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橋下氏に対抗、「反独裁」明確に:11月3〜4日の大阪ダブル選挙紙面 ※追記:市長選は「独裁」めぐり一騎打ちへ

 大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙は、知事選告示まで1週間を切りました。大阪発行の新聞各紙の関連報道も熱がこもってきたと感じます。
 【追記】2011年11月5日午前7時45分
 大阪市長選の構図が変わります。共産党推薦で立候補を予定していた元共産党大阪市議の渡司考一氏(59)が4日、出馬を取りやめる方針を決めたと伝えられました。
 渡司氏は共同通信の取材に対し「私が出馬することで橋下氏が当選し(橋下流の)独裁手法が広まると、全国の皆さんに申し訳ない。平松氏も反独裁を掲げている」と説明しました。
 ※「平松、橋下氏の一騎打ちへ 大阪市長選、共産系出馬せず」(47news=共同通信
 http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011110401000984.html
 市長選は再選を目指す平松邦夫市長と大阪府知事からの転身を目指す橋下徹氏の一騎打ちになる見通しになりました。橋下氏対“反橋下氏連合”の構図です。
 在阪各紙の5日付朝刊はこのニュースを大きく扱っていると思います。追って、書き留めていこうと思います。
(追記終わり)

▽3日付朝刊
【朝日】2社面全7段「市長選へ加速」「陣営、戦略さまざま」(橋下徹平松邦夫、渡司考一の各氏)/1段「倉田・池田市長辞職願を提出 民主・輿石氏と会談」
【毎日】1面4段「平松氏『反独裁』公約」「大阪市長選 4選禁止条例を提案」▼11面(経済面)全5段「攻める橋下氏 守る平松氏」「質問状回答を分析」▼1社面/4段「倉田氏に共闘迫る」「橋下改革継承も 民主『平松氏と』」/1段「堺市長は『中立』」
【読売】2社面3段「『大阪再生』へ前哨戦始動」「知事選候補予定者 街頭などで決意表明」/全3段「市長の任期『3期12年まで』平松氏公約に」/1段「『攻めの橋下氏 守りの平松氏』」「関西経済同友会が評価」
【産経】1面トップ4段「平松氏『独裁許さぬ』」「多選禁止、給与は2割減」「大阪市長選公約 きょう発表」▼2社面/2段「維新、“敵地”で街宣」「倉田氏 民主幹部を訪問」/全3段「女子大生27人呼びかけ」「27日投票に」/1段「出馬予定者への質問状回答公表 関西経済同友会
【日経】1社面全7段「『都構想より高齢化対策』」「再編対象、堺市民は複雑」/2段「市長選3陣営が 質問状への回答」
【京都】2面3段「『反独裁』へ多選禁止」「平松氏公約案 市長報酬削減も」/倉田市長が辞職願
【神戸】2社面1段「平松氏、反独裁へ多選禁止」「公約集全文判明 橋下氏と改革競う」
※祝日のため3日夕刊の発行はなし

 毎日、読売、産経が期せずして、大阪市長選で再選を目指す平松邦夫氏の公約を正式発表に先んじて報じました。京都新聞神戸新聞共同通信の配信記事を掲載しています。共同の記事によると、「『あらゆる独裁を許さない立場から、市長の多選禁止(自粛)条例制定を提案する』と打ち出し、対抗馬の橋下徹・前府知事を念頭に『反独裁』の立場を明確にした」とのことです。
 今回のダブル選では、ややもすると橋下氏の強烈なキャラクターとモノの言い回しだけが突出して目立つことになりかねません。その意味で、他の候補予定者の政策や公約にも細やかな注意を払うことは、メディアの在りようとして大事なことだと思います。

