国会議員票と地方票の乖離~安倍自民党総裁3選の報道の記録

 自民党の総裁選で9月20日、安倍晋三首相の3選が決まりました。
 国会議員票405票、地方票405票のうち、安倍首相は議員票329、地方票224の計553票を獲得。もう一人立候補していた石破茂氏は議員票73、地方票181の計254票でした。単純に言えば安倍首相の得票率は68%に上り「圧勝」なのでしょうが、地方票に限れば得票率は安倍首相55%に対し、石破氏は44%余に上りました。報道によると、安倍首相支持の国会議員はそれぞれの地元組織にも締め付けを図っていたことがうかがわれますので、一般の党員がそうした締め付けから自由に投票していたとすれば、石破氏の地方票はもっと増えていたのではないかと感じます。
 この投開票の結果を見れば、自民党国会議員と、一方の地方議員や地方組織、一般党員との間に乖離があるのは歴然としています。
 安倍首相を巡っては、7月の段階の世論調査で、森友学園と加計学園をめぐる安倍首相や政府のこれまでの説明に「納得していない」と答えた人は75%、森友・加計問題で安倍首相に「責任はある」は61%との結果が報じられています。内閣支持率も政権運営に支障はないとはいえ、8月の各調査では40%台が大半で、不支持が支持を上回っている調査結果も複数ありました。地方票で安倍首相の得票が半分ちょっとにとどまったのは、社会一般の中にある安倍首相へのこうした厳しい見方と通じるところがあり、納得感があります。
 そして、地方議員や一般党員と国会議員との間にある乖離は、地方組織や一般党員の感覚から国会議員は遊離していることを示しているようにも思えます。それはそのまま社会一般の民意からの遊離につながるかもしれません。ひたすら最高権力者への忖度に汲々としている自民党の多数派国会議員像がわたしの脳裏には浮かびます。政権党にあっては総裁に、政府にあっては首相とその周辺に権限が集中している中でのこの状況は、民主主義のありようとしては、決していい状況ではないと思います。

 この総裁選の結果について、東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)がどのように報じたか、21日付朝刊紙面の主な記事の見出しを最後に書きとめておきます。
 安倍政権を巡ってはしばらく前から、批判的な朝日、毎日、東京と、好意的な読売、産経とに論調が2極化しています。今回の総裁選の結果に対しても、事実関係を記述した「本記」を見ただけでも、明確に違いが見て取れます。読売、産経は石破氏の得票は数字を紹介しただけで評価にかかわる記述はありません。一方で朝日は「全体の7割に迫った首相の大勝に見えるが、石破氏が獲得した254票は予想を大きく上回り、石破氏の善戦との見方が党内で広がっている」と書き、毎日も石破氏の善戦を挙げた上で「首相は今後、党内からの批判に配慮した政権運営を迫られる」と指摘しています。東京も「首相への批判票を石破氏が一定程度取り込んだ」と評しました。
 しかし安倍首相と政権に好意的な読売新聞も、社説では「国会議員票は8割を得て圧勝したが、党員票は6割に届かなかった。『安倍1強』への不満があることを十分に認識し、首相は党内融和に努めることが大切だ」「首相は森友、加計両学園を巡る問題で、国民の不信感を招いた。記者会見では『今後も謙虚に、丁寧に、慎重に政権運営にあたっていく』と述べた。その言葉通り、説明責任を果たし、信頼回復を図ることが肝要だ」「長期政権の驕おごりや緩みが指摘されている。国民には『飽き』も生じている。短期的な成果にこだわり、誤った方向に国を導いては元も子もない。首相は地道に政策の実現を図る必要がある」などと指摘しています。産経新聞も「憲法改正を含め、安倍首相が政権運営をする上で忘れてはならないことがある。それは『国民の信頼』の確保だ。今年前半、内閣支持率の下落があった。財務省の文書改竄などへの対応で混乱し、不誠実、説明不足と見なされたのである。その後、内閣支持率は回復したが、このときの反省を忘れてはいけない」「勝敗が見えていたため党員の投票率が伸び悩んだ面はある。それでも一定数の党員が厳しい目を注いだ点を安倍首相や支持した議員は肝に銘じ、謙虚で丁寧な姿勢で政権運営に当たる必要がある」などと書き込んでいます。

 安倍首相と政権がもっとも肝に銘じなければいけないことは既に明らかだと言うべきですが、今までできていないことが、最後の3年でできるのか。はなはだ疑問に感じます。

 以下に6紙それぞれの21日付社説の見出しと書き出し部分を引用して書きとめておきます。それぞれ、安倍首相の自民党総裁3選に対して何をポイントにどういう風に見ているのか、各紙の評価の違いが端的に分かるのではないかと思います。

・朝日新聞「3選はしたものの 安倍1強の限界明らかだ」/「品格」なき締め付け/「権力」への自省欠く/国民に向き合う覚悟

 1強の弊害に真剣に向き合わず、異論を排除し、世論の分かれる政策も数の力で強引に押し通す。そんな安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない。さらに3年の任期に臨むのであれば、真摯な反省と政治姿勢の抜本的な転換が不可欠である。
 自民党総裁選は7割近い得票を得た安倍首相が、石破茂・元幹事長の挑戦を退けて3選を決めた。しかし、国会議員票では8割を得ながら、党員・党友による地方票は55%にとどまった。石破氏に投じられた45%は、首相に対する批判票と受けとめるのが自然だろう。

・毎日新聞「安倍氏が自民総裁に3選 独善的な姿勢から決別を」/本質着いた「正直、公正」/9条改憲は緊急課題か

 自民党員の中にも批判や不満が根強いことを如実に示す結果だった。
 安倍晋三首相が自民党総裁に3選された。総裁任期は3年。これにより安倍政権は2021年秋まで続き、首相の在任期間は第1次内閣と合わせ、戦前・戦後通じて最長の約10年となる可能性が出てきた。確かにこの結果は大きな意味を持つ。
 しかし、首相は国会議員票では圧倒したものの、党員・党友の得票は、現職首相という有利な立場であるにもかかわらず55%にとどまった。
 党員票は国民全体の世論により近いと見られる。今回は世論と議員意識の間に大きな落差があることが明白になった結果とも言える。
 それでも首相は当選後の記者会見で「全体で7割近い票を得た」と胸を張り、勝ったのだから全てが理解されたといった口ぶりだった。本当にそう考えているとすれば、認識は甘いというほかない。

