ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

パチンコ店の店名公表と特措法の危うさ

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、特別措置法に基づき発出された緊急事態宣言の18日目に当たる4月24日、大阪府が営業自粛の要請に応じない府内のパチンコ店6店の店名を公表しました。吉村洋文知事は取材陣に対し「こちらのパチンコ店に府民は行かないようにして感染拡大防止に協力してほしい」(共同通信の配信記事より)と述べたと報じられています。6店のうち2点は25日からの休業を連絡してきたとのことですが、25日も営業を続けた店があり、開店時間には約300人が列をつくった店もあったとのことです。

※共同通信:47news「大阪府が初の店名公表 休業迫る パチンコ6店に 私権制限懸念」=2020年4月24日
 https://www.47news.jp/national/new_type_pneumonia/4750675.html

 大阪府が24日、新型コロナウイルスのまん延を防ぐためとして、特別措置法45条に基づきパチンコ店6店に休業を要請、全国で初めて店名公表に踏み切った。これまで24条が規定する一般的な協力呼び掛けにとどまっていたが、営業の自由など私権制限への懸念がある強い措置に移行した。東京都、茨城県なども休業要請に応じ梅場合はパチンコ店の店名を公表する意向を明らかにした。
 6店のうち1店の運営会社は、国の救済措置がないと窮状を訴え、営業を継続する方針。経済産業省は24日、中小企業の資金繰り支援の対象業種をパチンコ店などに拡大すると発表した。
 (中略)
 吉村洋文知事は「利用を控えてという呼びかけのための公表だ。こちらのパチンコ店に府民は行かないようにして感染拡大防止に協力してほしい」と府庁で記者団に語った。

※毎日新聞「店名公表パチンコ店、堺では300人行列 住民『ウイルス持ち込むかも、怖い』」=2020年4月25日
 https://mainichi.jp/articles/20200425/k00/00m/040/094000c

 同店では開店1時間前の午前9時過ぎには整理券を受け取るために約150人の客が並び、従業員が間隔を空けるよう呼び掛けた。駐車場には神戸や和歌山など府外ナンバーの車も見られ、開店時には列は約300人に達した。
 60代の男性は「毎日の習慣なので今日も来た。普段より並んでいる客が多いような気がする」と周りを見回した。

※日刊スポーツ「営業継続パチンコ店で行列『2倍以上かな』越境客も」=2020年4月25日
 https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202004250000213.html

 堺市内の大型パチンコ店には、午前10時の開店前から行列ができた。常連客の男性(65)は「いつも週末の2倍以上かな。常連客とは違う人が多い」と話した。
 大阪市内から来店した自営業の男性(42)は「家にいてもヒマやからな。地元の店は休業中だから、遠征してきた。コロナ? ハッ!? パチンコはオレの趣味や!」と語気を強めた。
 アルバイトの男性(25)はスロットを打つため、京都府内からの「越境スロット」。「地元で開いてる店を探すよりも、確実に開いている店に来た」。

 この営業パチンコ店の店名公表のニュースには、考えさせられることが多々あります。

▼厳格な運用なのか
 現に営業中の店に対して、府知事が「府民は行かないで」とまで呼び掛けるのは、私権制限の強権を公権力が発動したととらえていい事態だと思います。平時なら営業妨害であり、緊急事態でなければ到底、許されることではありません。しかし特措法に規定があるとしても、手続きを適切に踏んでいるかどうか、という論点があります。このブログの以前の記事でも書きましたが、特措法の運用が厳格に行われているかどうかの観点です。
 強権発動の目的は、新型コロナウイルスの感染拡大防止であり、そのための人の密集状態の解消のはずです。店名公表の「見せしめ」によって休業を決めた店もあった一方で、営業を継続した店ではふだん以上の密集状態が生まれたのだとしたら、私権制限の事の重大さに見合うだけの効果が得られたと評価できるでしょうか。
 特措法45条に基づく強い要請や指示、施設名の公表を巡っては、自治体側の強硬姿勢が先行し、政府が急きょガイドラインを作成するなど、ドタバタぶりが目立つ印象があります。東京都や茨城県も大阪府に続く意向のようですが、全体として熟慮の末に最後の一線(店名公表)を越えることを決めた、というよりも、規定があるのだから使ってみるとの「行使ありき」の色彩が強いように感じます。「私権の制限」という事の重大さに比して、発動までの手続きに、それに見合った慎重さや検討の積み重ねがあったと言い得るのか疑問です。もっと言えば、目的に照らして逆の効果を招いているとすれば、それは失策であり、法の趣旨にかなった運用とは言えないように思います。

▼ギャンブルの依存性
 なぜ要請に従わないパチンコ店があるのかを考える時に留意が必要なのは、パチンコは娯楽というよりもギャンブルであり、ギャンブルには程度の差はあれ依存性があるということです。同じように人の密集を避けるために休業要請や営業時間の短縮要請の対象になっている施設でも、ナイトクラブ、居酒屋、飲食店などは、客の側が利用を控えることがあります。客が来ないなら店を開けても仕方がない、となります。しかしパチンコ店では、店が開いている限りは客が来ます。営業しても客が来ないのならともかく、客は来るので「営業を強行する」という選択肢が成り立ちます。
 パチンコをやったことのない人には理解しがたいことだとは思うのですが、依存性が高まると、勝ち負けよりもとにかくパチンコ台に座っていないと落ち着かない、ほかのことは手に着かない、となります。ギャンブル依存症となれば病気で、治療が必要です。
 パチンコには換金システムがあり、いわば街中(まちなか)に賭場が堂々と開帳している状態です。そういう中でのギャンブル依存症の問題は近年、カジノ解禁論議と絡めて繰り返し指摘されてきました。しかし、それを何とかしようという具体的な論議や施策は乏しいように思います。大阪でも維新の会の吉村府知事や松井一郎大阪市長はカジノ誘致に熱心です。吉村知事もギャンブル依存症のことは知らないはずはないのに、パチンコ店の店名公表に当たって、その要因をどこまで考慮、検討したのか、それもまた見えません。逆効果になりかねないことは、事前に想定できたはずです。

▼特措法の危うさ
 仮にこの後、東京などで店名が公表されても、あるいは「要請」が「支持」「指示」に切り替わっても、それでも営業をやめないパチンコ店が残った時に、何が起こるのでしょうか。法改正をして「営業停止」の強制力を備える、罰則を備える、ということになるのか。パチンコ業界を所管する警察が動くのか。あるいは、社会の同調圧力の高まりによって、店にも客にも批判が高まり、休業へと追い込まれていくのか。
 いずれにせよ、重要なのは、法に基づく手続きが適正に取られること、その手続きが透明性を持つことだと思います。緊急時であることを理由に人権の制限をさらに容認するとしても、緊急時を脱した際には元に戻れることが、民主主義に即した手続きによって担保されていることが絶対に必要です。緊急時だからこそ、厳密な手続きの設定と、それが守られることが重要です。その意味で、もともと現在の特措法には、緊急事態宣言の発動や終了に国会が関与しない、発令や終了の要件があまりに漠としているなどの大きな不備があり、危うさを感じざるを得ません。 

※追記=2020年4月26日11時30分

 この記事をアップした後に考えたことをまとめました。長くなったので追記ではなく、単独記事としてアップしました。

news-worker.hatenablog.com

※追記終わり

 「大阪府がパチンコ店名公表」のニュースを、東京発行の新聞各紙がどのように扱ったか、以下に書きとめておきます。大阪発行の紙面では、はるかに大きな扱いだったのではないかと思いますが、私権制限と厳格な法の運用という観点は、地域差なく全国どこでも重要であって、その意味ではどこでも重要ニュースとして大きく扱われていい(新聞なら1面で)と思います。

・朝日新聞
第2社会面
「『店名公表』自治体相次ぐ/休業要請応じぬパチンコ店」
「識者『裁量権逸脱の恐れ』」

・毎日新聞
1面
「パチンコ店名公表/大阪府 休業要請応じぬ6点」
「東京・茨城は28日にも」/「資金繰り支援 パチンコ店にも」
社会面
「都内パチンコ41店営業/専属チーム 現地確認へ」
「国の強制措置必要」鈴木宏・新潟大名誉教授(公衆衛生学)/「行政の裁量権逸脱」右崎正博・独協大名誉教授(憲法学)

