ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新聞・マスメディア

放送法「政治的公平」の新解釈は、特定番組を念頭に置いた「表現の自由」への攻撃~総務省行政文書が「捏造」なら責任を問われるのは高市元総務相自身

放送の表現の自由の根幹を巡る総務省の内部文書が明らかになりました。 2015年5月12日の参議院総務委員会で、当時の高市早苗総務相が自民党議員の質問に答える形で、放送法が定める放送の政治的公平性について、「一つの番組でも、極端な場合は政治的…

反戦の声を上げること、反戦の声を報じることの意味~ロシアのウクライナ侵攻1年、在京紙の報道の記録

ロシアがウクライナに侵攻してから2月24日で1年となりました。戦火はやまず、ウクライナ市民の犠牲も、両軍兵士の犠牲も増え続けています。どうしたら、この戦争を終わらせることができるのか。日本の国家として、あるいは市民として、何かできることは…

財源だけではない、岸田軍拡そのものに懐疑と否定的見方が広がっている~1月の世論調査の結果から

一つ前の記事の続きになります。岸田文雄政権が進めようとしている軍拡=大幅な軍事費増に対して、現在、民意がどう受け止めているかを、1月にマスメディア各社が実施した世論調査の結果から読み解いてみました。結論から言えば、軍拡を支持する人の割合も…

「地域」に立脚した確固とした視点~ブロック紙・地方紙39紙の年頭の社説、論説を読む

非常勤講師を務める大学で先日、今年最初の授業がありました。手元にあった東京発行の新聞各紙の元日付け紙面を教室に持ち込み、それぞれの特徴などを解説しました。ロシアのウクライナ侵攻が続く中での新年であり、各紙の紙面を通じたキーワードが「戦争」…

「戦争」「平和」「民主主義」~在京各紙の元日付紙面

近年、東京発行の新聞各紙の元日付朝刊1面トップには、その1年を展望する大きなテーマを取り上げた企画記事の初回を据える傾向が定着しています。ことしも各紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京6紙)のうち、読売以外の5紙は企画記事でした。ロシアによ…

「ニュース離れ」と組織ジャーナリズムの持続可能性

新しい年、2023年になりました。 昨年、英国のロイタージャーナリズム研究所が公表した「デジタルニュースリポート2022」が、ニュースそのものに触れることを意図的に避けようとする人たちが世界的に増加しているとの分析を示し、メディア関係者の間…

決め方も金の使い道としても疑問の「敵基地攻撃能力」保有~「我々は攻撃されかかっている」ゲーリングが喝破していたロジック

岸田文雄政権は12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保関連3文書の改定を閣議決定しました。敵基地攻撃能力を「反撃能力」と呼び方を変えて保有を明記し、軍事(防衛)関連予算を2027年度に対国内総生産(GDP)比…

戦争の教訓の継承は、今こそ大きな意味がある~破局を“予言”していた桐生悠々、井上成美

今年春から大学で「文章作法」の非常勤講師を務めていることは、以前の記事に書きました。授業では日々の新聞報道の比較、解説も行っています。先日の授業では、12月8日の太平洋戦争開戦81年の報道を取り上げました。 日本の新聞は戦前の統制で、いくつ…

「反撃能力」と呼んでも攻撃的な軍事力の保有に変わりはない~自公合意、在京紙の報道の記録

自民、公明両党が12月2日、「敵基地攻撃能力」を日本が保有することを認めることで合意しました。敵国のミサイル発射拠点などを攻撃する能力のことです。政府、与党は、国際法に反する先制攻撃ではなく、専守防衛の基本方針に変わりはないと強調している…

新聞の大きさを生かす~中日新聞・東京新聞「『ネコ電車』に朝刊が包まれた!」

ことし春から、勤務先からの派遣の形で、首都圏の大学で「文章作法」の授業の非常勤講師を務めています。文章の書き方の指導です。受講生はメディアやコミュニケーションに関心がある学生たちなので、授業では毎回、東京発行の新聞各紙を教材に、日々のニュ…

