一つ前の記事(「立花孝志『2馬力』選挙」と報じることで見えにくくなること)の続きです。
千葉県知事選に出馬を表明している立花孝志・「NHKから国民を守る党」党首が2月14日の定例会見で、「2馬力選挙」の撤回を表明しました。出馬自体は維持するとのことです。前回の記事と同じように、全国紙5紙が「2馬力撤回」をデジタル版でどのように報じているかを見てみました。共同通信の配信記事を使用した新聞が複数あることから、共同通信のデジタル記事も47newsでチェックしました。
まとめると以下の通りです。
14日当日の深夜になってまず朝日新聞が記事をアップ、次いで共同通信が短く速報した後、記事を配信、それを産経新聞と日経新聞が使用しました。毎日新聞は翌15日午後に共同通信の記事を使用。読売新聞は16日朝になっても記事が見当たらず、黙殺なのかと思っていたら、午前8時半過ぎにアップしてきました。
7日の出馬表明の際には、自身への投票を求めず、現職の熊谷俊人知事の演説の前後に同じ場所で応援演説を実施すると話していました。これに対し、熊谷知事は12日に記者団に対し「迷惑だ」として自制を求める意向を表明したと報じられています。
「2馬力」の撤回理由は、朝日新聞、共同通信、読売新聞の各記事とも①ある人物にやめてくれと強く言われた②熊谷知事が「迷惑」と言っているのに、逆らってやることはよくない-の2点です。これだけを見れば、妙に素直だなと感じなくもありません。
そこで思うのは、兵庫県の斎藤元彦知事のことです。選挙戦の最後まで「2馬力選挙」は続きました。仮に、斎藤知事が「やめてくれ」と言えば、そこで止まっていたのか。兵庫の「2馬力選挙」にはどんな思惑があったのか。
そんなことを考えていたところに、以下のサイトの記事を目にしました。「よろず~ニュース」という、いわゆるエンタメ系の“ニュース”サイトです。
※「立花孝志氏 千葉県知事選での『2馬力選挙』を撤回『熊谷知事が迷惑だとおっしゃっている』」=2025年2月14日
https://yorozoonews.jp/article/15626819
記事の中に以下のくだりがあります。
この日の会見で「2馬力に関してはやめる。兵庫県では斎藤さんを当選させたかったわけじゃなくて、メディアがおかしいことをしているから、メディアのおかしなところを追求した結果、2馬力になった程度。特に現職(熊谷氏)に、そういったものがない」とした(引用者注:原文のまま)。
熊谷氏が、立花氏の2馬力予告に「迷惑だ」と発言したことも踏まえ「何よりも明確にですね、熊谷知事が『迷惑だ』とおっしゃっていることを、逆らってやることはよろしくないだろう。僕のポリシーとして、同じことを2回するってのはかっこ悪いなというか、知恵がないっていうのがある」と、撤回の理由を説明した。
前回の記事でも触れたことですが、やはり本質は「2馬力」ではないと感じます。法に「禁止」と明示がない限りは何をやってもいい、と考えている人物が代表の政治団体が、国会に議席を持ち、地方議会にも複数の議員を擁している現状をどう考えるのか。その勢力の拡散の場、手段が主としてデジタル空間、SNSであるならば、マスメディアはデジタルやSNSでどう振る舞うのかが問われていると感じます。デジタルやSNSに対するマスメディアの視点と知見が問われている、と言っていいようにも思います。
マスメディアの強みはファクトチェックのスキルです。ただし、より重要なのは、そのファクトチェックの結果を、デマやフェイクニュースを信じている人、信じかけている人たちにどう届けるかです。