・読売新聞
社会面
「大阪 要請応じぬ店公表/パチンコ6点 都も28日に 営業自粛」/「特措法3段階 罰則規定なし」

・日経新聞
社会面
「都、パチンコ店名公表へ/28日にも 大阪すでに6店公表」

・産経新聞
第2社会面
「休業拒否 パチンコ6点公表/全国初 知事『最後の手段』 大阪府」
「拒否店舗、とは28日にも公表」/「特別措置法24条と45条」

・東京新聞
3面
「大阪府 パチンコ店名公表/営業継続 より強い休業要請」
「都も18日以降に公表へ」
「茨城と神奈川、公表を検討」

安倍内閣「支持」4割キープ、でも「不支持」は上昇

 4月18日(土)、19日(日)の両日実施された朝日新聞と毎日新聞の世論調査結果が報じられました。安倍晋三内閣の支持率は以下の通りです(かっこ内は前回3月調査からの変動、Pはポイント)。

・朝日新聞 4月18、19日実施
 支持  41%(±0)
 不支持 41%(3P増)
・毎日新聞 4月18、19日実施
 支持  41%(2P減)
 不支持 42%(4P増)
 関心がない 15%(3P減)

 内閣支持率は朝日新聞調査では前回比で横ばい、毎日新聞調査でも2ポイント減と微減です。この1週間前に実施された4件の調査では、6ポイントから2.3ポイント低下していたことと比べると、傾向は異なるようです。

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 直前の16日に、新型コロナウイルスの経済対策として「一律10万円」の支給を安倍首相が表明し、抱き合わせになる形で特措法に基づく緊急事態宣言が全国に拡大されました。「支持」が横ばいの要因を強いて探せば、そのことが好意的に評価されたということでしょうか。ただ「支持」の水準を見ると、計6件の調査結果とも、40%を中心にプラスマイナス2ポイントの中にきれいに収まっています。
 一方で不支持率に目を向けると、18~19日の調査では3~4ポイント増です。「支持」でも「不支持」でもなかった層から「不支持」に転じた層が一定数いて、朝日新聞調査では差し引き3ポイントとなっている、と考えられます。
 毎日新聞の調査は「関心がない」との選択肢を設けているのが特徴です。「支持」が2ポイント減って「不支持」が4ポイント増えていますので差し引き2ポイント。「関心がない」の3ポイント減におおむね見合うと考えれば、やはり「関心がない」層から「不支持」に転じた層が一定程度いると言っていいように思えます。朝日、毎日の2件の調査結果を見て思うのは、支持率に有意の変動は認められないものの、「関心がない」(あるいは「分からない・無回答」)層が減って、その分、不支持層が増えているのが現状ではないか、ということです。


 以前の記事でも紹介しましたが、スマホの普及によって、世論調査による内閣支持率にどこまで意味を求められるか、慎重に見た方がいいと考えています。

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 それでも、不支持率にはそれなりの意味があるように思います。世論調査ではどの調査も内閣を支持するかどうかは、最初の質問です。スマホを介したSNSやニュースアプリでの情報収集が中心で、新聞などの深みのある報道に接していなければ「まあ、いいんじゃないか」と「支持」と答える人は少なくないかもしれません。対して「不支持」と答える人は政治の現状を踏まえたそれなりの理由を持っているのではないでしょうか。一般的に人は他人にポジティブな評価をする時よりも、ネガティブに評価するときの方が慎重になるように思います。以上はあくまでも仮説ですが、民意を読み取るなら今や支持率ではなく、不支持率に着目した方が意味があるのではないかと考えています。

 以下は新型コロナウイルス対策に関しての主な質問と回答状況です。
▼新型コロナウイルス問題への政府(安倍政権)の対応を評価するか
朝日新聞 評価する33% 評価しない53%
毎日新聞 評価する39% 評価しない53%

▼安倍首相は感染拡大防止へ指導力を発揮していると思うか
朝日新聞 発揮している33% 発揮していない57%

▼新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言を4月7日に発令したタイミング
朝日新聞 早すぎた1% 適切だ18% 遅すぎた77%

▼緊急事態宣言の全国拡大について
朝日新聞 評価する 88% 評価しない 9%
毎日新聞 妥当だ  83% 広げすぎだ 5%

▼全住所地への布マスク2枚の配布に対して
朝日新聞 評価する32% 評価しない63%
毎日新聞 評価する26% 評価しない68%

▼「一律10万円」給付の評価
朝日新聞 大いに評価する18% ある程度評価する59% あまり評価しない18% 全く評価しない5%
毎日新聞 妥当だ50% 不十分だ19% 過剰だ9% わからない18%

「一律10万円」受け取りと使途は、政治家であれ公務員であれ個人の問題~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録4:4月18~21日付

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言は4月21日で15日目。3週間目に入りました。4月18日付~22日付の東京発行新聞各紙の紙面の記録です。扱いの大きな1面の記事2本に加え、22日付からは社会面トップの記事の見出しも記録することにしました。

 安倍晋三政権が先週、緊急事態宣言の全国拡大を抱き合わせにする形で表明した「一律10万円」支給は、閣議決定が20日に行われました。来月にも給付が始まると報じられています。
 この10万円を巡って、菅義偉・官房長官は20日午前の記者会見で、自身は申請するかどうかを問われ「常識的にはしないと思う」と答えました。続いて安倍首相は同日午後の自民党役員会で、閣僚は受け取らない方針を示し、自民党の二階俊博幹事長も記者会見では「国会議員は受け取るということではなく、できるだけ皆さんの共感が得られる形で処理したい」(毎日新聞の21日付朝刊5面の記事)と述べた、と報じられています。首相を含め閣僚も国会議員も、今回の新型コロナウイルス禍で収入が減ったり、生活が脅かされたりしているわけではない、ということでしょうか。混乱の末に決まった経緯もあることから、政権および与党として襟を正す、というつもりなのかもしれません。菅長官の「常識的には」という言葉遣いはどういうことを意味しているのかよく分からないのですが、そういうこと(襟を正すべき立場にある)なのか、とも思います。
 しかし、この10万円を受け取るか受け取らないかは個人の問題です。受け取った10万円をどう使うかも私権の問題です。政治家としての活動には関係のないことであり、首相や閣僚の給与の一部返上などとは性質が異なります。所属政党などが方針を決め、それに従わせるとしたら、第三者による私権の制限です。
 日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は、「党として、市町村議員も含めた全員から給付された10万円を集めたい。集めた給付金は状況が厳しい人たちに少しでも行き渡るようにしたい」と述べ、維新所属の国会議員や地方議員、知事や市長から給付金を集め、仕事を失った人や生活に困っている人などに寄付する考えを示したと報じられています(NHKニュースより)。
 ※NHK「10万円給付 所属議員らから集め寄付へ 維新 松井代表」
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012398771000.html

 寄付は一つの使途ですが、やはり個々人がそれぞれに行うならともかく、政党が指示するとしたら、その党は根拠なく私権の制限=人権侵害を行う党ということになります。報道によれば松井代表は「全員から集めたい」と言っていますから、任意の判断に委ねるのではないようです。仮に任意だとしても、党の代表が言い出したことですから、「わたしは差し出さない。自分で使う」とは言いづらくなるはず。党内でどんなことを言われるか分かったものではありません。
 政治家が対象ではありませんが、広島県の湯崎英彦知事は、県職員が受け取る現金10万円を自主的な寄付として募り、県の対策事業の財源に活用したい考えを表明しています。新たに設ける基金に積み立てる手法などを念頭に、仕組み作りを急ぐ、とのことです(中国新聞の報道)。これもいくら任意と言っても、県のトップが言ってしまった以上、限りなく強制に近いムードになるのではないでしょうか。県職員は公僕ですが、個人としてはいろいろな側面、生活の事情がそれぞれにあるはずです。
 ※中国新聞「県職員への国給付10万円、コロナ対策に活用の考え 広島知事」
 https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=635857&comment_sub_id=0&category_id=256

 毎日新聞の先の記事の中では共産党の小池晃書記局長の発言が紹介されています。「受け取るか受け取らないかを聞くこと自体をやめた方がいい。国民の中で足の引っ張り合いをすることになる。もらわない選択肢もあるし、もらって全部寄付する人もいる。それぞれが判断すればいい」
 以上のようなことを考えながらネットを見ていたら、埼玉県和光市の松本武洋市長のツイートが目にとまりました。
 https://twitter.com/takeyanm/status/1252422061290475523

  「#10万円もらう政治家」のハッシュタグもできています。わたしは共感しています。

※追記=2020年4月22日18時20分

 広島県の湯崎知事は、県職員に支給される10万円の活用についての発言を事実上、撤回したとのことです。

 中国新聞「【速報】広島知事、県職員の10万円活用を撤回
 https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=636147&comment_sub_id=0&category_id=256

 