・読売新聞「安倍総裁3選 長期的課題で着実な成果を/信頼回復へ謙虚な姿勢で臨め」/歴代最長内閣が視野に/憲法改正の準備進めよ/次世代の人物育てたい

 安倍首相が自民党総裁選で連続3選を果たし、引き続き政権を担うことになった。惰性を排し、緊張感を持って内外の諸課題に取り組み、結果を出さなければならない。
 首相は記者会見で「新しい国造りに挑んでいく。選挙で約束したことを実行に移す」と述べた。
 首相は投票総数の7割近くを獲得した。この5年9か月で政治は安定し、経済は回復基調にある。外交・安全保障政策でも相応の実績を上げたことが評価された。
 国会議員票は8割を得て圧勝したが、党員票は6割に届かなかった。「安倍1強」への不満があることを十分に認識し、首相は党内融和に努めることが大切だ。

・日経新聞「将来世代への責任果たす3年に」/社会保障の改革を急げ/政策の優先順位考えよ

 自民党の安倍晋三総裁が20日の総裁選挙で対立候補の石破茂氏を破り3選を果たした。任期は2021年9月までの3年間。6年前に経済再生を訴えて総裁になり首相に就いた安倍氏は、残り3年間でその仕上げと同時に、社会保障・財政健全化など将来世代にも責任をもつ政治を進めてほしい。
 安倍首相は総裁選後の記者会見で、有効求人倍率など数字を並べて、経済政策の実績を自賛した。
 首相が主張するように安倍政権下で雇用や企業収益は改善し、景気拡大も緩やかながら戦後最長をうかがうところまできている。ただ、石破氏が言うように景気回復の実感を得られない地方や中小企業があるのも事実だろう。

・産経新聞(「主張」)「安倍総裁の3選 憲法改正の先頭に立て 謙虚な政権運営を心がけよ」/日米同盟の活用を図れ/デフレから完全脱却を

 安倍晋三首相が、自民党総裁選で石破茂元幹事長を破り、連続3選を果たした。
 任期は3年間で、戦前戦後を通じ、首相として歴代最長の在任が視野に入る。3年などあっという間だ。国民のために必要な政策を展開し、「安倍政治」の総仕上げを図っていかねばならない。
 安倍首相は当選後、「いよいよ憲法改正に取り組む。国民のために一致協力して新しい国を造ろう」と、党所属国会議員らに呼びかけた。
 憲法改正を実現し、日本の未来を切り拓(ひら)くことは、首相と自民党に課せられた重い責務である。総裁選で首相が約束した通り、憲法に自衛隊を明記する党の憲法改正案を秋の臨時国会に提出してほしい。安全保障環境が激変する中、国民投票で「自衛隊」が憲法に書き込まれる意義は大きい。
 自民党は憲法改正の国民運動も始めるべきだ。党総裁として首相は先頭に立ってほしい。

・東京新聞(中日新聞)「安倍政権に注文する 自民総裁に連続3選 国民の声を畏れよ」/真摯な反省感じられず/同じ轍踏ませてならぬ

 安倍晋三首相を見る国民の目の厳しさを、党員票が代弁していた。これから最長三年間、政権を担う安倍氏に注文したい。「国民の声を畏れよ」と。
 石破茂元幹事長が予想以上に善戦したのではないか。安倍、石破両氏の一騎打ちだった自民党総裁選。現職総裁の安倍氏が連続三選を果たしたものの、報道機関の電話調査などで三分の二程度は得るとみられていた党員票(党員・党友の票)は55%にとどまった。
 安倍陣営は、石破氏が六年前に得た党員票が55%だったため、当初の目標通りと平静を装うが、その心中は穏やかではあるまい。

f:id:news-worker:20180922222735j:plain

 以下は21日付朝刊紙面の主な記事の見出しです。各紙とも東京本社発行の最終版紙面です。
▼朝日新聞
1面トップ「安倍首相 自民総裁3選/石破善戦 地方票の45%」
1面「麻生・菅・二階氏続投へ/『圧勝』できず政権運営に影/来月1日改造」
1面「『1強』のおごりの芽をつめ」栗原健太郎・政治部長
2面・時時刻刻「首相 崩れた『圧勝』/目標下回る地方票『反乱だ』」「石破氏254票次へ存在感」「憲法改正 さらに視界不良」
3面「『選挙、戦いやすい』野党攻勢へ/連携強化が焦点」/安倍首相の記者会見(要旨)
15面(オピニオン)かくも長き安倍時代/「強い官邸 戦力を総合判断」竹中治堅・政策研究大学院大学教授/「国民信じ『不都合』監視を」丹羽宇一郎・元中国大使、元伊藤忠商事会長/「不可解な“禅譲”非民主的」小島毅
社会面トップ「党員の声 政界とズレ/政治姿勢に不満■地方軽視感じる」
社会面「話法・透明性…安倍氏に注文」/「『永田町を叱った』石破氏地元」

▼毎日新聞
1面トップ「安倍首相 総裁3選/石破氏善戦 党員票45%/議員票も20上積み」
1面「次の国会に改憲案」
1面「1強への不満直視を」佐藤千矢子・政治部長
2面「改憲前進 思惑外れ/与党内も冷ややか」「看板政策 険しい道」
3面・クローズアップ2018「圧勝逃す 首相誤算/選挙の顔に不安 再燃」「人事 融和か論功か」
11面「政策論争なく活力低下」自民党総裁選 識者座談会/中西寛・京都大教授/片山善博・早稲田大教授/谷口尚子・慶応大教授
社会面トップ「地方の批判 耳傾けて/現状に危機意識持って/臭い物にふたしている」

▼読売新聞
1面トップ「安倍首相 連続3選/得票69% 石破氏破る/憲法改正、改めて意欲」
1面「麻生・菅・二階氏留任へ/内閣改造・党人事 来月初旬に」
1面「敵は惰性、おごり、飽き」伊藤俊行・政治部長
2面「国内外 数々の難問/消費税 来年引き上げ」/「改憲案 臨時国会提示へ」/「広島 安倍氏が圧勝/党員投票 島根は石破氏」
3面・スキャナー「首相、課題残す『圧勝』/党員票55% 地方取りこぼしも」「石破氏健闘『次』狙う/党内基盤 もろさ露呈」
11面・安倍首相へ注文(論点スペシャル)「苦言受け入れる政権に」数学者、藤原正彦氏/「政策実行 長期的視野で」京大教授、待鳥聡史氏/「成長持続へデジタル化」経済同友会代表幹事、小林喜光氏/首相会見の要旨

