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IOCの意思は開催国の主権を上回るのか~東京五輪「緊急事態宣言下でも開催」

 驚きました。東京五輪を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長(IOC副会長)が5月21日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下にあっても大会を開催するかを問われ、「答えはイエスだ」と明言した、とのニュースです。
 ※共同通信「IOC、緊急宣言下でも五輪可能 コーツ調整委員長が明言」=2021年5月21日
 https://this.kiji.is/768434669786021888?c

this.kiji.is

 共同通信は「国内では大会を通じた感染の拡大や、地域医療圧迫への懸念から、開催を疑問視する声も根強い。発言は波紋を広げそうだ」と伝えています。
 コーツ調整委員長の発言は、デイリースポーツのサイトに比較的詳しく紹介されています。

 ※デイリースポーツ「IOC 事実上の“開催宣言”緊急事態宣言でも世論8割反対でも強行示唆『我々の仕事する』」=2021年5月21日
 https://www.daily.co.jp/general/2021/05/21/0014347562.shtml

www.daily.co.jp

 発言をいくつか引用します。

 「緊急事態宣言の下で5競技のテスト大会が行われた。最悪の状況を想定して行われて成功している。答えはイエスだ」
 「世界保健機関(WHO)にアドバイスも受け、我々が示している対策を実行すれば、安全安心な開催はできると言われている。これは緊急事態宣言下であってもなくてもだ」
 「我々はできる限りのことをやっている。大会がすべての参加者、日本国民のために安全なものであると担保している。これは日本のワクチン接種状況と関連があるのかもしれない。ワクチン接種が増えていけば、世論調査の結果も良くなっていくのでは?」
 「もし改善しないとしても、我々は我々の仕事をするだけだ」

 緊急事態宣言は、法に基づいて日本政府が発令しています。仮にこのままコロナの感染拡大が収束しないまま推移し、緊急事態宣言が解除されないまま大会期間を迎えるのが確実になった際には、日本政府としても五輪大会の開催の可否を判断せざるを得ないはずです。可否いずれにしても、それは日本の国家主権にかかわることです。しかし、コーツ調整委員長は、「開催」の答えを明言してしまいました。開催国の主権よりもIOCの判断、意向が優先するのか、との疑念が浮かびます。
 22日付の産経新聞によると、政府の基本的対処方針分科会メンバーの舘田一博・東邦大教授(感染症学)は「東京で緊急事態宣言が出されている状況の中で五輪ができるとは思わないし、やってはいけない。それはコンセンサスだ」と述べています。コーツ発言は、やはり日本の主権を飛び越えているのではないかと感じます。


 22日付の東京発行の新聞各紙は、コーツ発言を事実のみ伝えているのが目立ちます。全国紙5紙は東京大会の公式スポンサーに名を連ねています。スポンサーとしての立場からも、コーツ発言への見解を表明してもいいのではないでしょうか。