 以下は、東京発行の新聞各紙の記録です。
【4月21日(火)付】=緊急事態宣言15日目・拡大6日目
▼朝刊
・朝日新聞
「10万円 来月にも給付開始/対面避け各世帯に申請書」
「首相の新型コロナ対応 『指導力発揮してない』57%」※世論調査
社会面「里帰り出産のはずが/病院 院内感染恐れ 受け入れ中止 『都内の予約満杯』『産後不安』 妊婦」
・毎日新聞
「休業支援18都道県/新型コロナ 要請23に対し」
「補正予算案25兆円/閣議再決定 一律10万円計上」
社会面「本当に収束するのか/居酒屋『先見通せない』 宣言2週間」
・読売新聞
「10万円給付 来月にも開始/市区町村別に 世帯ごと申請」
「首相『長期戦も予測』/緊急事態宣言2週間」
社会面「感染防止 最期会えず/知人男性『心に大きな穴』」
・日経新聞
「朝の人出 地方減り鈍く/札幌3割減 中小集積地は増」
「コロナと世界『「利益至上」見直す契機に』日本電産会長兼CEO 永守重信氏」
社会面「週末の行楽地 自粛緩む/『3密リスク』認識に温度差」
・産経新聞
「10万円給付 補正8.8兆円増/予算案25.6兆円 閣議決定」
「週末 人出7、8割減/7都府県主要駅 新宿13.7万→1.9万人」
社会面「商店街に人 繁華街は減/生活用品購入『家族連れ目立つ』」
・東京新聞
「10万円給付 自己申告制/補正予算案8.8兆円増額」
「院内感染『全職員の検査を』/都内病院医師、体制改善求める」
社会面「感染時 治療受けられるか…/難病ALS患者ら 不安と負担と」

▼夕刊
・朝日新聞
「NY原油価格 初のマイナス/コロナで需要急減 貯蔵施設『限界』に」
(NEWSダイジェスト「辺野古移設 政府が設計変更申請」など3本)
社会面「お遊戯に絵本 おうちで見てね/幼稚園の動画 アプリ会社が配信サービス」
・毎日新聞
「岩手・北海道 津波最大30メートル/日本・千島海溝地震想定 内閣府」
「NY原油先物 初のマイナス/コロナで需要減 懸念拡大」
社会面「SNSでDV相談/外出自粛、急増懸念」
・読売新聞
「原油 初のマイナス価格/NY先物 在庫増懸念で売り」
「岩手・宮古 津波30メートル予想/内閣府検討会 日本海溝 M9地震」
社会面「物流維持 闘うドライバー/『不可欠な仕事』社会守る」
・日経新聞
「NY原油、マイナス価格/在庫増 保管余地少なく」
「米、48兆円追加策/政権・議会詰め 中小支援上乗せ」
社会面「不妊治療 延期に戸惑い/感染リスクで学会要請『年齢考え進めたい…』」
・東京新聞
「動く卒アル 児童にエール/『3月一緒に過ごせず心残り』」
「NY原油暴落 初のマイナス/需要急減で在庫膨らむ」
社会面「間隔空けて 走 快/回避へ『前方と10メートル』『横並び、マスクを』」

【4月20日(月)付】=緊急事態宣言14日目・拡大5日目
▼朝刊
朝日新聞
「接触通知 プライバシー懸念/コロナ感染追跡アプリ 日本でも」
「交付金 休業支援に活用可/経済再生相明言 1兆円 方針転換」
毎日新聞
「治療法 見えぬ正解/もがくNY日本人医師」
「政権対応『評価せず』53%/本社世論調査 内閣支持横ばい41%」
読売新聞
「休業協力金に活用 容認/政府、方針転換 コロナ交付金」
「言語力あっての表現力/『論理国語』新設」地球を読む 劇作家 山崎正和
日経新聞
「雇用維持 瀬戸際の攻防/米 38兆円の融資枠『蒸発』 仏 経済対策12兆円に増」
「コロナと世界『薬開発 競争より結束を』京都大iPS細胞研究所長 山中伸弥氏」
産経新聞
「アビガン増産 治験進む/新型コロナ薬 国内350人投与」
「一律10万円給付の攻防」武蔵野大特任教授 山内昌之 歴史の交差点
東京新聞
「『五反田ヒルズ』沈ませない/資金繰りの悩み共有 金融機関招き説明会」
「外国人 コロナ解雇急増/労組に相談2000件超」

▼夕刊
朝日新聞
「コロナ禍でも 私たちは動く/『グレタ世代』ネットも駆使し訴え」
(NEWSダイジェスト「10万円給付 補正8.9兆円増の見通し」など3本);
毎日新聞
「タクシー 自衛に限界/感染の疑い知らず 病院まで送迎」
(NEWS FLASH「組み替え補正予算案 総額25兆円」など4本)
読売新聞
「『青少年の家』帰国者施設に/4か所改修、活用へ 新型コロナ」
「感染対策に乗車礼拝/ラジオから説教 『集まることに意味』」コロナ最前線@ソウル
日経新聞
「輸出 3月11.7%減/新型コロナ 影響拡大」
「補正予算案を午後決定/『10万円給付』計上 歳出総額25.7兆円に」
東京新聞
「豊洲 マグロ暴落/需要なく価格3割 高級食材 通販に道」
「3月輸出 11.7%減/欧米向け自動車低迷」

【4月19日(日)付】=緊急事態宣言13日目・拡大4日目
朝日新聞
「緊急事態 列島閑散/国内感染者 1万人超す」
「違法な報酬支払い『河井事務所方針』/案里氏秘書が供述」
毎日新聞
「『病院化』苦闘の施設/居住域分離/ゴミ袋防護服 汗だく」
「ミクと結婚 AI実現」デジタルVS 第1部 上
読売新聞
「国内感染1万人超す/30代以下拡大 1/3」
「宛名は『王子様 様』」あれから vol.3 キラキラに決別
日経新聞
「治療薬開発 急ピッチ/新型コロナ 世界で治験650件」
「感染 国内1万人超す/9日で倍増、経路不明拡大」
産経新聞
「国内感染1万人超す/9日間で倍増、死者237人」
「21世紀五輪を阻むリスク/1 気候・感染症の脅威」灯す 第3部 試練を越えて
東京新聞
「『医療崩壊起こりつつある』/日本の対策襲い/死者数試算 首相が示すべきだ」※ゲノム医療権威 中村祐輔・米シカゴ大名誉教授
「国内感染 1万人超す/クルーズ船除き 9日間で倍増」

【4月18日(土)付】=緊急事態宣言12日目・拡大3日目
▼朝刊 
※参照 https://news-worker.hatenablog.com/entry/2020/04/19/093122

▼夕刊
朝日新聞
「『密集回避』 閉ざされた公園/運動や遊びは必要 過剰な規制懸念」
「世界の死者 15万人超える」
毎日新聞
「真っ暗だからこそ、見える光がある/#いまスポーツにできること」
「緊急事態下の昼時」読む写真 ※「人影まばらの丸の内仲通り」と「大勢の人たちが食材や日用品を買い求める吉祥寺サンロード商店街」
読売新聞
「『休業要請』人出まちまち/小樽 消えた観光客 岩手 マスクで行列」
「感染症 日米英にキーマン/会見で首相の隣 尾身茂さん」
日経新聞
「里帰り出産 戸惑う妊婦/受け入れ休止相次ぐ ネットで相談・診療も」
「死者 世界で15万人超え/新型コロナ 米中、集計見直しで増」
東京新聞
「コロナに負けない/アスリートつながる」
「障害者施設 苦境でも前へ/足利のワイナリー 販売激減」

新型コロナ対策 強制力容認の傾向が少なからず

 4月7日に新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が発せられてから最初の週末となった4月11、12日を中心に、マスメディア各社の世論調査が実施されました。安倍晋三内閣の支持率の動向は以前の記事の通りです。ここでは、新型コロナウイルスに関する個別の質問と回答状況を書きとめておきます。対象は共同通信(10~13日実施)、読売新聞(11~12日実施)、産経新聞・FNN(11~12日実施)、NHK(10~12日実施)の4件の調査です。
 緊急事態宣言の発令自体はおおむね評価されているものの、時期が遅すぎたとする回答が75~80%超に上っています。目を引くのは、外出の抑制などに強制力の導入を容認する傾向が少なからずうかがえることです。読売新聞の調査では、外出自粛の要請で十分だと思うかどうかを尋ねたのに対し、「不十分だ」が59%でした。ただ、読売調査の設問では、日本の緊急事態宣言には欧米諸国のように住民の外出を禁止する強制力はないことに触れています。仮に欧米諸国の例に触れなかったら、違う数字になったかもしれないと感じます。
 産経新聞・FNNの調査では、日本も法改正してロックダウン(都市封鎖)できるようにすべきだと思うかどうかを尋ねており、回答は「思う」45.8% 「思わない」47.5%と二分でした。同調査では、国家的な危機や大規模災害に際して、政府が緊急的・一時的に国民に対し、強制力を持つ措置を取ることができるよう憲法に「緊急事態条項」を設けることに賛成か、との設問もあり、結果は「賛成」65.8%、「反対」23.4%でした。
 ロックダウンと憲法の緊急事態条項とで回答状況にこれだけの開きがあり、しかも現時点で海外に具体例がありイメージしやすいように思えるロックダウンよりも、国内で議論も進んでいない憲法改正に賛成が多いのは、意外な気もします。