▼日経新聞
1面トップ「首相、自民総裁3選/任期3年『改憲に挑戦』/553票獲得、石破氏は254票」
1面「麻生・菅氏は留任/内閣改造 来月1日にも」
1面「日本の針路決まる3年」丸谷浩史・政治部長
2面「石破氏 目標超す地方票/44・7%獲得 ポスト安倍に芽残す/政権批判の受け皿に」
3面「求心力維持 首相に試練/残り任期3年、内外に難題/来夏参院選が正念場」
3面「経済政策に3つの注文/社会保障 給付抑制 聖域なく/消費増税 先送りは許されず/成長戦略 雇用の流動化 急務」
社説「将来世代への責任果たす3年に」社会保障の改革を急げ/政策の優先順位考えよ

▼産経新聞
1面トップ「自民総裁 安倍首相3選/麻生・菅・二階氏 留任へ/1日改造 河野・茂木・世耕氏も/『骨格は変えない』」/「臨時国会で改憲発議『簡単でない』」
1面「残り3年 何をやるつもりなのか」石橋文登・編集局次長兼政治部長
2面・阿比留瑠比の極限御免「首相 挑戦者の本質変わらず」少しずつ地固め/「独裁者」にあらず=論説委員兼政治部編集委員
3面「安倍政治 問われる成果/拉致や領土問題 正念場/消費増税へ 参院選関門」「石破氏『ポスト安倍』望み/254票『これ以上ない力に』」

▼東京新聞
1面トップ「安倍氏3選 改憲加速/秋国会へ公明と協議/石破氏 地方票は肉薄」
1面「国民の不信 残したまま」清水孝幸・政治部長
2面・核心「改憲 先走る首相/参院選までの国民投票視野/党内慎重論『この地方票では』」「『自民は一色じゃない』石破氏/『異論抑えない党に』進次郎氏」
3面「差し迫る課題山積/日米会談・中国訪問/北方領土・沖縄知事選」「続く金融緩和・伸びない所得」
24~25面(特報面)「冷や飯?厚遇?/勝者安倍氏は 敗者石破氏側にどう接する/人事処遇に小選挙区制も影響」「オトナの器 試される/勝敗超えた抱擁・『ノーサイド』/再挑戦できる社会に」
社会面トップ「『安倍一強』弱者を見て/セクハラ 許さない姿勢をはっきりと/LGBT 制度あれば人の意識変わる/派遣労働 雇止め どう生きていけば」

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録⑤朝日は社会面に「沖縄2018」

沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月13日付朝刊から18日付朝刊までです。
沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月13日付朝刊から18日付朝刊までです。
沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月13日付朝刊から18日付朝刊までです。

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月19日付朝刊から21日付朝刊までです。

【9月19日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(38面)「『しまくとぅば』(島言葉)語り継ぐ/奪われた歴史『いまこそ自然に』」沖縄2018、写真
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経
5面「政府、米海兵隊グアム移転に583億円」※短信
▼東京(なし)

【9月20日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(38面)「同盟必要だからこそ負担減を/元自衛官 基地引き取り運動」沖縄2018、写真
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京(なし)

【9月21日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(34面)「基地がある現実 見えないのか」沖縄2018
34面「沖縄の女性殺害 二審も無期懲役 米軍族の控訴棄却」/「辺野古住民投票 県が条例案提出」」
▼毎日
第2社会面(30面)「元米海兵隊員に2審も無期懲役 沖縄女性殺害」
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京
社会面「沖縄の元米軍属二審も無期判決/女性殺害、福岡高裁支部」
▼信毎(なし)

 

 東京発行5紙の沖縄関連記事がどの程度あったか、8月30日付以降、9月21日付までを表にして比べてみました。以前の続きになります。

  朝日 毎日 読売 産経 東京
記事 35 24 20 21 37
短信 2 2 4 9 0
写真 23 8 8 4 31
顔写真 4 3 2 5 7

 「記事」は、見出し1段のいわゆる「ベタ記事」から、社会面トップのような大きな扱いの記事まで、長さや見出しの大きさにかかわらず1本とカウントしています。
 「短信」は短信記事の本数。社会面や総合面などで、一般の記事より行数、字間を詰め、活字も小さくした記事が面の隅に何本か載っていることがあります。便宜上「短信」と呼びます。「短くてもいいから読者に伝えるべき情報だ」と新聞社が判断した記事だと考えていいと思います。
 写真は通常、ある程度の記事の長さとある程度の扱いの大きさがなければ付きません。写真がどのくらい載ったかの比較は、紙面でそのテーマを大きく扱ったかどうかのメルクマールになりうるのではないかと思い、記録しています。

 ここに来て、記事本数、写真の枚数とも朝日新聞、東京新聞と毎日、読売、産経各紙との間で一線が明確になってきたように感じます。朝日新聞は連日、社会面で「沖縄2018」と銘打った記事の掲載が続いていることが要因です。20日付朝刊では、沖縄の基地を日本本土で引き取ろうという市民運動に加わった退職幹部自衛官を紹介。そういう人もいるのかと、驚きを感じる記事でした。

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録④知事選告示/安室奈美恵さん引退

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月13日付朝刊から18日付朝刊までです。
 この間、13日には沖縄県知事選が告示されました。翌14日付朝刊は、朝日、毎日、産経、東京の各紙は1面トップ、読売新聞も1面でした。関連記事も総合面のほか、朝日、読売、東京は社会面にも展開しています。
 沖縄出身の歌手、安室奈美恵さんの地元でのラストコンサートを前に各紙とも16日付朝刊の社会面で、安室さんの足跡やファンの声、沖縄の様子などを紹介する記事を載せました。その中で朝日、毎日は芸能のニュースとしての扱い方にとどまらず、安室さんの活躍によって沖縄が日本中に広く知られ、イメージもアップしていったことを基地集中の問題にも触れながら伝えているのが目を引きました。