▽4日付朝刊
【朝日】4面(政治面)全5段「政策実現 数の力」「橋下流 争点に」「小泉・小沢氏を彷彿」「独裁か指導力か」=ワッペン「揺らぐ2大政党」▼2社面3段「倉田氏『平松氏とタッグ』」「橋下氏への批判は控える」/3段「『市長は連続3選まで』」「平松氏マニフェスト発表」
【毎日】2面3段「『広域連合』など現実路線」「大阪市長選 平松氏が公約発表」表「平松氏の主な公約」1枚▼10面(オピニオン)1ページ「論点 大阪ダブル選と大都市制度」▽都市再生戦略を前面に=上山信一慶応大教授・大阪維新の会政策特別顧問▽自治と活力を奪う独裁=村上弘立命館大教授▽府県と大都市の対立=廣田全男横浜市立大教授▼2社面全6段「『倉田・平松』共闘宣言」「民主要望受け方針転換」
【読売】1社面トップ4段「大阪の高校 来春は『狭き門』?」「募集定員 受験予定者に2000人不足」「『定員割れで統廃合対象』維新条例案 府立が警戒」▼2社面3段「握手高々 共闘アピール」「平松氏の集会 倉田氏参加」/3段「大阪市発展へ 公約7本柱」「平松氏が正式発表」
【産経】1面3段「倉田氏、平松氏と共闘」「大阪ダブル選 対『維新』鮮明に」▼2社面全3段「倉田氏『分権改革、私が』」「『未来託せぬ』平松氏」「維新に対抗心」
【日経】1社面3段「倉田氏、平松氏と連携」「維新への対抗 最優先に」/3段「4選自粛条例提案へ」「平松氏が公約発表」
【京都】2面3段「『道半ば』再選へ意欲」「平松氏公約発表」/全2段「平松氏と共闘宣言 倉田氏が激励会出席」
【神戸】2社3段「平松氏がマニフェスト発表」「『道半ば』再選へ意欲」/3段「倉田氏 平松氏と共闘を宣言」▼4面1ページ特集「『大阪都』構想で攻防」※橋下、平松両氏の政策、政治手法、プロフィルを比較。記事5本
▽4日夕刊
【毎日】1社面トップ5段「敬老パスは争点外」「市に負担も反発懸念?」
【読売】2社面全5段・ワッペン「首長のチカラ・1」元三重県知事北川正恭氏「ダブル選 分権への試金石」/1段「倉田市長の辞職 池田市議会同意」

 4日付け朝刊では、毎日新聞が識者3人の大型談話で、神戸新聞共同通信配信の特集用記事で、それぞれ丸1ページを埋めているのが目を引きました。
 ナマの動きでは、大阪市長選に再選を目指して出馬する現職の平松邦夫氏が3日、マニフェストを正式に発表。また、知事選に立候補する大阪府池田市の倉田薫市長が平松氏の支援集会に出席し、平松氏と共闘することを宣言しました。橋下氏が代表の「大阪維新の会」は大阪市長選に橋下氏を、知事選に同会幹事長の府議松井一郎氏を擁立することを決めており、両選挙を通じて「維新の会」と「平松・倉田共闘」の対決構図が固まりました。各紙とも、紙面のスペースを割いてこれらの動きを伝えています。
 そのほかの記事では、大阪の府立高校が定員割れを防ごうとする結果、来春の高校入試では定員総数が受験予定者より2千人少なくなる、との読売新聞の社会面トップ記事が目を引きました。記事によると、維新の会が大阪府議会に提出している教育基本条例案では、定員割れが3年連続で続いた府立高は統廃合するとしていることもあり、今春、定員割れだった高校が定員減を求めているとのことで、前例のない異常事態だと指摘しています。
 朝日は政治面に、橋下氏の政治手法を小泉純一郎元首相や小沢一郎民主党元代表と比較して論じた長文の記事を掲載しました。2005年衆院選で、小泉氏が郵政改革反対派の地元に「刺客」として擁立した「小泉チルドレン」が現在では十数人しか残っていないことを紹介。その一人の片山さつき参院議員が記事中で語っている内容が印象に残るので引用します。「野党に転落したのは政策がぶれたから。小泉改革を理解せず人気についていっただけ。私たちは小泉残留孤児だ」。