 

【新型コロナウイルス対策】
▼新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の発令について
共同通信  評価する75.1% 評価しない20.8%
読売新聞  評価する83%   評価しない14%
産経FNN 評価する65.3% 評価しない29.0%

▼緊急事態宣言発令のタイミングについて
共同通信  適切だった16.3% 遅過ぎた80.4% 早過ぎた0.8%
読売新聞  適切だった15% 遅すぎた81% 早すぎた1%
産経FNN 遅すぎる82.9% 適切なタイミングだ12.4% まだそのタイミングではなかった0.9% 緊急事態宣言は出すべきではない1.1%
NHK   適切なタイミングだ17% 遅すぎた75% 宣言を出すべきではなかった2%

▼全住所地への布マスク2枚の配布に対して
共同通信  評価する21.6% 評価しない76.2%
読売新聞  評価する25%   評価しない73%
産経FNN 評価する21.1% 評価しない74.8%
NHK 大いに評価する5% ある程度評価する18% あまり評価しない29% まったく評価しない42%

▼損失補償について
・共同通信:緊急事態宣言に基づく休業要請に応じた企業などに国が損失補償をするべきか
 国が補償すべきだ82.0% 国が補償する必要はない12.4%
・NHK:感染防止のために、イベントや活動を自粛した事業者の損失を、国が補償することに対し
 賛成76% 反対11%

▼強制力について
・読売新聞:政府の緊急事態宣言は、欧米諸国のように住民の外出を禁止する強制力はなく、外出の自粛を強く要請することが柱です。あなたは、自粛の要請で十分だと思いますか、不十分だと思いますか
 十分だ33% 不十分だ59%
・産経FNN:緊急事態宣言が発令されても、欧米のように強制的に交通を遮断したり不要不急の外出に罰金を科したりするロックダウン(都市封鎖)はできないが、法改正して日本もロックダウンできるようにすべきだと思うか
 思う45.8% 思わない47.5%

▼緊急事態条項について
 国家的な危機や大規模災害に際して、政府が緊急的・一時的に国民に対し、強制力を持つ措置を取ることができるよう憲法に「緊急事態条項」を設けることに賛成か
 賛成65.8% 反対23.4%

緊急事態宣言下 在京紙報道の記録3:4月15~18日付

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言は4月18日で12日目。4月15日~18日付朝刊までの東京発行新聞各紙の1面の記録です。
 ※17日付朝刊と18日付朝刊については、別の記事に書きとめています。

 なお、検察官の定年延長を65歳に引き上げる検察庁法改正案の審議が16日に衆院で始まりました。東京高検検事長の定年延長ともリンクして、日弁連などからも批判が上がっている法案です。東京発行各紙が17日付朝刊でどのように扱ったか、以下にまとめておきます。読売新聞は見出しに「検察官」がありません。
・朝日新聞:4面(総合)「検事長定年延長 疑問残したまま/検察官定年引き上げ 法案審議入り」「政権『適切』繰り返す/野党『恣意的な法律運用』」「政治介入強まる恐れ/幹部の定年に特例規定」
・毎日新聞:5面(総合)「『検察官の撤回不要』/国家公務員定年 延長審議で菅氏」
・読売新聞:4面(政治)「『65歳定年』法案 審議入り/国家公務員 今国会成立目指す」
・日経新聞:4面(政治)「公務員定年延長審議入り/衆院本会議 検察官も65歳まで」
・産経新聞:2面(総合)「菅氏『検察官適用は適切』/衆院 公務員定年延長 審議入り」
・東京新聞:7面(総合)「黒川氏人事『撤回ない』/政府 定年延長法案審議入り/野党 検察へ政治介入懸念」

 

◎1面の記録
【4月18日付】=緊急事態宣言12日目・拡大3日目
▼朝刊 
※参照 https://news-worker.hatenablog.com/entry/2020/04/19/093122

【4月17日付】=緊急事態宣言11日目・拡大2日目
▼朝刊 
※参照 https://news-worker.hatenablog.com/entry/2020/04/19/093122

▼夕刊
朝日新聞
「緊急事態 列島困惑/感染ゼロの岩手『仕事どうする』・感染16人の秋田『ピンとこない』・特定警戒の岐阜『指定は当然だ』・感染1人の鳥取『じわじわ拡大』・首相地元の山口『もう少し早く』」
(NEWSダイジェスト「全国学力・体力調査 今年度は中止」など3本)
毎日新聞
「コロナ感染=謝罪なの?/組織トップ 芸能人 会社員として…」
「中国GDP 初のマイナス/6.8% 新型コロナ直撃」
読売新聞
「中国 初のマイナス成長す拉す6.8%減、経済停止響く」
「国に損失補償提言/休業協力金 臨時交付金を活用 知事会l」
日経新聞
「米、3段階で経済再開へ/政権が指針 州が時期判断」
「中国GDP 6.8%減/1~3月 初のマイナス」
東京新聞
「中国、初のマイナス成長/1~3月期 コロナ直撃6.8%減」
「10万円『手挙げた人に』/財務相、一律給付を否定」

【4月16日付】=緊急事態宣言10日目・拡大1日目
▼朝刊
朝日新聞
「国民一律10万円『検討』/コロナ対策 首相、公明要請に」
「緊急事態 政府が追加検討/北海道・愛知・京都など」
毎日新聞
「死者4割 施設で感染/病院、高齢者居住」
「1人10万円 首相『検討』/公明『補正組み替えを』」
読売新聞
「大病院に患者殺到/都内 受け入れ分担の試み」(新型コロナ 医療現場から 上)
「1人10万円給付検討/政府・与党 所得制限 隔たり」
日経新聞
「ICU、43道府県 不足恐れ/コロナ重症ピーク時 推計」
「ソニーや帝人、増産協力/医療装備 首相『在庫買い上げ』」
産経新聞
「訪日客 3月93%減/下げ幅最大 コロナで20万人割る」
「旧宮家復帰 有識者に聴取/政府、論点整理へ明記焦点」
東京新聞
「休業手当なし 続出/『政府要請だから』 助成金手続き煩雑」
「コーナー際を狙った祝辞/女性差別と闘う 東大名誉教授 上野千鶴子」(空気は、読まない。)

▼夕刊
朝日新聞
「コロナ悪用 詐欺暗躍/高齢者の在宅 付け入る」
「変わらぬ思い/熊本 本震から4年」
毎日新聞
「試される『日本の台所』/通販・卸で消費者へ届け」
(NEWS FLASH「世界感染者200万人、死者13万人超」など4本)
読売新聞
「『1人10万円』補正で検討/政府・与党 組み替え調整へ」
「韓国与党 単独過半数/総選挙 コロナ対応評価」
日経新聞
「韓国総選挙 与党が圧勝/議席6割 単独採決可能に」
「独、経済規制を緩和/小・中店舗再開 飲食店は見送り」
東京新聞
「『一人親方』苦悩/ゼネコン下請け『予定真っ白。補償あるのか』」
「一律10万円給付へ調整/首相 補正組み替え指示」

【4月15日付】=緊急事態宣言9日目
▼朝刊
朝日新聞
「世界恐慌以来 最悪の不況/成長率 異例のマイナス予測」
「世帯主以外の減収も対象/30万円給付 政府が拡大方針」
毎日新聞
「独自『宣言』9道県/政府、追加区域見極め」
「世界経済マイナス3%/IMF今年予測 後退、大恐慌以来」
読売新聞
「世界成長マイナス3%/今年 リーマン超え最悪」
「コロナ診療 地域で分担/共同検査で患者振り分け」※東京都新宿区の医療機関
日経新聞
「世界経済 500兆円失う/財政出動、速さ勝負」
「コロナと世界『「集まる自由」問い直す』哲学者 東浩紀氏」
産経新聞
「世界成長マイナス3.0%/IMF経済予測 大恐慌以来の悪化」
「在宅勤務 拡大を要請/接触8割減へ 政府、経済3団体に」※宣言1週間
東京新聞
「医療現場 物資足りない/マスクやガウン 消毒し再利用」※指定機関医師が証言
「受注業者に助言、報酬/辺野古工事 防衛省の有識者2人」