【9月13日付朝刊】
▼朝日
第2社会面「沖縄知事選きょう告示 辺野古争点」
▼毎日
2面「沖縄知事選きょう告示」
▼読売
4面「沖縄知事選きょう告示」
▼産経
5面「普天間めぐり一騎打ちへ/佐喜真・玉城氏 沖縄知事選 きょう告示」
5面「玉城氏が収支報告書修正」※短信
▼東京
2面「両氏 辺野古移設語らず/知事選意識 注目避ける」自民党総裁選2018、図表
2面「政権と反対派 総力戦に/沖縄知事選きょう告示」
24~25面(特報面)「デマ飛び交う/新聞調査装い『ダブルスコアの情勢』/メディアや市民のかく乱意図か/沖縄知事選きょう告示」「惑わされぬ事実を/地元紙やNPOがフェイク監視/背景に基地めぐる対立」写真4枚

【9月14日付朝刊】
▼朝日
1面トップ「辺野古移設 争点/沖縄知事選告示/翁長氏の後継/政権が全面支援」写真2枚
1面・解説「民主主義のあり方 問われる」伊東聖・那覇総局長
2面・時時刻刻「『対立・分断』異なる主張/佐喜真氏 対話途絶えた国との関係/玉城氏 政権が深めた沖縄の亀裂」「辺野古交わらず/佐喜真氏 賛否明かさず論戦回避/玉城氏 阻止への具体策示せず」図表1枚
3面「沖縄の勝敗 政権運営左右/自公 幹部を続々投入/野党 新潟の反省共有」
社会面トップ「声届くのか/基地 思い複雑/『どんな選挙結果でも政府は参考にしない』/『反対しながら振興策も』『負担全国で平等に』」写真2枚、顔1枚
社会面「有権者『私の争点』」
社会面「辺野古工事巡り12月5日に判決/控訴審が結審」
社説「沖縄知事選 『辺野古』を論じよ」

▼毎日
1面トップ「経済振興vs辺野古阻止/沖縄知事選 30日投開票/4氏届け出」顔2枚
3面・クローズアップ2018「沖縄の決断 国政に影響/佐喜真陣営 争点そらし『追い上げ』/玉城陣営 『保守』『光景』演出腐心」図表
3面「補選は実施せず 沖縄3区」
社説「沖縄知事選告示 争点がかみ合う選挙戦に」

▼読売
1面・中「沖縄知事選 与野党対決/辺野古移設問う 告示 4氏の争い」
3面・スキャナー「辺野古移設 分岐点/与党、実現へ全力組織戦/野党、『翁長氏弔い』前面」「人事や参院選 各党思惑」写真2枚、図表
4面「竹下氏 沖縄張り付き/知事選全力 派内対立回避か」総裁選2018、写真、図表
4面「衆院沖縄3区補選 来年4月28日以降」
第2社会面(32面)「沖縄の未来 誰に託す/『生活しやすく』『基地移設阻止を』」写真
32面「移設差し止め 控訴審が結審」
社説「沖縄知事選告示 豊かな県へ将来像を競い合え」

▼産経
1面トップ「沖縄知事選 与野党対決/告示 辺野古争点『一騎打ち』」顔2枚、図表
1面「翁長流の継承 賛否真っ向対立」
5面「沖縄維持戦 総力戦/進次郎氏参戦『空中戦』も/参院選野党共闘 試金石に」

▼東京
1面トップ「辺野古是非 激突/佐喜真氏 政権の支援/玉城氏 翁長氏後継/沖縄知事選 舌戦スタート/30日投開票」図表
2面・核心「国政見据え総力戦/玉城陣営 翁長氏の遺志 前面に共闘/佐喜真陣営 辺野古避け 自公幹部続々」写真2枚、図表、地図
社会面トップ「基地負担 悲痛な叫び/『辺野古しかないのか』『まず普天間危険除去』/沖縄知事選 県民の声」写真
社説「沖縄県知事選 地位協定を見直さねば」

f:id:news-worker:20180924072321j:plain

【9月15日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(38面)「最西端の島 日米安保が亀裂生む」沖縄2018、写真、地図
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京(なし)

【9月16日付朝刊】
▼朝日
1面トップ「選挙戦 ネットのデマ警戒/名護市長選では『日ハム撤退』拡散/沖縄知事選 陣営が投稿監視■ファクトチェック呼びかけ」図表
社会面「安室ちゃんラスト 『本当にありがとう』」「ふるさとへの愛 私も同じ」沖縄2018、写真2枚、顔1枚
▼毎日
1面準トップ「We (※ハートマーク) NAMIE 忘れない/安室さんラスト 故郷沖縄で」写真
社会面トップ「安室ちゃん My Sunshine/沖縄励まし 女性が憧れ/平成駆け抜けた歌姫」写真2枚、図表
社会面・解説「自立体現 時代先駆け」
社会面「時代の終わり実感」アイドル評論家の中森明夫さん
▼読売
第2社会面「安室ちゃん ずっとヒーロー/沖縄 ラストライブ」写真、図表
▼産経
1面「安室さん ラストライブ きょう引退」写真2枚
第2社会面(26面)「歌姫 平成駆け抜けた/安室さん 地元でファンに感謝」図表
社説(「主張」)「沖縄県知事選 辺野古移設の意義を説け」
▼東京
3面「米軍基地問題で舌戦/沖縄知事選 告示後初の週末」写真2枚
第2社会面(28面)「終わらぬ『奈美恵』コール/安室さんラストライブ 感謝の声相次ぐ」写真2枚

【9月17日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(30面)「ハワイ超えても晴れぬ観光産業」沖縄2018、写真
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経
2面「『有言実行』問われる真価/菅長官、知事選で沖縄入り/『ポスト安倍』の声も」写真
▼東京
第2社会面「沖縄の米軍ヘリ 長崎で緊急着陸 対馬の2機に続き」

【9月18日付朝刊】
▼朝日
第2社会面「風景の一部だけど 自ら選んではない 嘉手納基地」沖縄2018、写真2枚
▼毎日
5面「竹下氏、沖縄張り付き/知事選傾注、首相に配慮?」「人事にらみ巧名争い」自民党総裁選ドキュメント、写真
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京
24~25面(特報面)「米軍基地なくしたい/民謡歌手 古謝美佐子さんの思い/9・30沖縄知事選」「これ以上の自然破壊やめよう/自分たちで土地差し出すことになる/ウチナンチュー同士が戦わされるなんて 悔しい」写真3枚
25面(同)「護岸周辺 海草の種類減少」辺野古・高江リポート、写真 ※琉球新報より転載

