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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

憲法

石原元都知事の差別発言の扱い、東京新聞編集局長「責任を痛感」~「石原節」の表現が暴言や失言を容認する風潮招いた

2月13日(日)付の東京新聞朝刊5面(社説・意見)のコラム「新聞を編む」に、「言葉の作用 責任を痛感」の見出しで、同紙の大場司・編集局長(中日新聞東京本社編集局長)の一文が掲載されています。石原慎太郎・元東京都知事の訃報に対して、読者からた…

首長や議員が「自主憲法制定」を唱えるのは自己矛盾~石原元都知事に対するマスメディアの無頓着ぶり、問われる憲法観

一つ前の記事(「慎太郎節」「石原節」が薄めてしまう実像~マスメディアの報道は歴史の記録)の続きです。故石原慎太郎・元東京都知事の足跡に関連して、もう一つ書きとめておきます。憲法のことです。 石原元知事は現在の日本国憲法への嫌悪感を露骨に表明…

「慎太郎節」「石原節」が薄めてしまう実像~マスメディアの報道は歴史の記録 ※追記・東京新聞編集局長「責任を痛感」

少し時間がたちましたが、同時代の記録として書きとめておきます。 2月1日午後に明らかになった石原慎太郎元東京知事の訃報を、東京発行の新聞各紙は翌2日付の朝刊で大きく扱いました。「正論」執筆陣に迎え、コラムの枠も提供していた産経新聞は1面トッ…

「移設容認と短絡するな」(朝日) 「普天間移設の進展を着実に」(読売)~名護市長選 東京発行各紙の社説

沖縄県名護市長選で、自民、公明両党が推薦した現職が、同市辺野古の新基地建設に反対する前市議の新人に5000票余の大差をつけて再選されたことを、東京発行の新聞各紙が1月25日付朝刊の社説でそろって取り上げました。 選挙戦では現職の渡具知武豊氏…

敗戦の教訓を引き継ぐ~西日本新聞のコラム「『暑いな』とデスクは言った」

先日、フェイスブックの知人の投稿で知った西日本新聞のコラムを紹介します。3年近く前のものですが、平成最後の年明けに、「昭和が終わった日」を振り返った内容です。「当時入社7年目で警察担当だった」という筆者は、わたしと同世代のようです。 ※「『…

「敵を想定しその敵地を侵攻するという狂気」(保坂正康さん)~戦争体験の風化と軍拡公約の承認 衆院選報道振り返り②

今回の衆院選で自民党は、軍事費の大幅な増加と敵基地攻撃能力の保有を公約に明記しました。そのことが何を意味するのか、わたしはこのブログの以前の記事(「『軍事優先社会』で何が起こるかを伝えることが衆院選報道に必要~マスメディアにも『表現の自由…

伝えるべきは「皇族の人権」~小室眞子さん、圭さんの結婚が可視化させたこと

秋篠宮家の長女眞子さんが10月26日、小室圭さんと結婚して皇籍を離れ、小室眞子さんとなりました。記者会見では眞子さん、圭さんがそれぞれ心境などを述べましたが、質疑応答はなく、報道側が事前に提出した質問に文書で回答する形式が取られました。眞…

「軍事優先社会」で何が起こるかを伝えることが衆院選報道に必要~マスメディアにも「表現の自由」の当事者性

衆院選が10月19日、公示されました。自民党、公明党連立の岸田文雄内閣は10月4日に発足したばかり。一方で野党は、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党が市民連合との間で共通政策に合意し、選挙区での候補者一本化を進めるなど共闘体制…

自民党公約が明示する「軍拡」~政権選択の最大論点

衆議院が10月14日、解散されました。衆院選は19日公示、31日に投開票されます。憲法70条は、衆院選の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければならないと規定しています。自民党、公明党連立の岸田文雄内閣は10月4日に発…