▼夕刊
朝日新聞
「『給料前借り』相談急増/『コロナで減収、利用したら…』法外な手数料・違法取り立て」
(NEWSダイジェスト「『所得制限なしで10万円給付』要請」など3本)
毎日新聞
「混み合うスーパー疲弊/クレーム対応 人手足りず」
「85万人が重篤に/『対策なしなら』厚労省班試算」
読売新聞
「世界の航空55%減収/20年試算 便数 年初の20%」
「1人10万円『方向性もって検討』/所得制限なし 首相、公明提案に」
日経新聞
「米、経済再開へ協議会/外出制限緩和 指針近く公表」
「首相『方向性持って検討』/一律10万円給付、公明要請」
東京新聞
「『マナりこ』に事故防止誓う/国や高齢者に啓発続ける夫」※池袋暴走1年
「対策なければ42万人死亡/厚労省推計 国内で重篤85万人」

新型コロナ特措法は厳格に運用されているか~「緊急事態宣言 全国拡大」の手続きに感じること

 新型コロナウイルスに対応する特別措置法に基づく緊急事態宣言は、私権の制限が可能な「劇物」です。その手続きは、法に基づいて厳格に進められなければならないはずです。安倍晋三首相は4月16日、緊急事態宣言を、それまでの7都府県(東京、千葉、埼玉、神奈川、大阪、兵庫、福岡)から全都道府県に拡大しました。そのうち、7都府県に北海道、茨城、石川、愛知、岐阜、京都の6道府県を加えた13都道府県は「特別警戒都道府県」と位置付けました。同時に、経済対策として閣議決定していた所得減少世帯に30万円を給付する案を取り下げ、所得制限を設けず国民に一律10万円を支給することを表明しました。安倍首相は17日に記者会見を開いてこれらを説明しましたが、法の厳格な運用という観点から、わたしにはいまだ納得しがたい、あるいは説明が尽くされていないと感じる点があります。いくつか書きとめておきます。

▽「特別警戒都道府県」の法的根拠は?
 4月7日に7都府県を指定した時には、個々の都道府県の感染者数、それが倍増するまでの日数(スピード)、感染ルートが追えない事例の割合の三つを指標に判断した、との説明がなされていました。しかし、全都道府県への拡大に際しては、そのような統一の基準はないようです。それなりに丁寧な検討をしたと感じられる先行7都府県に比べれば、確認感染者ゼロ(16日の時点で)の岩手県まで含む拡大の手続きは、専門家に事前に諮ることもなかったと報じられている点も含めて、綿密な科学的根拠を踏まえているとはとても思えません。
 47都道府県が同列では、本当に厳しい状況にある地域への対応が埋没してしまうことが危惧されます。そのためか、安倍政権は特措法には規定が見当たらない「特別警戒都道府県」なるものを創り出しました。しかし、政府の「基本的対処方針」を見ても、この13都道府県については「特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要がある」と書かれているだけで、ほかの34県とどう違うのか、具体的なことは一読しただけではなかなか分かりません。新聞各紙を隅まで読み比べて、ようやくぼんやりと分かってきました。
 13の特別警戒都道府県とほかの34県の違いは、施設や店舗に対する休業要請にあるようです。18日付の日経新聞朝刊の記事によると、事業者が要請に従わなかった場合に、要請より強い「指示」を出すことができたり、施設名を公表したりできる特措法45条に基づく要請は、特別警戒都道府県は可能なものの、他の34県は国の「総合調整」によって、事実上出すことができないということのようです。34県が出せる要請は、特措法24条に基づく比較的緩やかなものとのことです。

 ※新型インフルエンザ等対策特別措置法

 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=424AC0000000031#172 

 ※新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622473.pdf 
 しかし、特措法の条文を普通に読めば、24条も45条も、緊急事態宣言の対象地域になった都道府県であれば、等しく権限を得られるはずの規定です。政治判断に基づく裁量の範囲内ということなのかもしれませんが、これが法の規定に即した厳格な運用と言えるのか、疑問を感じます。

▽「『一律10万円』のために緊急事態宣言を政治利用」
 特措法の運用は厳格でなければならないはずなのに、なぜ法に規定がない「特別警戒都道府県」が出てくるようなことになるのでしょうか。その要因の一つは「一律10万円の支給」であるように思います。
 安倍首相は4月16日に緊急事態宣言の全国への拡大を表明した際、「行動が制約されることになる全国すべての国民を対象に、一律一人あたり10万円給付を行う」と説明しました。強い違和感があります。なぜなら、緊急事態宣言の拡大が突然の表明だったのに対して、「一律10万円」は少なくともその前に数日間の経緯が報じられていたからです。「30万円支給」を閣議決定したものの、あまりに世論の評判が悪く、公明党が「一律10万円」への転換を求めて猛然と動き出します。公明党の山口那津男代表が安倍首相との直談判に及び、最終的に安倍首相は受け入れざるを得なかった経過は、マスメディアによってほぼリアルタイムで報じられていました。わたしを含めて、そうした情報に接していた人たちにとっては、「一律10万円」への転換が先に決まり、その後に唐突に「緊急事態宣言の全国拡大」が出てきた、という順番です。
 この点について報道の中には、首相が緊急事態宣言の全国拡大を以前から考えていてこと、当初は17日に宣言を予定していたことを明らかにする記事(例えば18日付東京新聞朝刊)もありますが、そうだとしても、「一律10万円」への転換が決まったために宣言を1日前倒ししたのではないか、という疑問は残ります。
 閣議決定までしていたものを撤回するのは、この緊急時でなければ首相として出処進退が問われてもおかしくはない重大な失策であり、それに見合うだけの大きな理由が必要です。そのための緊急事態宣言の拡大だったとの見立ては、憶測の域を出ないとしても、見立てとしての納得性は高いと思います。自民党内にも同じような見方はあるようで、朝日新聞の17日付朝刊「時時刻刻」は、「10万円の給付金にする理由として緊急事態宣言を政治利用している」との自民党ベテラン議員の言葉を紹介しています。
 緊急事態宣言を全国に拡大することで行動が制約されるから、一律に10万円を支給する、との理屈建ては、10万円出すから私権の制限を甘受せよ、と言っているようにも聞こえます。

▽マスメディアと指定公共機関
 以下は私自身も身を置くマスメディアについてです。「表現の自由」「知る権利」に直接かかわることとして、マスメディアの指定公共機関への指定の問題があります。既にNHKが指定公共機関として特措法に明記されていますが、法の仕組みから言えば民放局も新聞社も指定公共機関にならないとも限りません。安倍政権は民放について「指定公共機関には指定しない」とは言いましたが「指定できない」とは言っていないことに注意が必要です。
 仮にマスメディアがすべて指定公共機関になれば、政府や自治体が発表する情報だけが報じられるようになり、メディア独自の報道や政府、自治体の施策に対する批判的な報道などは「総合調整」の名のもとに封じられてしまうことだって危惧されます。緊急事態宣言が全国に拡大したということは、安倍政権がやろうと思えばそういうことが現実のものになりかねない、その下地が全国一元で整ったということを意味します。

 緊急事態宣言の拡大や「一律10万円」への転換は、東京発行の新聞各紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞)も大量の情報を紙面に載せています。ただ、率直に言って、私権や「表現の自由」「知る権利」の制限に対する注意や警戒は十分だろうか、と感じます。
 手続きは法に即して厳正に進めなければならないはずですが、先に見た通り、安倍政権はかなり政治的な思惑を伴って運用している可能性が疑われます。特措法は、緊急時に限って、ふだんはできないことをできると定めているのであって、緊急時だから法の運用に無制限の裁量を認めているわけではないはずです。その点を突く報道が重要だと思います。報道にとって、コロナ禍の克服に寄与できる情報を社会に提供することが最重要課題であるのはもちろんですが、同時に緊急時だからこそ、マスメディアが公権力を監視することにはふだんにも増して重要な意義があります。

 地方紙の中には、特措法がはらむ危険性と、その特措法を政権が恣意的に運用することへの危惧を社説・論説で明確に打ち出している例があります。信濃毎日新聞と琉球新報の社説を紹介して一部を引用します。

※信濃毎日新聞「緊急事態宣言 危うさにあらためて目を」=2020年4月18日
 https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200418/KT200417ETI090014000.php