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録③名護市議選、市長支持と不支持が同数に

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月8日付朝刊から12日付朝刊までです。

【9月8日付朝刊】
▼朝日
第3社会面(35面)「辺野古撤回求め有識者らが声明」
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京
第2社会面(26面)「翁長氏『同じ沖縄人の決断 恨むな』/埋め立て承認撤回 最後まで『自分が』/死の直前 妻に語る」写真2枚
第2社会面「『辺野古移設 許せぬ』/学者・作家ら72人 参道呼びかけ」写真1枚

【9月9日付朝刊】
▼朝日(なし)
▼毎日
2面「希望、佐喜真氏を推薦」※短信
▼読売
4面「玉城氏事務所で激励」※短信、立憲民主党の福山幹事長
4面「希望、佐喜真氏推薦」※短信
▼産経
4面「希望の党、佐喜真氏推薦を決定」※短信
▼東京
1面「『沖縄の要塞化』辺野古反対/欧米識者ら133人 翁長氏死去後に声明」顔2枚

【9月10日付朝刊】 ※新聞休刊日のため発行なし

【9月11日付朝刊】
▼朝日
第2社会面(34面)「玉城氏『辺野古阻止』/沖縄知事選 政策を発表」
第2社会面「辺野古移設めぐり緊張続く/名護市議選 与野党同数に」
▼毎日
5面「『基地移設影響なし』/名護市議選 政府、伯仲に懸念」
▼読売
2面「名護市長派と反市長派同数」
▼産経
5面「『新基地阻止貫く』/玉城氏が政策集 沖縄知事選」
5面「名護市議選、移設反対派が過半数」※短信
▼東京
3面「辺野古 民意は拮抗/市長支持と不支持が同数/名護市議選」地図
3面「『新基地造らせない』/沖縄知事選 玉城氏が公約発表」

【9月12日付朝刊】
▼朝日
第3社会面(33面)沖縄2018「玉城氏 辺野古移設に反対/佐喜真氏 賛否明らかにせず/討論会 知事選あす告示」写真
▼毎日(なし)
▼読売
2面「沖縄知事選 あす告示」
▼産経
2面「玉城氏、佐喜真氏に先行/沖縄知事選あす告示」顔写真2枚
2面「玉城氏、寄付120万円付記載/政治資金規制法 違反か」
▼東京
特報面(24、25面)「戦う相手は、分断を後ろで見ている人/政府の賠償請求示唆 故翁長氏憤り/沖縄・辺野古基地」「県民への『恫喝訴訟』/表現の自由奪う狙い/ヘリパッド巡り事例 知事選控え影響警戒」写真3枚
特報面「埋め立て中止 撤収作業進む」辺野古・高江リポート※琉球新報記事を転載

 

  沖縄県知事選挙は9月13日告示、9月30日投開票です。告示を前に、東京発行5紙の沖縄関連記事がどの程度あったかを表にして比べてみました。期間は8月30日付から9月12日付までです。
 「記事」は、見出し1段のいわゆる「ベタ記事」から、社会面トップのような大きな扱いの記事まで、長さや見出しの大きさにかかわらず1本とカウントしています。
 「短信」は短信記事の本数。社会面や総合面などで、一般の記事より行数、字間を詰め、活字も小さくした記事が面の隅に何本か載っていることがあります。便宜上「短信」と呼びます。「短くてもいいから読者に伝えるべき情報だ」と新聞社が判断した記事だと考えていいと思います。
 写真は通常、ある程度の記事の長さとある程度の扱いの大きさがなければ付きません。写真がどのくらい載ったかの比較は、紙面でそのテーマを大きく扱ったかどうかのメルクマールになりうるのではないかと思います。
 記事本数、写真の枚数とも群を抜いて多いのは東京新聞です。一方で少し意外な気がしたのは、読売新聞、産経新聞が、記事の本数では決して少なくないことです。短信が多いとはいえ、一般記事との合計では、朝日新聞、毎日新聞とおおむね互角です。朝日、毎日、東京と読売、産経の間では論調の2極化が目立つことが少なくないのですが、沖縄県知事選を巡っては今のところ、関連記事が紙面に載る頻度に目立った差はないように思えます。

  朝日 毎日 読売 産経 東京
記事 18 14 12 14 25
短信 2 2 4 7 0
写真 11 4 3 1 16
顔写真 2 1 2 3 7

軽視できない安倍政権の死者数誤集計~北海道地震 発生初日からミス、報道の食い違いにも訂正できず

 北海道胆振地方で9月6日、最大震度7を観測する大きな地震がありました。被災地の皆さまにお見舞い申し上げますとともに、犠牲になった方々に哀悼の意を表します。行方が分からない方々の無事とけがをされた方々の回復、被災地に一日も早く日常が戻ることを願っています。

 この地震災害をめぐって、菅義偉・官房長官が7日午後の記者会見で、同日午前中に発表した死者数16人を、「死者9人、心肺停止7人」の誤りだったと訂正しました。報道によると、菅氏は「『事務的に集計する段階で死者と心肺停止者の両者をまとめて死者として計上した』と説明し、陳謝した」(8日付毎日新聞朝刊)とのことです。読売新聞が紙面に掲載しているドキュメントによると、「死者16人」は7日午前9時37分に安倍晋三首相が関係閣僚会議で明らかにしていました。
 この問題では、安倍晋三政権の「人命」への姿勢に気にかかる点があります。また東京発行の新聞各紙の報道にも顕著な「二極化」の傾向がみられます。備忘を兼ねて書きとめることにします。

 ■「死亡」と「心肺停止」の差異
 まず安倍政権の「人命」への姿勢についてです。「死亡」と「心肺停止」には明確な差異があります。人間の死を判定できるのは、日本の法律上では死亡診断書を作成する医師と歯科医師だけです。公的に死者として扱われるのは、医師が死亡を判定した後です。一方の心肺停止とは、文字通り心臓と呼吸が停止した状態です。救命措置で蘇生する場合もありますし、仮に心肺停止に陥ってから長時間が経過し蘇生は絶望と思われる状態でも、医師が死亡判定するまでは「心肺停止」です。
 報道の実務では、災害や遭難などで行方不明者、安否不明者が捜索で見つかった場合、仮に蘇生はありえないと思われるケースでも、死亡と心肺停止は厳密に区分けして報じます。どちらか判然としない場合は単に「行方不明者のうち○人が見つかった」としか書かない場合もあれば、「呼びかけに反応はないという」などと分かっている状況をできるだけ具体的に伝える場合もあります。
 人の「死」、しかも不慮の死は家族や知人にはショックが大きく、事実として受け入れるのはとてもつらく、苦しいことです。だから報道は、犠牲者一人一人にそれぞれの人生があり、家族とともに歩んだ時間があることに思いをはせ、その人生の終焉に厳粛に向き合わなければなりません。どんなに混乱を極める災害や事件事故でも、人の死を数字の羅列としてしか見ないということはあってはならないと、わたし自身、教え込まれてきました。だから、死亡と心肺停止を合算してしまうというミスに、驚きを禁じ得ません。

