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ジャニーズ事務所の「NGリスト」コメントに疑問~「前半ではなく後半で」がなぜ消えた?

 ジャニーズ事務所元社長の性加害をめぐる同社の10月2日の記者会見の際、同社サイドの関係者が「NGリスト」を持ち込んでいたと、NHKが4日夜に報じました。見事な報道でした。

 「ジャニーズ事務所会見 会場に質問指名の『NGリスト』」
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231004/k10014215471000.html

ジャニー喜多川氏の性加害の問題をめぐりジャニーズ事務所が今月2日に記者会見を開いた際、事務所から会見の運営を任されていた会社側が、複数の記者やフリージャーナリストの名前や写真を載せて質問の指名をしないようにする「NGリスト」を会場に持参していたことが関係者への取材でわかりました。
これついてジャニーズ事務所は、事前の打ち合わせに会社が持ってきたメディアのリストに「NG」と書かれていたため「絶対当てないとダメですよ」と伝えたとしたうえで、会場に持参されていたリストについては「関与していない」とする見解を示しました。

 ジャニーズ事務所の広報対応の信頼性が大きく揺らいでいます。加えて、この「NGリスト」に対する同社のコメントをめぐっても大きな疑問があります。同社は4日夜、報道機関の問い合わせに回答しました。その内容はNHKの上記記事の中にもありますが、スポーツ紙各紙のサイトが全文を報じています。一方で同社の公式サイトには5日の日付で「弊社記者会見に関する一部報道について」との文章がアップロードされています。同社の公式コメントということでしょう。4日夜の回答と5日の公式コメントの間には、事実関係の根幹部分に見過ごせない差異があります。

 まず、「原文のまま」の注記を付けていたスポニチの4日夜の記事から、ジャニーズ事務所の回答の一部を引用します。

※「会見『NGリスト』 ジャニーズ事務所が回答『弊社は誰も関与しておりません』井ノ原のやり取りも説明」
 https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/10/04/kiji/20231004s00041000600000c.html

 PR会社が作成したと言われる顔写真が入った書類を、私たちは誰も見ておりません。
 会見前々日の会議で、本件について打ち合わせが行われた際、媒体リストを持ってこられて、そこにNGと書いてあったので井ノ原が、「これどういう意味ですか?絶対当てないとダメですよ」と言いました。
 するとPR会社が では前半ではなく後半で当てるようにします。と答えました。
 そのやりとりをその場にいた役員全員が聞いております。
 今回流出した資料は、弊社の関係者は誰も関与しておりません。
 見てもおりません。

 このやり取りの部分は、5日付の公式コメントでは以下のように変わっています。

※「弊社記者会見に関する一部報道について」
 https://www.johnny-associates.co.jp/news/info-723/

弊社は、会見前々日に本件について会見を委託したコンサルティング会社と打ち合わせをいたしました。
その時にコンサルティング会社がメディアのリストを持ってこられて、そこにNGと言う文字があったので、井ノ原が、「これどういう意味ですか?絶対当てないとダメですよ」と言いました。その時に会見を委託したコンサルティング会社の方は、では当てるようにします。と答えました。
そのやりとりをその場にいた役員全員が聞いております。
ですから今回流出したと言われている資料は、弊社の関係者は誰も作成に関与しておりませんし、指名をしない記者を決める等も全く行なっておりません。

 「NG」の文字への指摘に対するPR会社の回答が、4日夜の段階では「では前半ではなく後半で当てるようにします」となっていたのに、5日付の公式コメントでは「では当てるようにします」に変わっています。
 「前半ではなく後半で当てるようにする」ことをジャニーズ事務所側が了承していたのなら、記者会見で指名する取材者に優先順位を付けることを認めていたということです。いずれにせよ質問を当てる取材者を選別することに変わりはありません。そうであれば、リストの現物を見ていたかどうかに意味はなくなります。
 この記事を書いている5日朝の段階で、NHKの上記記事にも、スポーツ紙各紙のサイトにも、ジャニーズ事務所が回答内容を訂正したとの記述は見当たりません。ジャニーズ事務所はどう説明するのでしょうか。

【写真】ジャニーズ事務所の公式サイトより=2023年10月5日午前7時すぎ