 官邸主導の政治の混乱を覆い隠そうとする思惑が透ける。政権の姿勢が厳しく問われなければならない。
 緊急事態宣言が全国に拡大された。運用の余地が広い特別措置法を根拠に、人権や自由が不当に制限されることがないか。あらためて目を凝らしていく必要がある。
 (中略)
 非常時に政府を批判すべきでないという声も聞こえる。けれども、平時には許されない権限の行使が可能な状況だからこそ、公権力への監視を強める必要がある。
 沈黙すれば、権力の独断専行を止めるすべを失う。情報を開示して意思決定の過程を明らかにし、緊急措置の根拠を丁寧に説明するよう、政府、自治体に求めていくことが欠かせない。

※琉球新報「全国に緊急事態宣言 首相は地域の意向尊重を」=2020年4月18日
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1109016.html

 沖縄でも感染者が100人を超えた。死者も出る中で、対策の強化は必要だ。だが、緊急事態宣言の全国への適用は、16日夕に諮問委員会に提案され、その日のうちに効力を発生させた。私権の制限や経済活動の縮小を伴う強力な措置でありながら、あまりにも唐突すぎる決定だ。
 地方でも感染者が拡大しているとはいえ、発生状況は地域ごとに濃淡がある。全国一律に緊急事態宣言の対象とする理由を科学的な根拠とともに説明すべきだ。
 (中略)
 安倍晋三首相は全国の小中高校への休校要請や中国、韓国からの入国制限強化などでも場当たり的な対応で混乱を引き起こしてきた。今回の緊急事態宣言の拡大も都道府県知事との事前の調整がなく、完全な独断だ。
 感染症に対する国民の恐怖心に便乗し、発動基準が曖昧なままに強権を行使してしまうという、コロナ特措法が改正される際に懸念した通りの展開になっている。

 以下に記録として、東京発行の新聞各紙の17日付朝刊と18日付朝刊のうち、1面の掲載記事と総合面の緊急事態宣言および「一律10万円支給」方針に関する主な記事の見出し、関連する社説・論説の見出しを書きとめておきます。

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【17日付朝刊】=緊急事態宣言11日目・拡大2日目
▼朝日新聞
1面
トップ「緊急事態宣言 全国に拡大/GW 地方への移動抑制へ/13都道府県『特定警戒』」
「国民1人10万円給付へ/補正予算案 所得制限なし」
2面
時時刻刻「緊急事態 9日後の急転」「『経済に打撃』政府内は当初否定的」「地方で感染増加傾向・医療体制の弱い地域も」
3面
「世論の不満 折れた首相/10万円支給へ 与党にてんかん迫られ」
「布マスク2枚 きょうから配布/まず東京、各地の見通しは示せず」

▼毎日新聞
1面
トップ「全国に緊急事態宣言/感染増続き拡大/新型コロナ 来月6日まで/大型連休警戒」/「感染1万人超す」
「1人10万円一律給付へ/異例の補正組み替え 政府方針転換」
2面
焦点「対象拡大『政治判断』」「補正組み替えの『大義』」「地方へ流出 医療逼迫」
3面
クローズアップ「公明強硬『1強』揺らぐ」「『限定30万円』不評」「党内に連立離脱論も」「必要額3倍 財源課題」
社説「全国に緊急事態宣言 首相は協力を得る説明を」/「1人『10万円』支給へ 迷走の末の遅すぎた決断」

▼読売新聞
1面
トップ「緊急事態宣言 全国拡大/5月6日まで 首相発令/13都道府県『特定警戒』/新型コロナ」/解説「情報発信 きめ細かく」
「10万円 一律給付へ/予算 異例組み替え 『30万』取り下げ」
2面
「公明強硬 政府押し切る/自民内からも同調 一律10万円」
3面
スキャナー「GW感染拡大 阻止/人の移動 最小限に/地方で蔓延 歯止めなし」
社説「緊急事態全国へ 感染の波及を食い止めたい スピード感持って経済支援を」/医療崩壊を回避せよ/政府と自治体は連携を/一律10万円はいつ配る

▼日経新聞
1面
トップ「全国に緊急事態宣言/13都道府県『特定警戒』指定/首相『GW、移動最小に』/期間、来月6日まで」
「米、失業保険申請524万件/新型コロナ 4週間で2200万件超す」
「国民一律10万円給付へ/政府・与党『減収世帯30万円』撤回/財源12兆円に」
3面
「『全国に網』自治体対策急ぐ/緊急事態宣言を拡大/休業要請には温度差/経済活動さらに収縮も」
「政治はスピードと責任を」吉野直也・政治部長
社説「ドタバタ劇を演じている場合ではない」「地方への感染拡大を防ごう」

▼産経新聞
1面
トップ「緊急事態 全国に拡大/感染歯止め 一斉対策/新型コロナ、来月6日まで/GWの移動最小化」/「国内感染1万人 客船含め」
「1人10万円 所得制限なし/補正組み替え『30万円』取り下げ」
2面
「募る不満 公明決断迫る/補正組み替え 一律10万円給付/二階氏同調で『実現のチャンス』」「『朝令暮改』野党一斉に批判」/「財源、追加8兆円必要」
3面
「帰省・旅行 移動を警戒/接触8割削減 引き締め/全国に緊急事態宣言」「自粛・休業拡大 金融危機に波及懸念」「休校措置 地域ごと判断/文科省『変わらず』」
社説(「主張」)「10万円給付 不安解消へ遅滞許されぬ」

▼東京新聞
1面
トップ「コロナ病床数 政府過大公表/2.8万→本紙調査1.1万床/空きベッド数=対応病床扱い 自治体困惑」
「全国に緊急事態宣言/首相発令 5月6日まで/GW 移動抑制狙う」
「全国民に一律10万円/『30万円』撤回し補正計上へ」
2面
核心「政府、世論批判受け一転/コロナ対策 10万円給付/異例の予算案組み替え」
Q&A「迅速化狙い 時期は見通せず」
3面
「GW前 地方まん延懸念/政府『緊急事態』拡大に転換/政治判断を優先」「野党『政権の責任重大』/独自の予算案組み替えへ」
「『終息に重要』茨城・群馬知事評価 一律扱い疑問も」
社説「全国に緊急事態宣言 命守る対策を広く速く」/自治体の危機感が先行/外出抑制を徹底したい/医療の崩壊防ぐ知恵を

 

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 【18日付朝刊】=緊急事態宣言12日目・拡大3日目
▼朝日新聞
1面
トップ「重症者ら対応 診療報酬倍増/10万円 郵送・オンライン手続き/首相会見 混乱陳謝『私の責任』 新型コロナ」/視点「言葉 人々に届いているか」星野典久・首相官邸取材キャップ
「中国GDP 初のマイナス/1~3月 6.8%減 コロナ影響」
2面
時時刻刻「首相判断 方針次々覆す/緊急事態 全国に拡大・一律10万円」「独断で休校『成功体験』」「危機管理 菅氏蚊帳の外/政権支える力学変容か」
3面
「10万円給付 自己申告制の方向/総務相『30万円より早い』・住所ない人の対応は」「国債頼み 長期戦懸念」
「知事『地域で深刻さ違う』/緊急事態宣言 休業要請、異なる対応」
「5月6日で解除 高いハードル/緊急事態 一部のみ解除に課題も」
社説「対コロナ 政権の転換 いのち最優先 たが締め直せ」/自治体の判断支えよ/現金給付は迅速に/政治的な思惑抜きで

▼毎日新聞
1面
トップ「現金給付 総額14兆円/首相、一律10万円表明 コロナ対策/『混乱、私の責任』」/「抗体検査 近く着手/厚労省、感染実態把握へ」
「中国GDP6.8%減/初のマイナス 党、財政・金融で支援 1~3月期」
2面
焦点「首相、釈明に躍起/緊急事態宣言 全国拡大/『特定警戒』法記載なく」「消費・雇用に大打撃も」

▼読売新聞
1面
トップ「10万円申請 郵送・ネットで/首相表明 診療報酬を倍増 新型コロナ/給付金『混乱おわび』」/プロ野球 交流戦中止 開幕6月以降
「感染治療か 高度医療か」新型コロナ 医療現場から 中
「中国GDP6.8%減/コロナ直撃 初のマイナス 1~3月期」
3面
スキャナー「休業要請 温度差 緊急事態宣言拡大」「都道府県 異なる事情」「休校判断は設置者に 指針3回目改定」

