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東京五輪「もうやめることすらできない」 山口香さんインタビュー(共同通信)

 東京五輪・パラリンピック大会の開催の是非を巡って、女子柔道の元世界チャンピオンで現在JOC(日本オリンピック委員会)の理事を務める山口香さんが、共同通信のインタビューに「国民の多くが疑義を感じているのに、国際オリンピック委員会(IOC)も日本政府も大会組織委員会も声を聞く気がない。平和構築の基本は対話であり、それを拒否する五輪に意義はない」と述べています。
※共同通信「五輪開催『意義ない』と山口香氏/JOC理事、可否判断に憂慮」=2021年5月19日
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 さらに開催可否の判断について「もう時機を逸した。やめることすらできない状況に追い込まれている」と指摘しています。開催中止にはもろもろの手続きが伴いますが、もうその時間、余裕もなくなったということのようです。
 リンク先の共同通信の記事は、デジタルの無料域向けですが、長文の記事が各地の地方紙の20日付紙面に掲載されていると思います。
 現在、マスメディア各社の世論調査でも「中止」を求める意見が多数派で、「延期」も含めると、今夏の開催は「反対」が圧倒しています。インタビューで山口さんは「応援したかった人が大勢いたにもかかわらず、あえて敵をつくるやり方をしてきたことが残念だ」とも述べています。
 IOCも日本政府も組織委も、新型コロナウイルスの感染予防対策を万全にすることを強調していますが、東京に暮らす住民の一人として、懸念はそればかりではありません。大会の開催が、ただでさえひっ迫が続いている地域の医療態勢を抑圧し、ふだんなら何でもないようなことが命の危険に直結するリスクを住民が負わざるを得なくなることを危惧します。
 五輪開催期間の7月下旬~8月上旬は酷暑も懸念される時期で、コロナ禍以前から不安の声はありました。住民はいよいよ「地獄の夏」を耐え忍ぶ覚悟をしなければならないのでしょうか。

 第2次世界大戦の末期、1945年11月決行が予定されていた連合軍の南九州進攻「オリンピック作戦」は、同年8月の日本の無条件降伏によって実施されることなく済みました。多くの命が救われたところから日本の復興は始まりました。それから76年後のオリンピックを、後世の歴史家は何と呼び、どう評価するのでしょうか。
※参考過去記事

news-worker.hatenablog.com