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「説明不十分」「議論尽くさず」が圧倒するも安倍晋三内閣支持率なお35―40%台〜安保法制成立後の世論調査

 集団的自衛権の行使容認などを含む新たな安全保障法制の成立を受けて、マスメディア各社が9月19、20日に実施した世論調査の結果が報じられています。手元の紙面やネットで確認できるデータを項目ごとにまとめてみました。後掲しますが、特徴的な点は以下の通りだと考えています。

  • 安保法制について政府や与党が十分に説明したかどうかは、いずれの調査も「不十分」との回答が7割から8割に上っています。国会で議論、審議が尽くされたかどうかも、ほぼ同じ傾向の結果です。つまり、政府や与党の説明は十分ではないし、国会での議論も尽くされていない、と考える人が圧倒多数です。
  • 安保法制への賛否、ないし成立を評価するかどうかでは、消極的な回答が過半数ですが、肯定的な回答もおおむね3分の1あります。上記と合わせて考えると、安保法制の意義を認める人たちの中にすら、政府・与党の説明は十分ではないし、国会での論議も尽くされていないと考える人が少なからずいるように思えます。同時に、政府・与党の説明は十分ではないし、国会での論議も尽くされていないが、それでも新しい安保法制が成立したことは良かったと積極的に考える人もいることを示しているのかもしれません。
  • 内閣支持率はいずれの調査も「不支持」が「支持」を上回りましたが、「支持」の急減、「不支持」の急増と呼べるほどの変化は見られません。支持率が数ポイント下落したように思える調査でも、8月14日の戦後70年談話発表前の支持率との比較では、ほとんど横ばいと言って良さそうな水準です。30%台半ばから40%台の支持率は、決して低くはありません。ましてや、憲法違反との指摘が憲法学者や元最高裁長官ら専門家から絶えない法案を、衆院に続いて再び採決を強行し、数をたのんで成立させた直後としては、この支持率は十分に高いと感じます。

 いずれにせよ、世論の過半数が反対している政策であっても、また、圧倒多数の人たちが議論が尽くされたとは思っていなくても、政権のゴリ押しで通ってしまっているのが現状です。それでも支持率は急落することがなく、このままではいよいよ代わりの首相の成り手も現れず、そのことがまた安倍晋三氏の党内1強、自民党の政界1強ぶりを強めることになるのではないかと、危惧を覚えます。


◎主な調査結果(カッコ内は前回比)
内閣支持率
朝日新聞 「支持」35%(1ポイント減)「不支持」45%(3ポイント増)
毎日新聞 「支持」35%(3ポイント増)「不支持」50%(1ポイント増)「関心がない」12%(3ポイント増)
読売新聞 「支持」41%(4ポイント減)「不支持」51%(6ポイント増)
日経新聞テレビ東京 「支持」40%(6ポイント減)「不支持」47%(7ポイント増)
産経新聞・FNN 「支持」42・6%(0・9ポイント減)「不支持」47・8%(3・3ポイント増)
共同通信 「支持」38・9%(4・3ポイント減)「不支持」50・2%(3・8ポイント増)
JNN 「支持」46・3%(0・8ポイント減)「不支持」49・5%(0・7ポイント増)
※これまでの支持率のデータとともにこちらにまとめています。
※前回比3ポイント増の毎日新聞は、前回調査は戦後70年談話が発表される前の8月8、9日実施でした。


▼安保法制への賛否、評価
朝日新聞 「賛成」30%「反対」51%
毎日新聞 「(成立を)評価する」33%「評価しない」57%
読売新聞 「(成立を)評価する」31%「評価しない」58%
日経新聞テレビ東京 「(成立を)評価する」31%「評価しない」54%
産経新聞・FNN 「(成立を)評価する」38・3%「評価しない」56・7%
 ※安保法制の整備 「必要」69・4%「必要ではない」24・5%
共同通信 「賛成」34・1%「反対」53・0%
JNN  「(成立を)評価する」33%「評価しない」53%

 
▼国民の理解を得るための政府・与党の努力
朝日新聞 「十分にしてきた」16%「十分にしてこなかった」74%
毎日新聞 「国民への説明十分だ」13%「不十分だ」78%
読売新聞 「十分に説明した」12%「そうは思わない」82%
日経新聞 「十分だ」12%「不十分だ」78%
共同通信 「十分に説明していると思う」13・0%「思わない」81・6%


▼安保法制は憲法違反か
朝日新聞 「違反している」51%「違反していない」22%
毎日新聞 「憲法違反だと思う」60%「思わない」24%
共同通信 「憲法違反だと思う」50・2%「思わない」31・8%
JNN 「憲法に違反していると思う」54%「思わない」26%


▼特別委での採決強行
朝日新聞 「よくなかった」67%「よかった」16% ※特別委での採決強行を含めた進め方
毎日新聞 「問題だ」65%「問題ではない」24%
参院本会議で与党が採決
読売新聞 「適切だ」30%「適切ではない」60%
参院特別委での採決時、与野党議員がもみ合う混乱状態となったことへの責任
産経新聞・FNN 「与党・野党両方にある」57・2%「与党側にある」23・3%「野党側にある」17・2%
JNN 「より与党にある」35%「より野党にある」23%「分からない」42%


▼国会での議論、審議
朝日新聞 「尽くされた」12%「尽くされていない」75%
共同通信 「尽くされたと思う」14・1%「思わない」79・0%
JNN 「十分だった」16%「十分ではなかった」76%


▼外国が日本を攻撃しにくくする抑止力が高まるか
朝日新聞 「高まる」32%「高まらない」43%
読売新聞 「高まる」34%「そうは思わない」51%


▼日本や自衛隊が米国などの戦争に巻き込まれる可能性が高まるか
朝日新聞 「高まる」64%「高まらない」21%
共同通信 「高くなる」68・0%「変わらない」27・1%「低くなる」2・5%
※安倍首相の「巻き込まれることは絶対にない」との発言
JNN 「納得する」22%「納得しない」70%


▼法案に反対した野党の対応
朝日新聞 「評価する」34%「評価しない」49%
※内閣不信任案など野党の抵抗
読売新聞 「適切だ」41%「適切ではない」48%


【追記】2015年9月23日6時30分
 「安倍晋三内閣『不支持』が『支持』上回るが、なお支持率35―40%台〜安保法制成立後の世論調査」から改題しました。