変わるもの、変えてはいけないもの~東京発行新聞各紙 元日付1面の記録

 新聞はニュースの格付けにこだわるメディアです。日々のニュースで、その日もっとも重要だと判断したニュースを1面トップに置きます。1年の始まり、元日の朝に届く紙面であれば、1面トップには事前に時間と労力をかけて取材し仕込んだ大きな独自記事を各紙が競って載せます。最近では、大きく構えた連載企画の初回を据えることが目立ちます。
 ことし2022年の1月1日付の朝刊1面について、東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)を見てみました。6紙のうち読売以外の5紙は、トップは連載企画でした。テーマは国家ぐるみのフェイクニュースの疑惑、成長と資本主義、ビッグデータと国家主権、デモと表現の自由など。それぞれに、わたしたちの社会の現状と展望を描こうとしているように感じます。
 その中で「おや」と思ったのは朝日新聞の1面トップの記事です。企画のタイトルは「未来のデザイン」。見出しは「未来予想図 ともに歩もう」の1本だけ。併用写真は、ドリームズ・カム・トゥルーの吉田美和さんと中村正人さんの昨年12月のツアーの様子です。この見出しと写真からは、一体何の記事であるのかが分かりません。読んでみれば、コロナ禍の中で未来の姿を探ろうとする試みなのかと、おぼろげながらに趣旨が分かってくるのですが、正直なところ読み進むのがつらいと感じました。
 他紙の企画もそうですが、1面から総合面に記事は続いており、相当なボリュームです。各紙の電子版は見ていないのですが、これだけの長文の記事はスマホの小さな画面で読むのはつらく、そういう意味では紙面向けの記事であり、印刷媒体に適した表現方法でもあるのだろうと思います。そして、印刷媒体の新聞であるのなら、何を伝えたいのかを簡潔な表現で示す見出しはメディアとしての生命線です。朝日新聞の企画が、仮に何か新しい表現の試みだとすれば、その意図がよく分かりません。
 新聞はこの数年、発行部数の減少が急激に進み、新聞社はどこもデジタル展開が課題になっています。しかし収益モデルはそう簡単には見いだせません。これまで以上に経営のダウンサイジングも進むとみられます。取材と報道の全体を通じて、今まで通りのやり方で済むはずがありません。新しい試みが必要なのは確かですが、一方で変える必要がないもの、変えてはいけないものまで変えてしまっては元も子もない―。そんなことを考えた1年の始まりになりました。

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 以下に、東京発行各紙の1日付朝刊1面掲載の記事について、格付け順に主な見出しを書きとめておきます。

 わたしがもっとも読み応えがあると感じたのは、路上の「表現の自由」ともいうべきデモ体験の企画をトップに据え、その脇に、気候変動が貧困や分断をもたらし民主主義にとっても脅威になっている、とのノーベル賞受賞者、真鍋淑郎さんの指摘を並べた東京新聞です。


▼朝日新聞
①【企画】未来のデザイン1 プロローグ「未来予想図 ともに歩もう」写真:ドリームズ・カム・トゥルー ※2面に続く
②「強い寒気 日本海側大雪」
③「朝日賞 4氏に決まる」

▼毎日新聞
①【企画】オシント新時代 荒れる情報の海2「露、ヤフコメ改ざん転載/政府系メディアが工作か/日本読者装い『どうせ米は救ってくれない』」 ※3面に続く
②「『復帰っ子』沖縄の50年つむぐ」
③「米、48万人新規感染/1日当たり最多 英、伊も/新型コロナ」

▼読売新聞
①「米高速炉計画 日本参加へ/『もんじゅ』技術を共有/原子力機構など 国内活用目指す」/(解説)「原子力 将来像示す必要」
②「米露、ウクライナ協議難航/首脳電話会談 制裁巡り応酬」
③「トップ対談 意気投合/国枝選手・藤井竜王」 ※詳報31面

▼日経新聞
①【企画】成長の未来図1「資本主義 創り直す/競争→再挑戦→成長の好循環/解は『フレキシキュリティー』」 ※関連特集6、7面
②「海賊版 民間連携で抑止/日米などの著作者団体 国際捜査を要請」
③「米ロ首脳、異例の再協議/ウクライナ問題、警告応酬」
④「今夏の参院選 立候補予定171人 本社調べ」

▼産経新聞
①【企画】主権回復 第1部 2030への処方箋1「『電子暗号』覇者がAI社会制す/ビッグデータ時代の情報安全保障」 ※3面に続く
②年のはじめに「さらば『おめでたい憲法』」/コロナ禍でも寿命延び/警戒せよ「習近平の夢」 乾正人論説委員長
③「米、露侵攻なら『断固対応』/ウクライナ情勢 協議は継続 首脳電話会談」

▼東京新聞
①【企画】声を上げて デモのあとさき1「『脱原発』叫び 強くなれた/写真家 亀山ののこさん(45)」 ※2面・小熊英二さんに聞く
②「気候変動 民主主義にも脅威/貧困や難民 分断を招く/ノーベル賞・真鍋淑郎さんに聞く」
③「在日米軍、入国直後に検査/「クラスター 批判受け方針転換」