那覇市長選の本土メディアの報道に危惧~自公系勝利は辺野古移設容認ではない

沖縄県の県庁所在地、那覇市の市長選が10月23日に行われ、国政与党の自民、公明両党が推薦した前副市長の知念覚氏が、玉城デニー知事が支持する元県議の翁長雄治氏を破って初当選しました。この選挙結果を伝えた日本本土のマスメディアの報道ぶりに危惧…

社会の分断が可視化された日~安倍元首相「国葬」 在京紙の報道の記録

安倍晋三元首相の国葬が9月27日、実施されました。このブログでも詳細に記録してきましたが、マスメディア各社の世論調査では、当初から賛否は分かれていました。時間がたつにつれ否定的な意見が増え、9月の調査では反対が6割に達しました。岸田文雄内…

沖縄の苛烈な戦後史を知る~「ドキュメント〈アメリカ世〉の沖縄」(宮城修、岩波新書)

ことし、2022年は、1972年5月に沖縄の施政権が米国から日本に返還されて50年の節目の年です。現在、日本にある米軍専用施設の70%が沖縄に集中し、米軍普天間飛行場の移設問題では、名護市辺野古沿岸部の埋め立てと新基地建設を巡って、沖縄県…

国葬「国論を二分」の表現は「印象操作」のおそれ

いつも参考にしているツイッター・アカウントの「三春充希(はる)⭐未来社会プロジェクト」さん(@miraisyakai)が、安倍元首相の国葬について、世論調査の集計をもとに「国論二分といえたのは7月中の一時期だけで、その後、世論は一方的に反対へと傾いていっ…

日本政府に重なるキャラウェイ「沖縄の自治は神話」発言~玉城知事大差で再選の意味 ※改題しました

沖縄の日本復帰から50年のことし、沖縄県知事選の投開票が9月11日に行われ、玉城デニー氏が再選されました。この選挙結果が持つ意味は、玉城氏が訴えた米軍普天間飛行場の辺野古移設反対が、今も変わらない沖縄の民意として示されたことにとどまらない…

地方紙は国葬へ批判が圧倒、撤回求める社説、論説も

安倍晋三元首相の国葬を巡り、閣議決定による実施は適切だなどと岸田文雄首相が強調した9月8日の国会の閉会中審査について、地方紙も9日付の社説、論説で一斉に取り上げています。ネット上で目にした限りでは、批判的、懐疑的な論調が圧倒しています。 岸…

だれであれ「国葬」強行は民主主義の危機~岸田首相の国会説明 「法治逸脱」あらためて

安倍晋三元首相の国葬を巡る国会の閉会中審査が9月8日、衆参両院の議院運営委員会で行われ、岸田文雄首相が出席して質疑に応じました。国葬を行う理由や法的な根拠について、何も新しい発言がなかったのは予想通りです。到底納得できない、民意の多数の理…

何のための「国葬」か、もはや“迷走”~地方紙から続く批判、疑問

岸田文雄首相は8月31日の記者会見で、旧統一教会と自民党の国会議員との関係や安倍晋三元首相の国葬を巡って「政権の初心に帰って丁寧な説明に全力を尽くしてまいります」と話しましたが、旧統一教会の調査にどこまで本気なのかは疑問で、国葬の理由も理…

追い詰められる岸田首相~「国葬」基準を否定、法治ではなく人治ではないか

岸田文雄首相は追い詰められている、と感じます。8月31日に記者会見し、安倍晋三元首相の国葬について、国会で自らが説明すると表明しました。また、自民党が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を絶つこと、党所属の国会議員との関係を点検して…

「国葬」が死者の政治利用であることが図らずも明確に~弔意表明を求める閣議了解見送り

岸田文雄内閣は8月26日の閣議で、9月27日に行う安倍晋三元首相の国葬の費用として、2億4940万円を支出することを決めました。国会の議決を必要としない予備費からの支出となります。ただし、この金額は会場の日本武道館の借り上げ料や会場の設営…

