広島再選挙は候補一本化と争点の明確化で野党勝利~自民全敗 直後に出てきたワクチン大規模接種計画

 4月25日に投開票された参院広島選挙区の再選挙と参院長野選挙区補欠選挙、衆院北海道2区補選の3選挙で自民党は、候補者擁立を見送った北海道2区補選を含めて全敗でした。菅義偉首相にとっては初めての国政選挙だっただけに、26日付の東京発行新聞各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京の6紙)はいずれも1面トップの扱い。「菅政権に大打撃」(毎日)など、「打撃」の見出しが目を引きました。
 わたしが注視していたのは、大規模な買収事件で河井案里議員が当選無効となった広島の再選挙です。野党が一本化した候補が自民党公認、公明党推薦の候補との事実上の一騎打ちに勝ちました。票数は37万860票と33万6924票の激戦。投票率は33.61%でした。

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 ▽野党共闘と争点の明確化
 もともと広島は自民党が強く、この再選挙でも自民党は勝つつもりで3選挙のうち一つは勝ちを確保できると見込んでいたとも報じられています。一般的に、投票率が低ければ組織力に優る自民、公明の候補が有利ともされます。しかし、結果は野党共闘の勝利でした。朝日新聞の投票所出口調査結果の分析によれば、広島では投票した有権者の関心は新型コロナウイルス対策よりも「政治とカネ」の方が高く、しかもいちばんの関心に「政治とカネ」を挙げた人のうち76%が野党統一候補に投票していたとのことです。野党が結集して候補を一本化し、争点を明確にすれば、自民党の地盤地域でも勝てることが立証されたのではないかと感じます。遅くとも今年秋には任期満了で必ず実施される次期衆院選を前に、広島の経験は大きな意味があるように思います。与党にとっても、「政治とカネ」の問題、安倍晋三前首相の「桜を見る会」の問題などをこのままにしておいていいのかが問われるはずです。
 広島の再選挙をめぐるもう一つのわたしの関心は、河井陣営による買収事件の「被買収」の側の地元政治家らのことです。このブログの以前の記事でも触れましたが、現金を受け取った地元議員や首長は起訴されていません。不起訴にもなっていないので、有権者が検察審査会に申し立てることもできません。買収は金を出す側と受け取る側がそろって成立します。片方が罪に問われないのは、一般の市民感覚から言えば納得しがたいものです。

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 ▽検察の不作為が民主主義を危うくするおそれはあった

 「被買収」の議員らは公民権停止にならず、今回の再選挙では自民党候補を大っぴらに応援できる立場でした。これはやはり釈然としません。仮に、自民党候補が勝利していたら、検察の不作為により選挙の公正さがゆがめられた結果であるとの批判を招いていたかもしれません。
 東京発行の新聞各紙で、朝日、毎日、読売3紙は、これらの「被買収」議員らが今回は、有権者の批判を浴びるために表立って活動するわけにいかず動きを封じられたと、ごく簡単に報じています。それでも読売新聞によれば、電話で投票依頼を行っていた議員はいたようです。やはり、検察の不作為が民主主義を危うくするおそれはあったと言うべきです。マスメディアは、公訴権を独占し、起訴便宜主義で起訴、不起訴の広範な裁量を持つ検察の権限行使もまたジャーナリズムの監視対象であることをあらためて確認するべきだと思います。

 この3選挙の完敗に対して、菅首相からは「ただすべきはただす」といった程度のコメントしか聞かれません。「政治とカネ」が問われた広島の選挙では、自身が官房長官として河井案里氏を直接応援していた立場なのに、何が敗因なのか理解できていないのではとも感じます。

 ▽ワクチン大規模接種、混乱招かないか
 少なからず驚いたのは、選挙直後のタイミングで27日、新型コロナウイルス対策として、ワクチンの大規模接種を国が直接、東京で行うことを表明したことです。報道によると、場所は東京・大手町に国が所有する合同庁舎。自衛隊が運営し、自衛隊の医官、看護官が接種に当たります。東京、千葉、埼玉、神奈川の65歳以上の高齢者が中心で、1日に1万人に接種。期間は5月24日から3カ月間、つまり東京五輪閉幕後まで、とのことです。
 ワクチンの接種はそれ自体、極めて重要なテーマです。しかし、選挙で完敗した直後に、その要因についてろくに認識も示さないまま、スケジュール的に五輪とリンクするような、しかも自衛隊が「国民を守る」組織であることを強調しながらの唐突な大規模接種計画を公表したことは、やはり政権への批判をかわすのが最大の狙いではないかと感じます。
 この大規模接種計画には、東京の大手町というビル街に広域から高齢者を毎日1万人集めることが妥当なのか、接種計画を苦労して策定している自治体との調整はスムーズに進むのか、かえって混乱を招くことにならないかなど、素人考えでも疑問が次々に浮かんできます。コロナ対策がそれだけ喫緊で重要の課題であるなら、まずは五輪の7月開催を見直し、コロナ対策に全力を挙げるべきではないかと思いますし、民意にかなったことでもあると思います。

【追記】誤記を2カ所訂正しました。×「5月24日から3週間」→○「5月24日から3カ月間」/×「東京五輪の開幕まで」→○「東京五輪閉幕まで」