 ■ミスは前日から
 菅官房長官はミスが事務的な集計の段階で起きたと説明したようです。それはその通りかもしれませんが、もう一つ気になるのは、ミスはこの7日だけではなく、地震発生当初からだったのではないか、ということです。
 7日付の手元の朝日、毎日、読売3紙の朝刊を見ると、6日夜の時点での人的被害の集計では、死者数は「9人」(朝日、読売)と、「5人」(毎日)の二つの数字が出ています。「死者9人」は安倍首相が6日午後6時の関係閣僚会議で明らかにした数字でした。「死者5人」は同じ段階で警察庁が集計していた人数で、ほかに「心肺停止4人」もありました。毎日新聞は見出しにこの二つを併記して「5人死亡 4人心肺停止」としていました。わたしは菅官房長官が7日に訂正したことを知って、安倍首相が前日明らかにした「9人」も、同じように死者と心肺停止者を合計した人数ではないのかと疑いを持ちました。
 仮にそうだとすれば、7日早朝の段階で、二つの異なった死者の人数が報道されていたわけで、政府内部の指摘を待つまでもなく、集計の誤りに気付くことが可能だったはずです。しかし前述のとおり、安倍首相は7日午前9時37分の関係閣僚会議で、死者と心肺停止者を合計した「17人」を死者数として公表し(読売新聞)、菅官房長官も午前の定例会見で発表しました。誤りを訂正したのは7日夕方で、まる一昼夜、誤った集計を公表し続けていたことになります。
 ここでは「仮に」と留保を付けましたが、毎日新聞は9日付朝刊で、「関係者によると」として、「6日に発表した死者数にも心肺停止者数が含まれていた。基になる資料で『死者など』とされていたのに、官邸への報告までに『など』が抜け落ち、心肺停止者を死者にカウントした可能性があるという」と報じています。死者と心肺停止者を合計して「死者」の人数を発表するミスはまる一昼夜続き、この間、ミスに気付く機会はあったのに首相も官房長官も気付かなかったのが実態だったと思います。

 ■事務方だけの責任か
 安倍政権のもとで起こった最近の数々の不祥事では、責任は官僚が負い、閣僚ら政治家の責任は極めて軽く扱われるのが常のように思えます。今回の集計の誤りも、事務方の責任で終わるのかもしれません。しかし、「死亡」と「心肺停止」を区別することの意味が政権内に貫かれていれば、このようなミスが起きたでしょうか。あるいは、人間のやることにミスは免れ得ないとしても、もっと早くに気付くことはできたのではないでしょうか。
 報道によると、安倍晋三首相は6日の地震発生当日、「政府としては人命第一で、政府一丸となって、災害応急対応に当たっていく」と記者団の前で話していました。生存者の救出が最優先であることに異存はありませんが、「人命」の尊重とは生存者のことだけを考えていればいいということではないでしょう。無神経に心肺停止者を死者と一緒に集計するのも、ある意味、人命の尊重からかけ離れた行為であると思います。
 前述のように、遅くとも7日早朝には、報道によって死者の数が異なることから、集計のミスに気付く可能性は客観的にもありました。にもかかわらず、間違いを重ねた集計を安倍首相自身が公表していました。そこに政権、政治家は自省を込めるべきだと思います。

 ■ここでも在京紙の二極化
 このミスを巡る報道には顕著な「二極化」の傾向が見られました。
 菅官房長官が7日の記者会見で集計の誤りを認め陳謝したことを、東京発行の新聞5紙(朝日、毎日、読売、産経、東京)が8日付朝刊でどう報じたかをチェックしてみました。朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の3紙はそれぞれ1面に、さほど長くはありませんが独立した記事を掲載しています。見出しは以下の通りです。
 ・朝日「死者の人数 政府が訂正」
 ・毎日「首相ら発表の死者数を訂正」
 ・東京「政府、心肺停止時点で『死者に』/菅氏 発表訂正し陳謝」

 一方、産経新聞には関連記事が見当たりませんでした。他紙は前日の夕刊で、政府の発表に基づき、死者と心肺停止者を合わせた人数を死者数として掲載していたことから、事実関係を訂正する続報としても、記事には意味がありました。産経新聞は東京本社では夕刊を発行しておらず、紙面上の訂正の必要はないという事情の違いはあると思います。
 少なからず驚いたのは読売新聞です。見出しがついた一般の記事形式ではなく、「ドキュメント」という時刻と動きを羅列した記録スタイルの記事の中に、4行にわたって「16・21 菅官房長官が記者会見で死者数を訂正。死者と心肺停止を『まとめて計上してしまい申し訳ない』と陳謝」と記述しました。第2社会面の掲載です。よほど隅々まで紙面に目を通さなければ気付かないかもしれません。
 朝日、毎日、東京の3紙が1面で見出しを立てて報じたのに対し、関連記事の掲載がないか、あっても小さな扱いの読売、産経両紙という紙面状況は、特に安倍政権の政策を巡って数年来、顕著になっている論調の二極化に通じるように思います。

■マスメディアの検証

 前述のとおり、毎日新聞は9日付朝刊の1面に、この問題の続報を掲載しています。リードと末尾の部分を引用します。
 ※毎日新聞「『犠牲者』政府先行発表で混乱/官邸主導をアピール?」

 今回の地震では、安倍晋三首相や菅義偉官房長官が犠牲者数をいち早く発表している。国の発表は警察や自治体より遅れることが多く、政府の先行発表は異例だ。政府関係者は「官邸主導をアピールする狙いがある」と話すが、首相が発言した情報が不正確で官房長官が謝罪する事態も招いている。
 (中略)
 関係者によると、6日に発表した死者数にも心肺停止者数が含まれていた。基になる資料で「死者など」とされていたのに、官邸への報告までに「など」が抜け落ち、心肺停止者を死者にカウントした可能性があるという。政府関係者は「今回は自民党総裁選もにらみ、危機管理態勢の充実ぶりをアピールする狙いもあったかもしれない」と指摘する。

