ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

インタビューの秘訣は事前準備〜スイッチオンで取材のワークショップ

 新聞や放送、出版などのマスメディアで働くプロやメディア研究者らがデスク役となり、大学生の取材・記事執筆を指導する実験的ジャーナリズムの試み「スイッチオン」プロジェクトの全体ミーティングが25日午後、東京・池袋の立教大で開かれました。3月の合宿以来、メールやオフ会でそれぞれデスクの個別指導を受けてきた学生が集合。インタビュー取材のワークショップの後、それぞれの取材に備えた準備状況をデスクがチェックしました。

 まずデスク2人がインタビューする人、受ける人になって15分間の模擬インタビューを2組分披露しました。テーマはやはり「スイッチオン」。わたしは1組目でインタビューを受ける役で「よくしゃべるやりにくい相手」だったかもしれません。2組目はインタビュアーの河北新報、寺島英弥さんが、こんなに長く話して時間は大丈夫かなあと思ったのに計ってみたら時間通り、という熟練の「時間をコントロールする技」を披露し、学生ばかりかデスク陣からも感嘆の声が上がりました(写真は模擬インタビューに見入る参加学生)。
 登壇した4人のデスクがあらためてインタビューのポイントをそれぞれに解説。共通しているのは、インタビュー相手のことを事前に十分に調べておくことがいかに重要か、という点でした。わたしからは、インタビューでは相手も自分のことを見ている(あなたは相手から見られている)、ということを話しました。相手が作家やライター、表現者なら著作や作品に目を通し、ほかに相手が受けたインタビュー記事や紹介記事も読んで、そのことを(自分なりの感想も簡潔に加えて)取材の冒頭に伝えれば、相手にこちらの取材意図も熱意も伝わります。そこでうまく自分をアピールできるかどうかで、とりわけ初対面の場合はインタビューの雰囲気が随分と変わります。他のデスクからも、自分と相手との共通点を紹介(出身地の近くに住んでいたことがある、との実例が寺島さんのインタビューでは示されました)して、リラックスできる雰囲気を作る、などのポイントが紹介されました。
 また、メモをしっかり取ること、質問に対する答えを頭の中で整理しインタビューと同時並行で次の質問を考えること、事前の想定と違ったやり取りになったら自分の仮説にこだわらないこと、等々のポイントが挙げられました。

 この後は、参加学生同士の実技トレーニング。3人1組になり、1対1のやり取りを3人目が観察する方式で1回10分の模擬インタビューを3回やりました。テーマはやはりスイッチオン。終わった後でそれぞれ自分が観察した模擬インタビューを元に、「こうすればインタビューはうまくいく」と感じたポイントをカードに書き出し、整理・分類してポイントを確認しました(写真は学生同士の模擬インタビューの様子)。
 その後の各班ごとの個別指導も含めて、夜まで長時間の全体ミーティングでしたが、デスクのわたし自身、ほかのデスクの皆さんの経験やノウハウに身近に接することができ、大きな刺激を受けました。
 スイッチオン・プロジェクトの全体スケジュールとしては、この日のミーティングがいわば仮免許交付。個々人の作業の進行状況にもよりますが、取材の企画書、質問項目の整理、取材申込書にデスクからOKが出れば、いよいよ取材の申し込みになります。教習所を出ておっかなびっくり、そろりと路上運転に踏み出す学生たちをしっかりサポートしていこうと思います。

【追記】2009年4月27日午前9時
 プロジェクトのプログラムディレクターの藤代裕之さんも自身のブログ「ガ島通信」にリポートをアップしています。
 「良いインタビューのための3カ条」
 http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20090426/1240757002