米朝首脳会談「中止」から「なお有望」に~改めて「朝鮮戦争終結」の意義を思う  ※追記・文在寅氏が仲介

 やはり予測不能の大統領と瀬戸際外交の独裁者では、こういうことも起こるのでしょうか。米トランプ政権は5月24日(日本時間)、6月12日にシンガポールで予定していた米朝首脳会談の中止を公表しました。米国が公表したトランプ大統領から金正恩・朝鮮労働党委員長への書簡では、北朝鮮側が直近の声明で「敵対心や怒り」を示したため、いま会談を行うのは適切でないとしています。「米国の核戦力は非常に強力だ」とけん制する一方で「いつの日か会えることが楽しみだ」としました。報道によると、米トランプ政権内にも米朝会談準備のため金委員長と2度会談したポンペオ国務長官と、北朝鮮への先制攻撃は当然と主張してきた強硬派のボルトン大統領補佐官の対立があり、会談中止は「ポンペオ氏の対話路線が気にくわないボルトン氏が巻き返した結果」などの米当局者の解説も報じられています。
 このニュースの一報に触れた際に危惧したのは、朝鮮半島の緊張が軍事的な面でも高まることでしたが、会談中止に対する北朝鮮側の反応は予想以上に抑制的だと感じました。北朝鮮の金桂冠第1外務次官が25日に発表した声明は「思いがけないことで、極めて遺憾」として、米朝の敵対関係を改善するため「首脳会談が切実に必要だ」と再考を促したと報じられています。トランプ大統領は、声明を「生産的」と評価。このブログ記事を書いている5月26日午後の段階では、共同通信は「米朝会談、6月12日なお有望」と伝えています。

※47news=共同通信「米朝会談、6月12日なお有望 トランプ大統領表明」2018年5月26日
 https://this.kiji.is/372905936785884257?c=39546741839462401

 【ワシントン共同】トランプ米大統領は25日、金正恩朝鮮労働党委員長に中止を通告した米朝首脳会談について、北朝鮮と「生産的な協議」を続けているとして「もし実現すれば(当初の予定と)同じ6月12日にシンガポールで開くことになりそうだ」とツイッターで表明した。1日で終わらない可能性もあるとしている。米メディアは途絶えていた米朝間の連絡チャンネルが再開されたと報道。会談再設定へ歩み寄りがあった可能性がある。
 米メディアによると、サンダース大統領報道官は25日「首脳会談を6月12日に開くなら、われわれは準備できる」と記者団に語った。

  もともと米朝首脳会談は北朝鮮側が、休戦状態の朝鮮戦争を終結させて体制の保証を得るために熱望し、歴史的な業績を手にしたいトランプ大統領も大いに乗り気だったと伝えられています。大きな流れとして眺めれば、今回の中止通告も米朝間のみならず様々なレベルで駆け引きが繰り広げられている状況の途中経過なのかもしれません。米政権内にボルトン補佐官がいるように、韓国にも他の国にも、北朝鮮と米国の対話を望まない強硬派はいるのでしょう。しかし、朝鮮半島の非核化もさることながら、戦争状態の終結は何としても実現してほしいとわたしは思います。
 日本はかつて1945年の敗戦まで、1910年の日韓併合から35年間にわたって朝鮮半島を植民地として統治しました。以前にこのブログで書いたことですが、わたしにとって朝鮮半島の苦難の現代史は、そこでかつて日本が何をしたのかを知るほどに、日本人の1人として、「負い目」ともいうべき特別の思いを抱かずにはいられない対象です。「あれは昔の人たちの話。自分たちの世代に責任はない」とは思いません。

news-worker.hatenablog.com

 東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)は25日付朝刊で、米国が会談中止を発表したことをいずれも1面トップで報じました。

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 翌26日付朝刊でも各紙とも続報を大きく扱っています。東京新聞は2面でした。なお、25日には安倍晋三政権が今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革」関連法案が衆院厚生労働委員会で、自民、公明両党と、日本維新の会の賛成多数で可決されました。一部の労働者を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の削除を求める立憲民主党や共産党などの反対を押し切って採決が強行されました。朝日新聞、毎日新聞は1面で「採決強行」を見出しに取っています。ほかに1面に置いたのは読売新聞。日経新聞は4面、産経新聞は2面、東京新聞は3面でした。

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 米朝首脳会談中止の通告を在京各紙は社説でも取り上げました。朝日新聞は25日付、ほかの5紙は26日付です。それぞれの見出しを小見出しも含めて書きとめておきます。総じて過度に危機をあおる過激な論調はなく、各紙ともおおむね冷静さは保っていると感じますが、それでも各紙ごとのニュアンスの違いのようなものがうかがえるのではないかと思います。

・朝日新聞:25日付「米朝会談中止 対話の扉を閉ざすな」
・毎日新聞:26日付「米朝首脳会談の中止発表 回り道でも仕切り直しを」折衝の成果を生かせ/非核化の意思を明確に
・読売新聞:26日付「米朝首脳会談 非核化へ『北』の決意が見えぬ 開催巡り熾烈さ増す主導権争い」無用な挑発が目に余る/中韓含め圧力の維持を/危ういトランプ外交」
・日経新聞:26日付「北の核放棄へ国際社会は引き続き結束を」
・産経新聞:26日付「米朝の中止を通告 偽りの非核化は通じない 日米は対北圧力強化へ結束を」実験場の爆破は隠蔽だ/習近平氏の責任も重い
・東京新聞:26日付「米朝会談中止 対話の努力を続けよ」

 

【追記】2018年5月27日1時15分

 記事をアップした直後に、韓国の文在寅大統領が金正恩委員長と板門店で2度目の南北首脳会談を行ったとのニュースが入ってきました。何としても朝鮮半島の戦争状態を終わらせる、2度と朝鮮半島で戦火は起こさせないとの文大統領の思いの強さを感じます。

※47news=共同通信「南北首脳、板門店で2度目の会談 文氏、米朝仲介乗り出す」2018年5月26日 

https://this.kiji.is/373065232429646945?c=39546741839462401

【ソウル共同】韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は26日、軍事境界線がある板門店の北朝鮮側施設「統一閣」で、4月27日に続き2度目の会談を行った。会談は極秘裏に進められ、26日夜に韓国大統領府が発表。トランプ米大統領が6月12日に予定していた史上初の米朝首脳会談の中止を通告したことなどを巡り、同会談の成功を望む文氏が仲介に乗り出したもようだ。会談結果は文氏が27日午前10時(日本時間同)に発表する。