菅首相「続けてほしくない」65%(共同通信調査)~個人の行動制限の前に、コロナ失政の検証必要

共同通信が8月14~16日に実施した世論調査の結果が報じられています。8月8日の東京五輪の閉会から1週間のタイミングです。五輪が開催されてよかったと思うかの回答は「よかった」62.9%、「よくなかった」30.8%でした。この1週間前、東京…

死者との「約束の場所」靖国神社

過日、夏の休暇を取った平日の午後、東京・九段の靖国神社を訪ねました。 新聞、テレビのマスメディアは、首相や閣僚が靖国神社に参拝するたびに大きなニュースとして扱ってきました。第二次世界大戦後に東京裁判を経て処刑されたA級戦犯らが「昭和の殉難者…

「中等症は自宅療養」に転換、無為無策の末に~東京五輪・在京紙の報道の記録⑧8月3日付

東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が東京五輪をどのように報じたかの記録です。各紙の朝刊1面が中心です。 【8月3日付】 8月2日に発表された新型コロナウイルスの感染者は、全国で8393人でした。5日ぶりに1万人を下回り…

宮内庁長官「拝察」報道の記録

宮内庁の西村泰彦長官が6月24日の記者会見で、「天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を大変心配されている。国民に不安の声がある中で、開催が感染拡大につながらないか、懸念されていると拝察している」(共同通信)と述べ、万全の対策…

「人権侵害の懸念消えず」(沖縄タイムス) 「欠陥法は認められない」(琉球新報)~土地規正法成立、在京各紙はスタンスに違い

自衛隊や米軍基地など安全保障上の「重要施設」周辺や国境に近い離島などの土地利用を規制する法律が16日未明、参院本会議で可決、成立しました。マスメディアの報道では「土地規制法」との呼び方が主流のようです。自民党、公明党に加え日本維新の会、国…

もはや「改憲」「護憲」の二項対立ではない~世論調査結果からうかがえる民意

5月3日の憲法記念日に合わせて、マスメディア各社の憲法に関する世論調査の結果が報じられています。目に付いたところでは朝日新聞、毎日新聞、読売新聞が3日付朝刊に掲載。共同通信は1日付朝刊用に配信し、NHKは2日夜、公式サイトにアップしていま…

朝日新聞阪神支局の記者殺傷事件を風化させない~テロであり、異論を認めない社会を是としていた二重の意味で許すことができない

34年前の1987年5月3日夕、兵庫県西宮市の朝日新聞社阪神支局が散弾銃を持った男に襲われ、勤務中だった小尻知博記者が撃たれて亡くなりました。29歳でした。ほかに記者1人が重傷。共同通信などに届いた犯行声明は「日本民族独立義勇軍 別動 赤報隊…

為政者は国民をたやすく戦争に駆り立てることができる~ニーメラー、ゲーリングと今日の日本社会

今から79年前、1941年の12月8日、日本は米国や英国との「太平洋戦争」に踏み切りました。その以前から中国との戦争が続いていました。それから3年8カ月、最後は自国に加え、アジア諸国にもおびただしい住民の犠牲を生んで、1945年8月に日本…

2018年の政府見解、なぜ必要だったのか~「安倍政治」総括にもかかわる日本学術会議の6人非任命

前回の記事の続きです。日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が菅義偉首相から任命されなかった問題に対し、菅政権は詳しい説明を避けています。手続き論についても、加藤勝信官房長官が5日の記者会見で、日本学術会議法の解釈変更はしていな…

「知らしむべからず」の姿勢は変わらない~日本学術会議の会員非任命は検事長定年延長の再来

最初に報道に接した時から既視感がありました。菅義偉首相が、日本学術会議が推薦した会員候補のうち6人を任命しなかった件のことです。その後、政府が日本学術会議法の解釈を変更していたことが明らかになりました。できるはずがないことをやる、批判に対…

水木しげるさん「総員玉砕せよ!」の“事実を超える真実”~戦争による死を美化しない

8月15日は、日本の敗戦で第2次世界大戦が終結して75年の日でした。わたしが今、危惧するのは、社会で戦争体験の継承が難しくなっていることです。特に戦没者を「尊い犠牲」と美化し「その上に今日の日本の繁栄がある」と位置付けることは、戦争の実相…

