新聞「都議選自民苦戦 菅政権への不信表明だ」
 https://www.topics.or.jp/articles/-/554253

 原因は、政府が主導する新型コロナ感染防止対策や東京五輪開催問題での不信感だ。政権には、有権者の「なぜ」に向き合う姿勢と努力が欠けていた。
 五輪とパラリンピックが終われば、衆院選は目前となる。政権のカードは、ワクチン接種の進捗(しんちょく)と五輪の盛り上がりである。果たして、有権者の不信を拭い去る切り札になるのだろうか。解散時期を含め、厳しい政権運営を迫られる。

▼西日本新聞「東京都議選 自民党に政権不信の逆風」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/765845/

 第1党の座を奪い返したとはいえ、伸び悩みは歴然としており、勝利と呼ぶには程遠い。自民党は自らに吹く民意の逆風を重く受け止めるべきだ。
(中略)自民は4月の国政3選挙で不戦敗を含め全敗し、北九州市議選などの大型地方選挙でも敗北が続く。間もなく五輪を開こうという首都で、想像以上の逆風を浴びた痛手は大きい。菅義偉首相にとっては、場当たり的なコロナ対策を改め、ワクチン接種を順調に進めて国民の不安解消に努めるしかないだろう。