 ネットでも読めるようです。
 https://mainichi.jp/articles/20180909/ddm/001/040/160000c

 このようなミスがなぜ起きたか、早くに気付く機会があったのに訂正までなぜ一昼夜かかったか、「人命第一」のアピールに「自民党総裁選」という「私心」が入り込んでいなかったか―。これらは時の政治権力に対するマスメディアの検証に値するテーマであり、毎日新聞に他メディアも続いてほしいと思います。

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録②~県民投票求め署名9万提出

 沖縄県知事選や辺野古新基地建設問題、沖縄の基地集中を巡る東京発行新聞各紙の報道の記録の続きです。9月4日付朝刊から7日付朝刊までです。

【9月4日付朝刊】
▼朝日
4面「沖縄知事選に総力/与党 党幹部ら続々と/野党 オール沖縄前面」図表
第2社会面(30面)沖縄2018「佐喜真氏の政策 辺野古に触れず/知事選へ『注視したい』」

▼毎日(なし)

▼読売
4面「辺野古承認撤回『残念』」※短信・官房長官会見
4面「二階氏沖縄入り」※短信

▼産経
5面ルポ「『生活第一』の住民と距離/辺野古承認撤回 気勢上げる反対派/県庁に押しかけ、職員は過激行動警戒」写真、地図
5面「二階氏 沖縄シフト/知事選 勝って幹事長続投に道筋」
5面「辺野古賛否示さず 佐喜真氏が政策集」

▼東京
3面「辺野古是非 明記せず/沖縄知事選 佐喜真氏が公約発表」写真
3面「辺野古サンゴ採捕不許可に/沖縄県、承認撤回で」
23面(特報面)「長径2メートル超すサンゴの群体」辺野古・高江リポート(琉球新報転載)写真

【9月5日付朝刊】
▼朝日
第3社会面(25面)「最後の会見前 翁長氏『体調ぼろぼろ…』/がん末期の日々 妻が語る」写真
▼毎日(なし)
▼読売
4面「自民 沖縄知事選に注力/菅・二階氏ら現地入り/新総裁の初陣」総裁選2018、写真
4面「沖縄 二つの風景」政(まつりごと)なび
▼産経
5面「沖縄知事選 二階氏が佐喜真氏激励」※短信
▼東京(なし)

【9月6日付朝刊】※台風21号で関西空港浸水
▼朝日 ※県民投票は5日夕刊にも掲載
第3社会面(33面)「辺野古 県民投票審議へ/署名9万筆提出 県に条例案請求」
第3社会面「事前連絡なく米軍ヘリ着陸 沖縄・久米島空港」

▼毎日
10面・記者の目「『魂の飢餓感』に答えを/故翁長沖縄県知事 本土への問い」西部報道部・佐藤敬一記者、写真、顔写真
第3社会面(27面)「辺野古 県民投票を請求/市民団体 署名9万人 県に提出」
第3社会面「米軍普天間ヘリ 沖縄で緊急着陸 久米島」

▼読売 ※県民投票は5日夕刊に掲載
第3社会面(33面)「沖縄・久米島空港に米軍ヘリ緊急着陸」

▼産経
5面「辺野古移設問う県民投票条例 請求」
第3社会面(24面)「普天間の米軍ヘリ、久米島に緊急着陸」※短信

▼東京 ※県民投票は5日夕刊に掲載
3面「佐喜真氏と玉城氏 初の公開討論会 沖縄知事選」
3面「沖縄・久米島空港 米軍ヘリ緊急着陸」
第3社会面(29面)「沖縄で米軍ヘリ緊急着陸」※短信

【9月7日付朝刊】※北海道で震度7
▼朝日(なし)
▼毎日(なし)
▼読売(なし)
▼産経(なし)
▼東京
4面:日々論々「視点 沖縄から/翁長氏の魂 継承すべき」比屋根照夫氏(琉球大名誉教授)顔

沖縄知事選と辺野古の在京紙報道の記録①~玉城氏が出馬表明/埋め立て承認撤回

 沖縄県知事だった翁長雄志氏の死去に伴う知事選が9月30日に実施されます。翁長氏が後継者として名前を挙げていたとされる自由党の衆院議員玉城デニー氏と、安倍晋三政権の与党の自民、公明両党が推す前宜野湾市長、佐喜真淳氏の事実上の一騎打ちになると伝えられています。
 翁長氏は宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設問題を巡り、県内の名護市辺野古への新基地建設を阻止するとの公約を貫き、辺野古の埋め立て承認を撤回することを7月末に表明した後、亡くなりました。県は8月31日に正式に承認を撤回しました。
 こうした状況下で行われる知事選では、普通に考えれば辺野古への新基地建設の是非が最大の争点です。沖縄の基地集中の問題は沖縄という1地域に固有の問題ではなく、日本全体の問題です。この沖縄県知事選挙がどのように戦われ、どのような結果になるのか、前後して日本政府・安倍晋三政権が辺野古新基地の工事を巡ってどんな動きをするのか、あるいはしないのか、といったことが沖縄県外、日本本土で広く知られることには大きな意味があります。そこに日本本土のマスメディアの役割もあります。
 沖縄の基地集中の問題では、しばらく前から本土マスメディアの報道は日本政府支持と日本政府に批判的な論調とに二極化してきました。そこで今回の沖縄知事選や辺野古の新基地建設工事についても、東京発行の新聞各紙がどんな形でどれだけ報じたかを記録してみようと思います。沖縄の基地集中に関わる記事であれば、対象にします。見出しからでも各紙の論調の違いは感じ取れるのではないかと思います。
 なお、産経新聞は東京本社では夕刊を発行していないので、各紙の記録も朝刊だけを対象にします。また経済紙の日経新聞は調査に含めません。知事選に玉城デニー氏が出馬を表明したニュースが載った8月30日付朝刊から始めます。社説や短信も含めて関連する記事の主な見出しと扱い、写真や図表の有無もあわせて何日分かをまとめて随時、書きとめていくことにします。

 

