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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「ジャーナリズムを担うのは誰か」〜Journalism6月号に寄稿しました


 10日発売された朝日新聞社ジャーナリスト学校発行の月刊誌「Journalism」6月号の「メディア・リポート」の「新聞」に、記者会見の開放問題についての小文「ジャーナリズムを担うのは誰か 新たな段階の記者会見開放」を寄稿しました。ネットで読むことができます。
 メディア・リポート【新聞】「ジャーナリズムを担うのは誰か 新たな段階の記者会見開放」
 http://www.asahi.com/digital/mediareport/TKY201006100219.html
※6月号全体の目次は次の通りで、特集は電子新聞です。スイッチオン・プロジェクトでご一緒している坪田知己さんも寄稿しています。
 asahi.com「Journalism6月号」
 http://www.asahi.com/shimbun/jschool/report/new.html

 同誌にはことし1月にも、やはり記者会見の開放問題をテーマに寄稿しました。
 ※参考過去エントリー
 「『労を惜しんではいけない記者会見の開放』〜Journalism1月号に寄稿」2010年1月13日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20100113/1263317833

 6月号では編集部と相談し、記者会見の開放をめぐる1月以降の動きを振り返るとともに、浮かびつつある新たな課題をわたしなりにまとめてみることに決めました。原稿を提稿したのは5月の連休明け。編集部と加筆修正のやり取りの上、完成させたのは5月の中旬でしたが、当時は鳩山由紀夫首相があのような経緯で退陣するとは想像もしておらず、今読んでみると我ながら「間抜けだなあ」という感じがします。
 ただ、内閣が交代し、菅首相が鳩山氏ほど記者会見のオープン化問題に見識も意欲もないとしても、鳩山内閣の元で進んだオープン化が逆戻りすることはないと思います。タイトルにも取った「ジャーナリズムを担うのは誰か」という命題も、官公庁の記者会見の場に限らず、ジャーナリズムの様々な現場で今後顕在化してくるはずです。新聞の廃刊が相次ぐ米国では、元新聞記者らでつくる非営利の取材集団「プロパブリカ」の記者が手掛けた調査報道がピュリツァー賞を受賞し、話題になりました。日本で米国のような新聞記者の大量失業が起こるかどうかはともかく、新聞社のリストラ合理化が避けられないならば、同じように元記者らによる非営利のジャーナリズム活動が登場してくることも予想されます。
 あるいは、だれもが情報発信できる社会になって、ニュースの現場に身を置くいわば「一次当事者」が自ら一次情報を発信するケースも増えるはずです。既存のマスメディアはそうしたノンプロの書き手とどう連携していくのかも、今後は課題になると思います。対立ではなく連携に進めば、社会に流通する情報はその分、豊かになるからです。
 今後、ジャーナリズムの担い手は必然的に多様化せざるをえません。しばしばこのブログでも報告している「スイッチオン・プロジェクト」も、そうした観点からわたしは意味を見出しています。もしかしたら今は想像もつかない形の、しかし必ずやってくる新しい豊かなジャーナリズムの一翼に、わたしも連なっていきたいと考えています。

 ※参考過去エントリー
 「新聞記者は『血の粛清』後、プロとして残れるのか〜読書『フリー<無料>からお金を生みだす新戦略』」2010年2月13日
  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20100213/1266039828