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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

石破内閣への支持は高くはない一方で、立民・野田代表への期待も高くない ■追記:「党利党略」は自民にも野党にも

 石破茂内閣の発足後に実施された世論調査の結果が報じられています。10月1~2日実施の4件(朝日新聞、読売新聞、日経新聞、共同通信)と、10月3日実施の毎日新聞の調査です。石破内閣の支持率は51~46%の枠内に収まりました。岸田文雄内閣の末期は20%台にまで落ち、不支持が支持を上回っていたこととの比較では、ひとまずは落ち着いた数字と言えそうです。
 ただし、刷新感を打ち出すのに腐心したはずの新内閣発足時の調査としては、決して高い水準ではありません。石破首相が前言を翻して、早期の衆院解散・総選挙を言明したこと、自民党のパーティー券裏金事件の真相解明に期待できそうもないことなどが要因ではないかと感じます。

 興味深いと感じるのは、立憲民主党の野田佳彦・新代表への期待感です。読売新聞と共同通信が、野田代表に期待するかどうかを尋ねています。結果は両調査ともほぼ同じで、「期待する」は約半数、「期待しない」は4割余りです。
 石破内閣の支持率と比較するのは少し乱暴かもしれませんが、野田代表への期待はほぼ同じ水準なのに、ネガティブな評価は野田代表の方が強く出ています。新政権よりも野党第一党の党首の方に、民意の逆風は強いように見えます。
 政権交代のためには、衆院選で野党候補が小選挙区で勝利する必要があります。小選挙区で自民党、公明党の候補を凌駕する野党共闘が実現できれば、政権交代も現実味を帯びてきます。しかし実際には、野田代表は早々に共産党を共闘から排除しました。自公に勝てる野党共闘の構築は、そう簡単ではないでしょう。加えて、野党第一党の立憲民主党への期待が高まっているとは言い難い状況です。政権交代は相当にハードルが高いと感じます。

 

【追記】2024年10月4日10時20分

■「党利党略」は自民にも野党にも
 朝日新聞が10月3日夜、石破首相が裏金議員を衆院選で原則公認する方針を固めた、と「独自」クレジット付きで速報しました。小選挙区の公認候補は比例代表との重複立候補も認めるとのことです。
※朝日新聞デジタル「自民、『裏金議員』原則公認へ 衆院選で比例重複も容認、首相方針」(2024年10月3日 20時59分)
 https://digital.asahi.com/articles/ASSB33HGLSB3UTFK00ZM.html

 例えば共同通信の世論調査では、裏金議員の公認について「理解できない」の回答が75%に上っています。「原則公認」が本当だとすれば、あまりに民意と乖離した判断です。石破首相は党内基盤の弱さがかねて指摘されています。仮に、断固として裏金議員を排除すれば、党内基盤がさらに揺らぎ、ひいては政権が不安定になります。前言を翻しての早期解散も、裏金議員への甘い対応も、自民党ではだれが総裁であっても変わらないと感じます。結局は、有権者がそれを了とするかどうかです。

 3日は野党側にも動きがありました。立憲民主党の野田佳彦代表が日本維新の会、国民民主党、共産党の党首と個別に会談しました。目的は、裏金議員の小選挙区の野党候補を一本化することだと報じられていますが、やはりそう簡単ではないようです。
 野党共闘をめぐっては、組織力を持つ共産党を含めて候補を一本化すれば自民、公明の候補に勝てることは、過去の選挙でも実証済みでした。政権交代が実現すれば共産党は閣外協力の立場になる、との合意が立憲民主党との間で成立していたこともありました。しかし、共産党は現在「共闘の基盤が損なわれた」として、小選挙区への独自候補擁立を進めています。3日の党首会談でも、田村智子委員長は「争点は裏金の問題だけではない」と述べたと報じられています。野田代表の呼び掛けを一蹴したようです。仮に、政権の座に就いた時には共産党は排除する意向の野田氏が代表になれば、事実上、共産党を選挙共闘から追いやってしまうことは、立憲民主党内では予想できたことのはずです。自民、公明の連立政権に終止符を打つことを最大の目標にするなら、別の対応の選択肢はあったのではないかと感じます。
 自民党の補完勢力と指摘されることもある日本維新の会は、馬場伸幸代表が立憲民主党に対して「たたきつぶす」とまで口にして激しい敵意を見せていました。今さら、強固な共闘が可能でしょうか。

 自民党の看板が変わっても党利党略で動くことに変わりはない一方、野党にもそれぞれの党利党略があるのだと感じます。「政治」では当たり前なのかもしれません。
 危惧するのは、既成政党が低迷する一方で、極端な主張を掲げる政治勢力が支持を増していくようになってしまうことです。次期衆院選には、河村たかし名古屋市長が日本保守党の公認候補として出馬します。自民党に失望したとして、作家の百田尚樹氏が立ち上げました。自民党よりさらに右派寄りの政治勢力です。
 結局は有権者の選択の問題だと思います。
※参考:2015年のこのブログの記事です

news-worker.hatenablog.com