【8月30日付朝刊】沖縄県知事選に玉城デニー氏が出馬表明(8月29日)
▼朝日新聞
1面「玉城氏が出馬表明/佐喜真氏と対決へ」顔写真2枚
4面「枝野氏、辺野古に反対」※短信
社会面トップ・沖縄2018「辺野古 交わらない世代/『どうせ基地できる』保育無料化歓迎/移設反対『若者に届きにくい』危機感」写真2枚、地図1枚

▼毎日新聞
1面「沖縄県あすにも撤回/辺野古埋め立て承認 政府対抗へ」
3面・クローズアップ「『オール沖縄』再現遠く/保守一部離れ『弔い』頼み」「翁長氏批判 自公避け」図表1枚
5面「移設反対仲西氏出馬を正式表明 宜野湾市長選」

▼読売新聞                                  
1面「玉城氏が出馬表明/沖縄知事選 佐喜真氏と対決へ」顔写真2枚
3面・スキャナー「沖縄 与野党駆け引き/『辺野古』争点化 与党は警戒/佐喜真氏」「弱い強調 野党共闘『試金石』/玉城氏」図表1枚

▼産経新聞
2面「埋め立て承認 近く撤回/沖縄県『準備が整い次第』」
2面「玉城氏が出馬表明 沖縄知事選」顔写真1枚
5面「承認撤回で求心力維持/オール沖縄 市民団体要求のむ」
5面「枝野氏、辺野古移設反対を表明」※短信

▼東京新聞
1面「『辺野古阻止を貫徹』/沖縄知事選 玉城氏が出馬会見」顔写真
2面・核心「オール沖縄vs政権/玉城氏 辺野古 前面に/佐喜真氏 公明推薦 力に」顔写真2枚、図表1枚
2面「PTA連前会長の仲西氏が出馬表明 宜野湾市長選」

 

【8月31日付朝刊】
▼朝日
4面「沖縄知事選 立候補予定の2人、どんなひと?」「玉城デニー氏 故・翁長氏の後継 DJで人気に」「佐喜真淳氏 政権とパイプ 落選ゼロの前市長」写真2枚
4面「共産・志井氏、立憲の辺野古移設反対表明を『歓迎』」※短信
▼毎日
2面「辺野古埋め立て承認/沖縄県 きょう撤回へ」
2面「沖縄住民の安全懸念/国連委、日本政府に勧告」※ジュネーブ共同電
社説「沖縄知事選の構図固まる 『辺野古』の膠着に道筋を」
▼読売
2面「辺野古承認きょう撤回 沖縄県」
▼産経
5面「辺野古埋め立て きょう承認撤回 沖縄県」
5面「維新、沖縄知事選であす佐喜真氏推薦」※短信
▼東京
3面「辺野古承認 きょう撤回/沖縄県 故翁長氏表名を重視」
3面「『承認撤回 拍手送る』都内で集会」写真
社説「沖縄県知事選 辺野古の是非を語れ」

 

【9月1日付朝刊】沖縄県が辺野古埋め立て承認を撤回(8月31日)
▼朝日
1面準トップ「辺野古埋め立て承認撤回/沖縄県 国、法的対抗措置の方針」
2面・時時刻刻「辺野古 知事選控え神経戦」「オール沖縄勢力 移設反対の機運に弾み/「政権 悪影響懸念 工事再開に慎重」「民意示す手段 市民模索/県民投票や条例 現状変える一歩」写真、図表
社説「辺野古工事 全ての自治体の問題だ」
※1面トップは「中高生ネット依存7人に1人」

▼毎日
1面トップ「県 辺野古承認を撤回/埋め立て 翁長氏方針通り/政府 法的措置へ」写真、地図
3面・クローズアップ「知事選にらみ日程攻防/オール沖縄歓迎」「工事延期 政府、渡りに船」図表
社会面「県、翁長氏の遺志継ぐ/『国に勝てぬ』冷めた声も」写真

▼読売
1面中「辺野古承認 県が撤回/工事中断 国、法的措置で対抗へ」地図
2面「辺野古撤回 知事選を意識/政府、移設問題過熱を懸念」写真、図表
※1面トップは「日銀総裁『利上げ長期間しない』」

▼産経
1面準トップ「沖縄県、辺野古承認を撤回/政府は法的措置で対抗」図表、地図
2面「辺野古撤回 隠せぬ政治性/沖縄知事選 県側、玉城氏に期待」
社説(「主張」)「辺野古埋め立て 知事選目当ての『撤回』だ」
※1面トップは「概算要求 102兆円台後半」

▼東京
1面トップ「沖縄県が承認撤回/辺野古埋め立て中断/知事選控え国と対決/防衛省は法的対抗措置へ」写真1枚、図表2枚
3面「知事選争点 新基地際立つ/玉城氏『強く尊重』」
社会面トップ「沖縄だけの問題じゃない/沖縄 翁長氏の遺志継ぐ」(琉球新報)「首都圏・市民団体 『移設強行は自治破壊』」写真1枚

 

【9月2日付朝刊】
▼朝日
3面「翁長知事の言葉のゆくえ」日曜に想う、福島申二編集委員
4面「佐喜真氏の推薦 維新の会が決定 沖縄知事選」
▼毎日
2面「佐喜真氏支援へ 菅氏が沖縄訪問」
2面「維新、佐喜真氏推薦を決定」※短信
▼読売
4面「沖縄の方向性決める選挙/菅氏、現地で知事選テコ入れ」
4面「佐喜真氏の推薦決定 日本維新の会」
社説「辺野古承認撤回 対立をあおる手法は疑問だ」
▼産経
4面「沖縄知事選、維新が佐喜真氏推薦決定」※短信
▼東京
2面「維新、佐喜真氏推薦 沖縄知事選」
特報面(26~27面)「戦争を肌で知る/沖縄・チビチリガマの悲劇 展示で再現」写真3枚、顔写真1枚

 

【9月3日付朝刊】
▼朝日
1面トップ「沖縄を見る目 アムロが変えた」写真1枚:企画「平成とは」第3部 うつろう空気① ※2面続き「高まる存在感 本土と摩擦/『恵まれた地域』―変わる印象 絶えぬ差別」写真3枚、図表1枚
第2社会面「名護市議選が告示」※短信
▼毎日
2面「辺野古移設『反対』42%/『賛成』33% 意見割れ 本社世論調査」写真
▼読売
 (なし)
▼産経
2面「名護市議選など告示/9日投開票 沖縄知事選の前哨戦」
▼東京
2面「辺野古是非32人激戦/名護市議選告示 知事選を左右」