五輪汚職捜査に「『安倍政治の時代』の検証」の意味~新聞各社の公式スポンサー入りと金権構造

かねて捜査の動きが報じられていた昨年の東京五輪を巡る汚職事件が8月17日、大きく展開しました。公式スポンサーだった紳士服大手の「AOKIホールディングス」側から、スポンサー選定などをめぐり計5100万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特…

岸田首相あいさつ「ほぼコピペ」、長崎の8割は広島と同じ~改造内閣の第一の課題は「防衛力強化」=「軍拡」

8月9日は長崎の原爆の日でした。平和祈念式典での岸田文雄首相のあいさつは、6日の広島と同じく、核兵器禁止条約には触れませんでした。気になったのは、枢要な部分の表現が、広島でのあいさつと相当程度、一緒だったことです。「非核三原則を堅持しつつ…

「反対」が「賛成」上回る(JNN調査)、「評価」逆転(NHK調査)~ 国葬に民意の多数の支持はない ※追記:読売調査も「世論が二分」

先週末に実施された2件の世論調査の結果が報じられています。NHKが8月5~7日に実施した調査と、JNN(TBS系列)が8月6、7日に実施した調査です。2件の調査とも、安倍晋三元首相の国葬に対しては、否定的な回答が肯定的な回答を上回りました…

すれ違う「被爆地の思い」と「首相の言葉」~ロシアのウクライナ侵攻のさなかで迎えた広島原爆の日

77年前の1945年8月6日、広島市に原爆が投下されました。今年はその日を、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えました。ロシアのプーチン大統領は核兵器の保有を強調して国際社会を威圧しており、近年になく核兵器が実際に使われることが危惧さ…

「だれでも情報発信」の社会の「プロの責任」~秋葉原・無差別殺傷事件から14年

一つ前の記事の続きです。 2008年6月に東京・秋葉原の歩行者天国で起きた無差別殺傷事件は、インターネットの普及によって「だれでも情報発信」の時代が訪れていることを痛切に実感させられた出来事でもありました。現場に居合わせた人たちが、マスメデ…

安倍元首相の国葬、産経・FNN調査では賛否が拮抗~産経「主張」(社説)は自社調査結果に言及せず

安倍晋三元首相の国葬に対して、産経新聞とFNN(フジテレビ系)が合同で7月23、24日に実施した世論調査では賛否が割れたことが報じられています。産経新聞の紙面では26日付朝刊(東京本社)に掲載されています。政府が「国葬」とすることを決め、費…

国葬を「天皇の国事行為」と位置付けるしか、「閣議決定による実施」に適法性は見いだせない

【管理人注】この見出しは逆説です。国葬を天皇の国事行為に位置づけよ、という趣旨ではありません。わたしは国葬自体に反対です。 一つ前の記事の続きです。 安倍晋三元首相の国葬をめぐって、反対や異論の理由が「安倍元首相は功罪半ばする」「評価は定ま…

先例を破る「国葬」強行、手続きに疑義~「閣議決定」と政治利用、在京紙報道の記録

岸田文雄政権は7月22日の閣議で、安倍晋三元首相の国葬を9月27日に行うことを決めました。野党からは反対の声が上がっています。戦前は「国葬令」がありましたが、1947年限りで失効。以後は日本の法令に「国葬」は存在していません。吉田茂元首相…

民意は早急な改憲を求めていない~「安倍元首相の悲願」強調に危惧

7月10日の参院選後にマスメディアが実施した世論調査の結果が報じられています。憲法改正について、岸田文雄首相が前のめりの姿勢をあらわにしていますが、各調査の結果からは、民意は早急な改憲を求めていないことが明確に読み取れます。参院選で自民党…

国葬への疑義に加え、民意に向き合おうとしない岸田政権、自民党への危惧も~地方紙で続く疑念、懸念の社説掲載

安倍晋三元首相の国葬に対して、地方紙を中心に社説、論説の掲載が続いています。ネット上の各紙のサイトでわたしが目にする限り、7月17日付以降は強い疑念と懸念を示す内容ばかりです。岸田文雄首相が記者会見で「国葬」を明らかにしたのは14日。この…