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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新聞の文字をどこまで大きくするのか~値上げ初日の朝日紙面に思うこと

 5月になりました。朝日新聞の定期購読料が月決めで500円増の4900円になりました。夕刊発行がない朝刊単独の「統合版地域」は4000円です。値上げの一方で、朝日新聞社は紙面の文字の拡大を予告していました。1日付朝刊を手に取ってみての感想は、人それぞれかもしれません。わたしは、紙面全体が白っぽく見えるように感じました。以前のこのブログの記事にも書きましたが、おそらく、高齢者層へのサービス強化との位置づけなのだと思います。しかし、この紙面の白っぽさは、むしろ小学生など子ども向けの新聞に、見た目の印象が近づいているように感じます。

【写真】5月1日付の朝日新聞朝刊1面

 わたしが新聞を読み始めたのは小学生のころ、今から半世紀ほど前です。当時の新聞は小さな活字がびっしりと並んでいました。1行は15文字。その縦幅が「1段」で、新聞1ページでは15段でした。現在は12段が主流。1行の文字数は新聞社によって異なりますが、朝日新聞は11文字になりました。ただし、対象は1~3面と社会面、社会総合面のようで、そのほかの面は従来通り、12文字のようです。
 1行15文字は、戦時中からほぼ変わらず続いていたようです。その後、1980年代以降、新聞各紙は繰り返し、文字を大きくしてきました。今、縮刷版などで1ページ15段、1行15文字の紙面を見ると、その差に驚きます。確かに、文字が大きくなって、新聞は読みやすくなりました。読者へのサービスとして歓迎されていた時期があったことも確かです。しかし、どこまで大きくすればよいのか、その根拠は何なのか、よく分かりません。果たして今回の朝日新聞の文字拡大は、どのような評価になるのでしょうか。

【写真】戦時中の新聞紙面の例。紙面の左半分は1行15文字

 1日付の朝日新聞の1面トップは、ウクライナで捕虜になったロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員5人の同紙記者への証言でした。1ページめくった2面全体に、「時時刻刻」として関連記事を展開しています。戦争の実相の一端を伝える興味深い内容だと感じました。値上げに見合うだけの満足度を高める、ということでは、こうした取材をする記者がいる新聞、こうした記事を読むことができる新聞であることをアピールする方策もあるように思います。新聞は印刷媒体の商品ですが、重要なのはそこに載っている情報です。

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