戦争と平和を考える特別の新聞~「ヒロシマ新聞」から「しんけん平和新聞」へ

8月になりました。この十数年来、わたしにとっては戦争と平和を考える特別な時間です。 広島市に本社を置く中国新聞社の従業員でつくる中国新聞労働組合は戦後50年の1995年8月、「ヒロシマ新聞」を制作しました。原爆投下によって、中国新聞社は45…

国と地域の関係を問う辺野古埋め立て工事の再開~控え目な在京各紙の報道

沖縄県議選の投開票から5日後の6月12日、日本政府は沖縄県名護市辺野古の新基地予定地の埋め立て工事を再開しました。工事関係者1人が新型コロナウイルスに感染したことから、4月17日から工事は中断していました。県議選では、玉城デニー知事の県政…

緊急事態条項 批判的論調が多数~コロナ禍の憲法記念日、新聞各紙の社説・論説

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国に緊急事態宣言が発せられている中で5月3日の憲法記念日を迎えました。多くの新聞が3日付の社説、論説で憲法を取り上げ、多かれ少なかれ憲法改正に、その中でも危機に際して政府に強い権限を付与する緊急事…

「これは戦争ではない」~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録7:4月29日~5月2日付

新型コロナウイルスの感染拡大防止策を検討する政府の専門家会議が5月1日、新規感染者は減少傾向に転じているものの、引き続き、外出自粛などの行動制限が必要だとの提言を発表しました。安倍晋三首相は、5月6日までとしていた緊急事態宣言を1カ月程度…

パチンコ店「店名公表」が引き起こしている社会的制裁~期待された「合理的行動」は実現できていない

新型コロナウイルス感染拡大防止のために、新型インフルエンザ特措法に基づいて休業要請が出ているにもかかわらず営業を続けるパチンコ店に対し、知事が同法45条に基づくより強い「要請」を出して店名を公表する動きが拡大しています。そればかりか、特措…

相互不信、相互監視社会を危惧~パチンコ店の店名公表で気付いたこと ※追記 「中傷の電話相次ぎ」1店休業

大阪府の休業要請を受け入れずに営業を続けたパチンコ店の店名公表の対応に関連して、一つ前の記事(「パチンコ店の店名公表と特措法の危うさ」)の補足です。 法令違反の行為が認定された事業者の名前が、法令に基づいて官公庁や自治体から公表されることは…

パチンコ店の店名公表と特措法の危うさ

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、特別措置法に基づき発出された緊急事態宣言の18日目に当たる4月24日、大阪府が営業自粛の要請に応じない府内のパチンコ店6店の店名を公表しました。吉村洋文知事は取材陣に対し「こちらのパチンコ店に府民…

「一律10万円」受け取りと使途は、政治家であれ公務員であれ個人の問題~緊急事態宣言下 在京紙報道の記録4:4月18~21日付

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言は4月21日で15日目。3週間目に入りました。4月18日付~22日付の東京発行新聞各紙の紙面の記録です。扱いの大きな1面の記事2本に加え、22日付からは社会面トップの記事の見出しも記録す…

新型コロナ特措法は厳格に運用されているか~「緊急事態宣言 全国拡大」の手続きに感じること

新型コロナウイルスに対応する特別措置法に基づく緊急事態宣言は、私権の制限が可能な「劇物」です。その手続きは、法に基づいて厳格に進められなければならないはずです。安倍晋三首相は4月16日、緊急事態宣言を、それまでの7都府県(東京、千葉、埼玉…

「緊急事態宣言下での市民の『知る権利』を守るために」「『新型コロナ』を理由にした批評の封殺に抗議する」 新聞労連が声明

新聞労連(日本新聞労働組合連合)が4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して2件の声明を発表しました。新インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発せられている中で、いずれも「知る権利」と「表現の自由」、あるいは「報道の自由」の観点…