▼日経新聞
1面
トップ「外出抑制 企業動く/ゼネコン 工事中断 全国で 緊急事態拡大/中小企業支援カギ」/「コロナ治療 診療報酬2倍/重症患者の受け入れ促す」/「郵送・オンラインで/首相、10万円給付巡り」
「コロナと世界『危機の記憶、経済の重荷』三菱UFJフィナンシャル・グループ会長 平野信行氏」
2面
「感染状況で措置に地域差/対処方針改定で新ルール」
3面
「休業要請 新たに6道府県/『特定警戒』の茨城・京都など/協力業者に支援金/医療崩壊を警戒」

▼産経新聞
1面
トップ「10万円給付 来月開始へ/首相『申請は郵送・ネット』/物資不足『中国依存に問題』」/「GW移動自粛 要請/知事会、国に休業補償求める」/「政策スピード不足 官僚の壁/一律給付に財務省反対」
「都内感染 最多201人/検査増影響か 経路不明は134人」
「中国 初のマイナス成長/1~3月期、GDP6.8%減」
3面
「緊急事態 地方に温度差/休業補償『財政力なく困難』 全国知事会」「『コロナ疎開』阻止 地方医療守る」

▼東京新聞
1面
トップ「糖尿病患者 行き場なく/感染者以外制限『命守るため』」
「10万円給付 時期示さず/首相『できるだけ早く』/麻生氏『挙手方式に』」
「都内新規感染 初の200人超え」
2面
「政治判断 続く困惑/科学データ重視の方針後回し/対象地域拡大 首相会見」
「首相陳謝『給付で混乱』/補正編成『さらに1週間』」
3面
核心「『早く救済』どこに/経済対策 目的とズレ 補正組み替え」「『GW帰省自粛を』全国知事会 国に呼び掛け要求」「休校など 地域ごとに判断(Q&A)」

安倍内閣の支持率低下~新型コロナ緊急事態宣言 最初の週末

 新型コロナウイルス対策として4月7日に新型インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発せられてから最初の週末、4月11、12日前後に実施されたマスメディア各社の世論調査では、安倍晋三内閣の支持率はそろって低下しました。個別の設問を見ると、緊急事態宣言の発出自体は評価を受けているものの、そのタイミングについては「遅すぎる」との回答が圧倒しており、例えば産経新聞・FNN調査では82.9%、読売新聞調査81%、共同通信調査80.4%となっています。こうした点が支持率の低下につながっているのではないかと感じます。
 それでも支持率の水準自体はおおむね40%を維持しています。以前の記事でも少し触れましたが、ニュースに接するツールがスマートフォンだけという層が増えていることは留意が必要だと思います。深い記事に触れないままに「安倍さん、頑張っているようだから」と「支持」を選ぶ層は確実に存在しており、安倍政権の支持率を底支えしているのではないか―。仮説ですが、そんなことを考えています。

 以下に、目に付いた調査結果のうち、内閣支持率を書きとめておきます。カッコ内は前回調査比、Pはポイントです。

▼共同通信 4月10~13日実施 ※前回は3月26~28日
 支持  40.4%(5.1P減)
 不支持 43.0%(4.2P増)

▼読売新聞 4月11~12日実施 ※前回は3月20~22日
 支持  42%(6P減)
 不支持 47%(7P増)

▼産経新聞・FNN 4月11、12日実施 ※前回は3月21、22日
 支持  39.0%(2.3P減)
 不支持 44.3%(3.2P増)

▼NHK 4月10~12日実施 ※前回は3月6~8日
 支持  39%(4P減)
 不支持 38%(3P減)
 わからない・無回答 23%(6P増)

 NHK調査のみ、支持率と不支持率の両方が減っています。あまり見たことがないパターンです。「わからない・無回答」が6ポイントも増えているのも目を引きます。

「市民の良識、未来を左右」科学史家 村上陽一郎さん(日経新聞)~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録2:4月11~14日付

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言は1週間が過ぎ、4月14日で8日目になりました。以前の投稿に続いて、4月11日~14日の東京発行新聞各紙の1面の記録です。
 この間の記事で印象に残るものの一つは、日経新聞が朝刊1面で連載しているインタビュー企画「コロナと世界」の11日付「『市民の良識、未来を左右』科学史家 村上陽一郎氏」です。村上さんの著書「ペスト大流行」(岩波新書)は1983年刊行ながら、今またよく読まれているようです。
 記事の中で村上さんは、感染拡大防止のためには、中国のような強権的な政権や独裁政治の方が果断な措置を取りやすいのは確かだとし「危機を前にして人権を尊重する社会は脆弱ともいえるが、国家主義や全体主義の台頭は許してはいけない」と説きます。そして「一部の権威ある人々がすべてを決定した時代と異なり、今は社会にとって何が合理的なのかを最終的に判断するのは市民だ。個人の良識や常識、健全な思考に私たちの未来はかかっていると再認識すべきだ」と指摘しています。「ネット上には真偽の不確かな情報があふれており専門家と人々をつなぐ科学ジャーナリズムや科学コミュニケーターの役割がより重要になる」とも。重要なのは、危機に際して社会に正確な情報が提供されること、その上で市民が自分で考えることを放棄しないこと、公権力と為政者に異議を申し立てる権利が担保されることだと、受け止めました。
 歴史の教訓を今、社会で共有し生かすためには、歴史家の社会的発言が有用であり、不可欠だと感じます。

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  以下は、11~14日の東京発行新聞各紙の1面トップ記事と準トップ記事の見出しの記録です。

【4月14日(火)付】=緊急事態宣言8日目
▼朝刊
朝日新聞
「ソフトバンクG 1.3兆円赤字/コロナ影響 投資先の価値 半減」
「米国第一 感染拡大防げず/中国敵視 保健分野は冷遇」コロナ危機と世界 リーダーの不在(上)
毎日新聞
「中野の病院92人確認/全国各地 院内感染疑い」
「ソフトバンク7500億円赤字/3月期予想 ファンド損失計上」
読売新聞
「全7都府県が休業要請/緊急事態宣言1週間」
「ソフトバンクG7500億円赤字/3月期見通し 投資先株価 急落」
日経新聞
「『3カ月で事業不安』3割強/『緊急事態』の長期化警戒」
「コロナと世界『争いの時代 協調こそ解』生物地理学者 ジャレド・ダイアモンド氏」
産経新聞
「終電繰り上げ検討/政府 首都圏対象 来週めど」
「出勤7割減『これ以上は…』/要請後初の平日 一定成果も中小には死活問題」
東京新聞
「PCR検査限界/電話相談 倍以上に・指定外来 空きなく」※都内感染最多の世田谷区
「給付金 共働きに不公平/世帯主で判断 実情合わず」

▼夕刊
朝日新聞
「避けたいコロナ離婚/『在宅勤務で口げんかばかり』『外出せず話題ない。苦痛』」
「熊本地震4年 再建半ば/県庁で追悼式」
毎日新聞
「ウェブ会議 変革の芽/コロナで機材売り切れ続出」
(ニュース・フラッシュ「コロナ致死性、新型インフルの10倍」など5本)
読売新聞
「3府県 休業要請初日/千葉など 飲食店 対応割れる」
「年金法案 審議入り/パート適用拡大が柱」
日経新聞
「外国人入国 9割超減/3月 規制で中韓落ち込み」
「回復後 免疫つくか不明/WHO、再陽性相次ぎ見解」
東京新聞
「休館図書館の試み/休校学生に無料で宅配 職員が自宅に資料届け」
「30万円給付、対象拡大検討/政府 世帯主以外の減収対応」

【4月13日(月)付】=緊急事態宣言7日目
▼朝刊
(新聞休刊日のため発行なし)

▼夕刊
朝日新聞
「なじみの店救う ネットで支援金/外出自粛で客激減 お礼にカニ飯・食事券」
(NEWSダイジェスト「コロナ国内感染7千人超える」など3本)
毎日新聞
「手話通訳 表情も情報/マスクなし 気遣う声相次ぐ」
「医療現場に『遠隔サービス』を/9県12市区で導入 東京も前向き検討」
読売新聞
「原油970万バレル減産合意/世界生産の1割 OPEC・露など」
「封鎖解除『終息見えてきた』/奔走した市民ボランティア」コロナ最前線@武漢
日経新聞
「『出勤7割減』企業が知恵/デサント 原則在宅 出社は申請 三菱マテ 本社閉め小規模拠点」
「日量970万バレル減産 最終合意/OPECプラス 世界供給の1割」
東京新聞
「都内2000人超 7日で倍増/中野の病院87人感染」
「原油 世界生産1割減/米・ロ・サウジ合意」

