衆院選後の政権のありようの輪郭が見えてきたように感じます。
自民党の森山裕幹事長と、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が10月31日に会談し、榛葉幹事長は、首相指名選挙では決選投票も含めて国民民主党の議員は玉木雄一郎代表に投票することを伝えたと報じられています。両党は政策協議を開始することで合意するとのことです。
共同通信によると、日本維新の会幹部は取材に、首相指名で立憲民主党の野田佳彦代表に投票するのは困難との認識を示したとのことです。共同通信は「決選投票で国民、維新両党が野田氏に投じなければ、石破氏の得票が上回る」と報じています。また「自民は経済対策に国民の主張を反映させ、政策ごとに連携する『部分連合』の実現を目指す。森山、榛葉両氏は会談で、協議する事案や項目に応じて担当者らが話し合う方針を確認した」と報じています。
特別国会での首相指名を経て、自民党、公明党連立の石破茂政権が継続し、国民民主党が政策案件によっては支持に回る「部分連合」の方向性が浮き彫りになってきた、と感じます。
※共同通信「石破首相選出の公算大 維新・国民は野田氏に投票せず」=2024年10月31日18時31分
https://www.47news.jp/11704295.html
他紙のデジタル記事も10月31日夜、自公と国民民主による「部分連合」の方向性を報じています。
※朝日新聞「自公国3党の『部分連合』形成へ 予算編成や税制改正で連携合意」=10月31日18時38分
https://digital.asahi.com/articles/ASSB032V1SB0UTFK00DM.html
※毎日新聞「自民と国民民主『政策ごとに協議』で合意 『103万円の壁』焦点に」=10月31日22時01分最終更新
https://mainichi.jp/articles/20241031/k00/00m/010/339000c
衆院選で国民民主党は議席数を7から28にまで伸ばしました。「手取り収入を増やす」との公約が支持されたと指摘されています。自民党、公明党の議席が合計で過半数を大きく割り込んだ中で、自公連立政権の維持のキャスティングボートを国民民主党が握る形になってきました。
毎日新聞の記事は玉木代表が記者団に語った内容を紹介しています。
一方、玉木氏は31日、記者団に「(所得税の)基礎控除引き上げは必要だ。それを全くやらないのであれば協力できない。予算も法律も通らないだろう」と述べ、年収103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しが協力条件になるとの考えを示した。政府内では、国民民主が求める水準まで基礎控除を引き上げると7兆~8兆円程度の税収減になるとの試算があり、今後の焦点になる可能性がある。
「部分連合」のために自民、公明両党がこの条件を飲めば、国民民主党としては公約の実現を果たしたことになります。政権交代は不発でも、政党として筋を通したとアピールできます。さらに支持を広げることができる、との期待もあるでしょう。野党にもそれぞれ政党としての「党利党略」があるということでしょうか。政党である以上は当然なのかもしれないとも感じます。
「部分連合」が現実のものになったとして、気になるのは、民意にかなう方向なのかどうかです。衆院選直後の10月28、29日に実施した読売新聞と共同通信の2件の世論調査では、以下のような結果が示されています。
【読売新聞調査】
▽自民党と公明党の連立政権に、国民民主党が加わることに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 25%
・反対 51%
・答えない 24%▽衆議院選挙によって、与野党の勢力は拮抗しました。あなたは、自民党中心の政権の継続を望みますか、それとも、現在の野党中心の政権に交代することを望みますか。
・自民党中心の政権の継続 43%
・野党中心の政権に交代 40%
・答えない 18%
【共同通信調査】
▽あなたは、今回の衆院選後も自民、公明両党による連立政権の継続を望みますか、望みませんか。
自公政権の継続を望む 38・4%
自公政権の継続は望まない 53・0%
分からない・無回答 8・6%▽あなたは、次の政権の枠組みはどのような形が望ましいと思いますか。
自民、公明両党による少数与党政権 18・1%
自民、公明両党に日本維新の会などを加えた政権 19・3%
立憲民主党を中心とした多くの野党による政権 24・6%
政界再編による新たな枠組みの政権 31・5%
その他 0・1%
分からない・無回答 6・4%
自公連立政権の継続を望む声は半数に満たず、そうかと言って、立憲民主党など野党中心の連立政権への期待も高いとは言えない、との印象です。読売新聞の調査では、自公連立に国民民主党が加わることには過半数が反対ですが、完全な連立ではなく「部分連合」となると、評価は異なるかもしれません。
国民民主党の政党支持率は、前回10月2、3日の調査に比べて、読売新聞調査では6ポイント増の7%、共同通信調査でも5.9ポイント増の9.8%と、衆院選を経て支持を大きく広げています。「部分連合」の方向性が、支持にどう影響するかも関心があります。後続の世論調査の結果を待ちたいと思います。
【写真】「手取りを増やす」を前面に掲げた国民民主党の衆院選特設ページ