【4月12日(日)付】=緊急事態宣言6日目
▼朝刊
朝日新聞
「『出勤者7割減』要請へ/首相 7都府県の全企業に」
「CIAに中国スパイ 十数人が命落とした」争覇 米中情報戦
毎日新聞
「繁華街利用 全国で自粛/接客伴う飲食店 政府要請」
「台風半年 仮住まい1万人/19号 関連死7万人」
読売新聞
「首相『出勤7割削減』要請/7都府県 全事業者に」
「都内感染新たに197人/4日連続最多」
日経新聞
「大企業にも資金難懸念/3割減収、半年で4社に1社枯渇」
「コロナと世界『市場機能維持、新次元で』前日銀総裁 白川方明氏」
産経新聞
「米艦、中国側を航行/台湾海峡 中間線、異例の牽制」
「世界の死者 10万人超/新型コロナ パンデミック表明1カ月」
東京新聞
「首相『出勤者7割減を』/接客店利用自粛は全国に」
「都内幹線 最多197人」

【4月11日(土)付】=緊急事態宣言5日目
▼朝刊
朝日新聞
「都、きょうから休業要請/図書館・体育館・パチンコ・バー・カラオケ」
「30万円給付 基準統一/コロナ対応 国、批判受け見直し」
毎日新聞
「都、休業協力最大100万円/対象業種 国と同意」
「東京189人増 3日連続最多/感染者 全国計6000人超」
読売新聞
「都、幅広く休業要請/新型コロナ 協力店に50万円」
「30万円支給 基準一律/単身『月収10万円以下』」
日経新聞
「人工呼吸器 参入に壁/日本、緊急事態でも規制変更なし」
「コロナと世界『市民の良識、未来を左右』科学史家 村上陽一郎氏」
産経新聞
「都 6業種に休業要請/居酒屋20時まで パチンコは『NO』」
「都内189人 3日連続最多/新型コロナ 国内感染6000人超す」
東京新聞
「都、6分野へ休業要請/中小協力店 最大100万円支給」
「大林宣彦監督死去/82歳『時をかける少女』」

▼夕刊
朝日新聞
「映像の魔術師 時をかけた/戦争の原体験『映画は未来を平和にできる』」※大林監督死去
「全国で自粛要請へ/接客伴う飲食店利用」
毎日新聞
「遠隔でも 児童に笑顔を」読むPHOTO写真 ※学童保育
「大林宣彦さん死去/『転校生』『時をかける少女』」
読売新聞
「作業除外でも…困惑/理髪店 客の来店分散」
「世界死者10万人突破/8日間で倍増 感染170万人に迫る」
日経新聞
「自粛でも…『行きつけ』応援/アプリで飲食店に先払い テークアウトで積極利用」
「濃厚接触 スマホで通知/アップル・グーグル開発へ」
東京新聞
「感染抑制 厳戒の週末/東京・神奈川 休業要請始まる」
「世界死者10万人超す/奥州7割 米は1日で2000人増」

検察庁法改正案に弁護士会が次々に反対声明~内閣による検察人事の介入懸念

 東京高検検事長の定年延長問題に加え、検察官の定年を一律65歳とする検察庁法の改正案に対しても、野党のみならず法曹界の一角を占める日弁連(日本弁護士連合会)からも反対の声が上がっていることは、このブログでも紹介してきました。問題になっているのは、内閣または法務大臣が必要と認めれば、特定の検察官を役職定年や定年を超えて特定の官職で勤務させることができるとする部分です。内閣による検察人事の介入が容易に可能になると懸念されるからです。その改正案が、新型コロナウイルス対策で緊急事態宣言が発出されている中でありながら、近く衆議院で審議入りすることが懸念されています。
 日弁連のほか各地の弁護士会も反対の声明を公表しています。東京法律事務所のブログにリンクが載っていますので紹介します(検事長の定年延長への反対声明も含む)。「ここまで各会の反対声明が出てくるのも珍しい」とのことですが、それだけ危険だということなのだと思います。

※「火事場泥棒を許さない 検察人事への介入を止めよう」=2020年4月11日
 http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1077270412.html

blog.livedoor.jp

緊急事態宣言の日々~在京紙報道の記録1:4月9~10日付

 新型コロナウイルス対策として、改正新インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発せられ、わたしたちの社会は大きく変わりつつあるようです。その変化の様相を記録に残すわたしなりの試みとして、東京発行新聞各紙の1面トップ記事と準トップ記事の見出しを書きとめていくことにしました。こつこつと積み上げていくことで、後日、見えてくるものがあるのではないかと思います。
 対象は朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞の6紙(産経は朝刊のみ)。原則として、主見出しと次に大きな脇見出しの2本にします。緊急事態宣言3日目の4月9日付朝刊分から始めますが、数日~1週間おきぐらいを目安にアップします。
 紙の新聞ならではの記録として後世、何がしかの役に立つことを期待したいと思います。

【4月9日付】=緊急事態宣言3日目
▼朝刊
朝日新聞
「『休業の損失。国が補償を』/コロナ対応 知事会が提言へ」
「東京駅周辺 人出38%減/民間会社調査 7日と3月中旬を比較」
毎日新聞
「手探り コロナ緊急事態/初日の銀座『人出1割以下』」
「緊急宣言『評価』72%/本社緊急世論調査 『遅すぎる』70%」
読売新聞
「休業要請 調整難航/国と都 業種・補償 隔たり」
「サンダース氏 撤退/民主 バイデン氏指名確実」
日経新聞
「人出減少 なお限定的/外食7000店 営業自粛」
コロナと世界「テクノロジーが権力に」仏経済学者ジャック・アタリ氏
産経新聞
「休業要請 割れる判断/都は積極、6府県静観」
「封鎖解除の武漢『第2波』警戒/2か月半ぶり 無症状者は2万人か」
東京新聞
「保育園休園 戸惑い/都内 分かれる判断」
「政府『休業要請延期を』/2週間 知事会の補償要求 拒絶」

▼夕刊
朝日新聞
「追い込まれるホームレス/同じマスク1カ月、炊き出し中止、ネットカフェ休業」
※ダイジェスト「休業要請範囲 政府・都が最終調整」など3本
毎日新聞
「『NY まるで戦争』/高熱1週間超 検査受けられず」
「民主バイデン氏指名へ/米大統領選 サンダース氏撤退」
読売新聞
「高級食材を学校給食に/コロナで不振、和牛やメロン」
「休業要請 理髪店を除外/緊急事態 都検討、百貨店も」
日経新聞
「コロナ危機下『結束を』/米民主 バイデン氏指名へ」
「休業要請 理髪店など除外/経財相、東京都と調整」
東京新聞
「都、休業要請対象外に/百貨店 理美容店 ホームセンター」
「自宅・ホテル療養にも給付金/大手生保4社がコロナ入院特例」

【4月10日】=緊急事態宣言4日目
▼朝刊
朝日新聞
「休業要請先 国と都合意/コロナ対策 応じた業者に協力金」
「トランプ氏対バイデン氏/民主・サンダース氏撤退」
毎日新聞
「百貨店・理髪店は対象外/新型コロナ 休業要請で東京」
「東京 新規感染181人 最多」
読売新聞
「『大恐慌以来の不況』予測/IMF専務理事 新型コロナ打撃」
「飲食店 午後8時まで/休業要請業種 都きょう発表」
日経新聞
「中小支援 時間との闘い/スイス 官民で即日融資 米 4日で4兆円」
コロナと世界「脅威は続く 科学は途上」京都大特別教授 本庶佑氏
産経新聞
「百貨店・理髪店 除外へ/都、休業要請で調整」
「経済『世界恐慌以来で最悪』/IMFトップ コロナ、新興国に打撃」
東京新聞
「都、休業要請きょう公表/ネットカフェやパチンコなど対象」
「30万円給付『3密』の恐れ/中小融資窓口すでに殺到」

▼夕刊
朝日新聞
「都 休業対象を明示/パチンコ・ネットカフェ・カラオケ・ゲーセン」
「愛知『緊急事態』県独自に宣言/京都は指定要請」
毎日新聞
「原油大幅減産で合意/通信社報道 日産1000万バレル削減」
「国会審議再開 間隔を空け」
読売新聞
「休業店に協力金50万円/都独自 総額1000億円規模」
「原油1000万バレル 減産/暫定合意」
日経新聞
「日産1000万バレル減産 合意/OPEC・ロシア 過去最大級」
「ユーロ圏、経済対策64兆円/財務相合意 吸湿基金を」
東京新聞
「笑顔のため 修復一歩ずつ/台風・コロナ…千葉の旅館 苦境」
「現金給付基準 全国一律」